尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

九代目春風亭柳枝真打昇進披露興行ー浅草演芸ホール4月中席

2021年04月14日 22時11分02秒 | 落語(講談・浪曲)
 落語協会新真打5人の披露興行が続いている。3月下旬に始まって、上野、新宿と来て、4月中席が浅草演芸ホール。10日間の興行を5人で2日ずつ披露している。昇進するのは、弁財亭和泉(三遊亭粋歌改め、師匠は 三遊亭歌る多)、柳亭燕三(柳亭市江改め、師匠は市馬、えんざ、明治期存在の名)、柳家㐂三郎(小太郎改め、師匠は柳家さん喬)、九代目春風亭柳枝(春風亭正太郎改め、師匠は春風亭正朝)、三遊亭れん生(三遊亭めぐろ改め、師匠は三遊亭円丈)の5人。今日は春風亭柳枝(しゅんぷうてい・りゅうし)である。
(9代目春風亭柳枝)
 他の人も気になるけど、古典専門で二つ目時代から人気があったと聞き、是非春風亭柳枝を見てみようかと思った。今日は朝から断続的に雨で、寄席の前に幟(のぼり)が立てられない。師匠の春風亭正朝の口上にあったが、柳枝の披露5日目のうち4日が雨だという。トリを取った柳枝によれば、実は師匠の方が雨男だと言うが。しかし、次の披露である今週土曜の天気予報も雨になってる…。東京もずっと晴れていた冬が終わって定期的に雨の日々。
  
 僕はけっこう真打披露興行に行ってると思う。新しい真打を見てみたいという気持ちがある。二つ目時代から追っかけて、誰が伸びると見極めるほどの落語通ではない。だから評判は聞いてても、実際には知らない二つ目が多いのである。そして真打に昇進しても、その後何度も見聞きする人は少ない。落語界も大所帯になっていて、真打もオーバードクター状態だ。トリを取れる資格は得られても、実際に活躍の場が得られる人は数少ない。

 それと真打披露には原則として師匠が口上に付き添う。複数の昇進の場合、複数の師匠レベルが口上の前後に出ることが多い。また協会の幹部も名を連ねる。今日は柳亭市馬会長、林家正蔵副会長の他、柳家さん喬春風亭一朝橘家圓太郎などがそろう。珍しく一番目に春風亭一之輔も出た。どこか用事があったんだろうが、12時からは早い。「桃太郎」という、親が寝かせるために話す「桃太郎」に子どもがいちいち「昔昔っていつ?」「どこの川?」と問い詰めて、最後は親が寝ちゃう。久しぶりのナマ一之輔は短くても面白い。
(真打昇進の5人)
 トリの春風亭柳枝は「佐々木政談」をやった。僕も落語の名前はそんなに知らないから、調べて書いている。南町奉行の佐々木信濃守の裁きを語る噺。佐々木信濃守とは、佐々木顕発(あきのぶ)という幕末の実在人物である。一介の旗本から出世し、勘定奉行になったものの井伊直弼に罷免された。その後復権し、江戸町奉行(北、南)や外国奉行を務めた。というのも今調べて判ったことで、幕末史で有名な人ではない。

 佐々木信濃守が下情視察をしていたら、子どもたちがお裁きごっこをしていた。その様子を見て感心した。佐々木は親子を奉行所に呼ぶが…。親が恐怖に駆られる中、子どもの機転が佐々木を感心させる。最初と最後の噺が対応した。柳枝は貫禄十分で、マクラも面白い。柳枝は60数年ぶりの復活の大名跡だそうだが、今後も活躍して大看板になることを期待したい。
(表紙絵=林家たい平)
 初めて聞いた五明楼玉の輔柳家小八も良かった。小八は貨幣価値の異なる村へ迷い込む「噺家の夢」は知ってるけど笑わせる。この人は今度真打に昇進した弁財亭和泉の夫だという。真打どうしの夫婦は初めてだとのこと。三遊亭歌武蔵の相撲漫談は前にも聞いたけど、今日の方が大受けだった。柳家圓太郎は「強情灸」、柳家さん喬は「替り目」を口上後にサラッと語る。その前の漫才、ロケット団が大受け。今一番受ける人たちだと思う。林家正蔵柳亭市馬は何度も聞いてるからか、ちょうど疲れる頃でウトウトしてしまった。ところで、弟子のれん生が昇進するのに、師匠の三遊亭円丈が出ていない。健康状態が心配だ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする