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尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

「山本太郎新党」をどう考えるかー2019参院選④

2019年07月25日 23時29分33秒 |  〃  (選挙)
 参院選の結果について3回書いてきた。ネットや新聞に細かいデータが載っているけれど、なかなか見ないことが多い。だからデータ確認を中心に書いてきたけど、最後に話題を呼んだ「山本太郎新党」についての考えを書いておきたい。僕が「山本太郎新党」とあえて書くのは、党名を最初に聞いたときの驚きと違和感があって、党名を書きたくないからだ。今後党名変更を真剣に考えて欲しいと思う。

 まあ仕方ないから書くことになるが、新党「れいわ新選組」は比例代表で2議席を獲得した。228万票ほどで、全体の4.55%に当たる得票を獲得した。社民党の2倍以上あるから、確かに出来たばかりの新党ととしては大健闘である。山本太郎はそれまで自由党(「生活の党と山本太郎となかまたち」が2016年10月に改称)に所属していたが、2019年4月10日に月末の統一地方選終了後に離党し、参院選に独自の政党で臨むと発表した。政治団体そのものは4月1日に設立されていたようだ。その後1ヶ月で寄付金が1億円に達し、徐々に擁立候補も発表されていった。
(演説する山本太郎)
 それにしても3ヶ月しかない。そして2議席を獲得したわけだが、当選者は特定枠で届け出た重度の身体障害者候補2人だった。山本太郎自身は議席を失ったわけである。山本太郎は個人票を99万票も獲得していて、これは個人名の史上最多票落選者だ。その結果は大方のところ予想通りで、僕も比例代表の仕組みを書いた時に、山本太郎は最多票落選者だろうと書いた。僕が思うに「特定枠」を一人にしていたら、「山本太郎に議席を」ともっと燃えて結果的に3議席に届いたのかもしれない。

 政策評価の前に党名問題。近年は「特別な意味を持つイデオロギー用語」を意図せずに使う例が多い。今回の場合、「れいわ」も「新選組」も特別な意味を持つ。まず「れいわ」だが、元号を党名に使うセンス自体が理解できない。「令和新時代」などと政権側が政治利用しているときに、野党側から元号ブームを支えた感がある。言うまでもなく、「元号が変わった」ことは「時代が変わった」ことを意味しない。国民主権の日本では、安倍首相が続いている以上「同じ時代」である。そもそも元号を使用すること自体にイデオロギー的な意味がある。若い世代には「平成最後」とか「令和新時代」とか平気で使う人が結構いるが、現代風「皇国史観」になってしまわないか。

 「新選組」に関しては「新しい時代に新しく選ばれる政党になるため」と言う意味だとしている。「新撰組」と書かないのはそのためだというが、「」と「」は同じく「選ぶ」という意味だし、そもそも幕末の「新選組」でも当人たちが両方使っている。ロゴも新選組隊旗をイメージして作られたというから、やはり幕末の新選組を意識して付けたわけだ。「新選組」に関しては、2018年に「新選組とは何だったのか」という記事を書いた。そこで僕が理解したところでは、新選組は「尊皇攘夷の志士」集団でありつつ、幕末京都の政局で「一会桑政権の暴力装置」でもあった。
 (ロゴと新選組隊旗)
 ある種の「義士」ととらえる人もいるようだが、僕にはやはり京都で人を殺し回った印象が強い。それも権力側の走狗として。全国で4.55%なんだから、多くの都道府県では3%~4%台の得票だった。そんな中で2%台なのは和歌山と山口である。和歌山はともかく、山口で2.9%だったのは、首相のお膝元で自民が50%もあったからだけではなく、やはり幕末の長州藩弾圧イメージがあるからではないのか。そして一番心配なのは、「れいわ新選組」も「尊皇攘夷」にならないかということだ。

 さて政策の方だけど、今のところ「典型的なポピュリズム運動」じゃないかと思う。ポピュリズムは字義通りでは「人民主義」「大衆主義」だが、言葉の使い方としては「大衆迎合主義」に近い。アルゼンチンのペロン元大統領などが代表とされる。ただし、僕はポピュリズムだから悪いとは言わない。どんな主張だってしていいし、政策の整合性、予算措置などすべてはっきりしてなければ対案を出すな等と言うのは、支配者側の言葉である。人はどんな要求を出してもいい。だけど、実現可能性の道筋ははっきりさせておかないと行けない。「緊急政策」もあれば、「長期的政策」もある。
 
 具体例を一つだけ指摘しておく。「奨学金チャラ」は実現できない。なぜなら「憲法違反」だからだ。その理由を説明し出すと長くなるが簡単に言っておくと「法の下の平等」と「経済活動の自由」である。でも高等教育の教育ローン問題は深刻である。だから当事者が「チャラ」運動をするのはいい。そのことで学生支援策も拡充していく。だけど、奨学金を得たものは対価として「大卒資格」(学士)を手に入れる。だからチャラにしたら不平等なのである。ただ昔は大学卒なら「一流企業」に就職でき、奨学金も返還しやすかった。そういう社会システムが崩壊したことが問題なのだ。学生はまだ声が出せるが、チャラにして欲しい困窮者はもっといるだろう。
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組織票の当落を点検するー2019参院選③

2019年07月24日 22時58分38秒 |  〃  (選挙)
 比例票を見たので、団体の組織票の状況も見ておききたいと思った。長くなって一度に書けなかったので、もう一回使って書いておきたい。関心が無いという人が多いかと思うけど、一体どういう団体が組織票を持っているのか、他の人も知っていていいんじゃないか。特に今回は民主党(民進党)が分裂して、支持団体の連合加盟の労働組合も対応が二分された。国民民主党から立候補した労組推薦候補には落選した人もいる。この問題は他の人も一応チェックしておいた方がいい政治情報だろう。

 比例代表の「非拘束名簿式」のやり方は数回前の記事に書いておいた。「特定枠」の候補がいれば優先して当選し、続いて「個人名得票」の多い順に当選になるわけである。さて最大政党・自民党の個人得票第1位は誰だろうか。それは「柘植芳文」である。そもそも読めない人もいるだろう。「つげ・よしふみ」である。顔が思い浮かぶ人は少ないだろう。柘植氏は6年前もトップ当選だった。支持する組織は「全国郵便局長会」である。かつての「全国特定郵便局長会」(全特)だ。
(自民トップの柘植氏)
 あれ、いつから全特は自民支持に戻ったの? と思う人もいるだろうか。小泉内閣の「郵政民営化」に反発して、自民党を離党した「国民新党」の支持に回った。国民新党は民主党政権にも参加したが、改正郵政民営化法成立(2012年4月)により、「全特」(今は特定郵便局はなくなったが、団体の略称は継続しているという)は自民党支持に戻った。国民新党は2013年に解党し、全特は以後の参院選では自民党から組織内候補を擁立してトップ当選を続けている。今回も60万票を獲得した。

 自民党2位の山田太郎は、「みんなの党」盛衰の記事で触れておいたが、前回は「新党改革」で落選した。今回は自民党だから悠々当選。5位の佐藤信秋は元国交次官で建設関係。7位の山田俊男全国農政連(農協出身)だが、過去2回は自民党で個人名2位だったことを思えば、農政票に自民離れがあるのかも。9位の宮本周司全国商工会連合会。10位の石田昌宏日本看護連盟。看護師の代表は今まで女性議員が多かったが、初めての男性看護師議員である。12位の本田顕子薬剤師連盟。14位の羽生田俊日本医師連盟。15位の宮崎雅夫土地改良連盟

 一方、自民党で次点で落選したのは比嘉奈津美だった。沖縄の歯科医師で、2012年に玉城デニー(現知事)を破って衆院議員に当選した。2017年に落選して、今回「日本歯科医師連盟」を支持母体にして出馬した。日歯連は日本歯科医師会の政治団体だが、何回か事件を起こしてきた。6年前は石井みどりを当選させたが、迂回献金事件で日歯連幹部が有罪となった。石井みどりは今回勇退し、後継者選びは混迷し最後に比嘉を立てたが落選した。個人票20位の田中昌史は初の理学療法士連盟からの出馬だったが落選した。以上が個人票で10万票以上を獲得した組織内候補である。

 自民党が長くなったが、本来は労働組合の状況を書きたかった。立憲民主党の個人票上位は軒並み労組出身者である。トップは岸真紀子で、自治労出身。全体で15万7千票ほどで、そのうち3万5千票が北海道なので調べてみたら元岩見沢市職員だった。2位の水岡俊一日教組。3位の小沢雅仁JP労組(旧全逓)。4位の吉川沙織情報労連(NTT出身)。5位の森屋隆私鉄総連。以上が連合推薦候補で全員当選した。6位以下に川田龍平、石川大我、須藤元気。ここまで当選で次点が市井紗耶香だった。自民党議員もそうだけど、組織内議員はほとんど名前を知らない。立憲民主も上位5人は知らなくて、6位から知ってる。10万票を超えるのも5人で、やはり組合員数の多い順に票が出ている。
(立憲民主党トップの岸真紀子)
 一方、大変だったのが国民民主党。こちらは10万票を超えた候補が5人いたが、20万票を取った3人しか当選出来なかった。トップは田村麻美で、連合で最多のUAゼンセン。正式名称は「全国繊維化学食品流通サービス一般労働組合同盟」で、繊維産業労組のゼンセンが、21世紀になって食品・流通サービス労組と合同した。イオンやイトーヨーカドー、ビックカメラやヤマダ電機、マツモトキヨシやロイヤルホスト…みんな労組があってUAゼンセンである。組合員170万超の日本最大の労組。

 国民民主党2位の礒崎哲史自動車総連。3位の浜野喜史電力総連。ここまで当選したが、4位の石上俊雄電機連合。5位の田中久弥JAM。ここは金属産業の中小企業の組合である。電機連合やJAMは組織人員だけなら電力総連より多い。電力は危機感を持って相当頑張って集票したのだろう。電機連合やJAMは日教組やJP労組より組合員が多く、実際個人名の得票は立憲民主党候補の誰よりも多かった。どちらも立憲民主党から出ていたら1位で当選していたのである。これは党勢低迷を受けて、国民民主内の順位争いに力を入れたということだ。今後敗北した労組の対応が注目される。

 連合(日本労働組合総連合会)はかつての社会党支持の総評(日本労働組合総評議会)と民社党支持の同盟(全日本労働総同盟)に加えて、中間派の中立労連、新産別が複雑な経過をたどって1989年に合同した。それに対して共産党系が「排除」され、共産党系の組合は全労連(全国労働組合総連合)を結成した。今回、立憲民主党から出た労組は旧総評系国民民主党から出た労組は旧同盟系と先祖返りした感じ。労働戦線の長い対立関係があって、連合は野党統一候補が共産党系になったところで推薦を出さなかった。

 今後も立憲民主党が優勢なら次は立憲民主から候補を出す労組も出てくるかもしれない。一方、原発ゼロに反発する電力総連は立憲民主に行けない可能性が高い。むしろ自民党支持になってしまうかもしれない。共産党との共闘関係の評価とも絡み、連合内の労組の動向は注目される。今どき労働組合は弱体化して役立たないと思うかもしれないが、このように野党の比例票を見れば集票力がそれなりに残っていることが判る。これは無視できないことだろう。
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比例区票の時系列的検討ー2019参院選②

2019年07月23日 23時22分57秒 |  〃  (選挙)
 毎回のように国政選挙の後では、各党の比例区票を比較検討してきた。今回も書いておきたい。参議院選挙と衆議院選挙では、同じ比例区と言ってもずいぶん違うけれど、他に比較できるデータがないわけである。最初に書いておくと、比例代表の総得票数は、5007万2172票だった。選挙区の方は5036万3770票で、選挙区だけ投票して比例区はパスする人が30万近くいるのだ。
 
 2016年参院選は5600万票ほど。2017年衆院選は5575万票ほど。2014年衆院選は5333万票ほどで、この時は戦後の衆院選史上最少だった。もっとも2016年参院選から「18歳選挙権」が実施されたので、有権者数そのものがかなり増えている。18歳選挙権が実施されて2回目の参院選になるが、今回は600万票ほど少ない。まあ、ほとんど5千万票ピッタリなので計算しやすいけど。

 各党の票数を見る前に。今後絶対に破られない参院選当選の大記録が現れた。それは比例区で8回当選の自民党山東昭子である。もう山東昭子がタレント議員だったと知らない人も多いだろう。古い日本映画を見ていると、時々若い頃の姿を見ることがある。大スターというわけではなく、テレビのクイズ番組で知られていた。32歳で立候補して、今77歳。もっともずっと継続しているわけではなく、一度1992年に落選、その後繰り上げ当選、辞任して衆院選出馬(落選)、参院選に戻って当選を続けた。自民党には一応70歳定年制があり、2回連続して特例を認められた。今回は19人当選中の18位だった。当選回数新記録に敬意を表して、新参議院議長に就任する見込みという。
(当選を喜ぶ山東昭子)
 一応、2005年の郵政選挙から見て行くことにする。千票単位四捨五入。 
 05衆院選07参院選09衆院選10参院選12衆院選13参院選14衆院選16参院選17衆院選19参院選 の順番。直近3回は太字で。

自由民主党
 2589万1654万1881万1407万1662万1846万1766万2011万1856万1711万
公明党
 899万777万805万764万712万757万731万753万698万654万

 与党側から見てみると、自民党は前回2016年参院選で2000万票を獲得したが、今回はそれよりも300万票も減っている。前回衆院選からも140万票減った。今回から2議席増えていることもあり、議席数は前回と同じ19議席だった。公明党も16年参院選から100万票、17年衆院選から44万減った。自公連立以後最も少ない。他党も減っているので、獲得議席は7議席と変わらない。21世紀初めには一時800万票を超えたが、得票数は減少傾向にある。「少子高齢化」など構造的な要因も大きいだろう。両党とも票を減らしても議席数が変わらないのは、今回は与野党双方に棄権があったのだろう。

 野党側は16年参院選と大きく変わったので、とりあえず変わってない共産、社民から。
日本共産党
 492万516万494万426万369万515万606万602万440万448万
社会民主党
 372万263万301万224万142万126万131万154万94万105万
 ちょっと前まで両党合わせて700万票以上獲得していたが、今回は合計で550万票ほど。前回参院選から見ると共産は150万、社民は50万も減らしているが、17年衆院選からは少し増えている。そのため社民党も政党要件をクリアーした。共産党は4議席で1議席を減らした。社民は前回と同じ1議席。
(社民党で当選した吉田忠智氏)
 さて、問題なのはかつての民主党。2014年衆院選までは以下のような得票だった。
民主党
 2100万2326万2984万1845万963万713万976万
2016年参院選は、維新の党の一部と合同して「民進党」として臨んだ。
 1175万
〇2017年衆院選は、「立憲民主党」と「希望の党」を見てみる。
・立憲民主党 1108万
・希望の党  968万
 この「希望の党」と「民進党」が合同して「国民民主党」となり、前回は「生活の党と山本太郎と仲間たち」で1議席を獲得した小沢一郎グループも合流した。一方山本太郎は分離独立して新党を樹立。
2019年参院選
立憲民主党 792万(8議席)
国民民主党 348万(3議席) 合計1040万票 
 前回「民進党」は11議席を獲得したので、今回両党で11議席だから同じとも言える。でも小沢一郎が合流していることを考えれば1議席減である。立憲民主党も結党直後の衆院選から、316万票も減っている。立憲民主党が出てない選挙区が多いので、参院選で減るのはやむを得ない。だが、衆院選からの減は自民よりも立憲民主の方が多い。野党第一党の地位は確立できたけど風は吹かなかった。国民民主党は支持率低迷が続く中、まあそこそこ頑張ったのかもしれないが、展望は見えない。

 維新は3年前は「おおさか維新の会」だった。2017年衆院選から「日本維新の会」に戻した。2019年春の大阪ダブル選で息を吹き返して、今回は地域政党と連携するなどして議席数は1議席多かった。ところが票数で見ると、3年前の方が多いから不思議。
★16参院選 おおさか維新 515万 →17年衆院選 339万→19年参院選491万
・今回登場の新党が二つ。
れいわ新撰組 228万 (2議席)
NHKから国民を守る党 99万 (1議席)

 前回参院選より、自民が300万、公明が100万、共産が150万、社民が50万減らした。民進党+生活の党系で、250万減。計850万ほど減った分が、「れいわ新撰組」「N国」と600万の棄権で大体つじつまが合う。細かく見るともっと判るだろうが、簡単に言えば投票率が減った分は既成の与野党どっちにも同じ影響を与えたと思われる。
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低投票率の問題ー2019参院選①

2019年07月22日 23時02分34秒 |  〃  (選挙)
 2019年7月21日投開票の参議院選挙投票率は48.8%ほどだった。今回は2013年に当選した議員の改選期で、6年前は第2次安倍政権発足から半年ぐらいで自民党が非常に強かった。(というか、前年末までの政権党、民主党が非常に弱体化していた。)今回は自民党に多少取りこぼしがあるだろうから、僕はもともと「改憲政党3分の2」は非常に難しいと思っていた。実際そのようになり、自民党は公明党と連立した与党としては安定多数を維持したが、自民党単独では過半数を割り込んだ

 数を確認しておくと、参議院の総定数は245議席。今年の選挙から変わったが、ちょくちょく変わるので覚えられない。(2022年参院選後には、248議席となる。)2016年当選の非改選議員は自民党が56人公明党が14人である。2019年の当選者は、自民が57人、公明が13人。合計すると、自民党が112議席公明党が27議席となる。今回改選の自民党議員は66人だったから、9人減らした。過半数は123議席だから、自民党は単独過半数を失った。(前回まで議員定数は242人。自民はギリギリ過半数。)

 今回は国政選挙の投票率としては史上2番目の低さだった。都道府県別に見てみると、野党統一候補が勝利した山形県が唯一60%に達している。同じく野党候補が勝った岩手、秋田、新潟も55%を超している。高投票率が野党に有利というより、どこも激戦と伝えられたことが投票意欲を高めたのだろう。一方、自民党が好調を維持した西日本に低調が目立つ。中国・四国・九州/沖縄は島根、愛媛、大分を除き軒並み5割を割った。このうち愛媛、大分は野党が勝利している。西日本で投票率が低かったことが、自民党の比例票が大幅に減る原因となったと思われる。
(参院選投票率の推移)
 今回の低投票率には様々な要因があるだろう。そもそも参院選は衆院選より投票率が低い。政権選択にならないし、選挙区は都道府県単位、比例代表は全国だから、広すぎて選挙が盛り上がりにくい。与党が好調なときは、与野党の差がはっきりし過ぎて選挙の意味を感じにくい。知事選なんかかで「現職知事対共産党候補」の場合など、結果が見えてるから投票率が下がるのと同じである。西日本の低投票率の大きな理由だろう。やはり「激戦報道」が一番投票率を高めるのである。そのためには野党側の選挙協力体制魅力ある候補者の擁立明確な争点化などが必要だ。

 低投票率には「偶然的要因」と「必然的要因」がある。今回はもともと盛り上がりに欠けると思われていて、僕も5割を割るのは確実だと思っていた。今回は「天候的要因」も大きい。選挙当日に北九州は大雨で避難勧告も出た。北九州の低投票率の最大要因だと思う。全国的に梅雨寒が長く続き、テレビニュースのトップは選挙よりも天気の話が多かった。暑いのも嫌だけど、雨だとビラも受け取ってもらえず、演説会にも人が少ない。全体的に運動の広がりが弱くなるという話である。

 一方、近年の選挙は良くても6割半ばぐらいしか行かない。もともと3割以上の人は選挙に行かない。「自分の意思で行かない」人もいるだろうけど、「行きたいけど行きにくい」人もいる。「全然関心が無い」人もいるだろうし、「面白ければ行ってもいいけど、今回は意義を感じられなかった」人もいるだろう。選挙を「棄権する自由」はあるだろうか。与党も支持しないが、野党も支持できない。政党は皆信用できないというのは、かなり正しいかもしれない。そもそも議会政治そのものを支持しないという立場もある。僕は「主義主張として棄権する権利」はあると思う。でもそういう人は多くても全体の5%程度だろう。

 一方、「行きたいけれど行けない」という「投票弱者」も多くなっているんじゃないか。高齢になって、あるいは過疎化によって、投票所まで行くのが大変な人。あるいは、軽度の障害により、「字が書きにくい」「字が読みにくい」「学習障害で字が認識しにくい」「外国出身で漢字が苦手」などなど。後者に関しては、郵便投票の拡大投票の自書式の変更(候補者の名前や写真にチェックする)などが考えられる。一方、前者の対策として、「投票所の方から有権者に近づく」方策を考えて欲しいと思う。スマホからの投票などもあるが、高齢者、過疎化対策としては、むしろ「移動期日前投票車」が役立つと思う。限界集落などを車で回って行く投票所である。マジメに検討して欲しい。

 そうは言っても、選挙情報が無くては誰に入れたらいいか判らない。新聞を読めばいい、インターネットで調べろと言って済む問題じゃない。あるいは、誰か投票を頼んでくる知人がいるだろうと言っても、社会が変わってしまった。会社や業界団体、労働組合などから頼まれるには、それなりの社会関係が必要である。世の中、自分の主義主張がはっきりしている人ばかりではない。「社会の中での人間関係」が薄れている現代では、政治に対する問題意識そのものが育たない。仕事が忙しいとまあいいかになってしまう。そういう人が受け身でも見る可能性があるメディアは「テレビ」しかない。

 そして特に今回はテレビの選挙報道が少なすぎた。面白い選挙区はいっぱいあった。事実上「イージスアショア」の県民投票になった秋田県、「忖度発言」で辞任した元国交副大臣と女性弁護士対決の新潟県、民放女性アナ対有名政治家一家の三代目対決の宮城県…。ワイドショー向けの話題選挙区はいっぱいあったと思うが、報道すれば自民に不利になる選挙区が多い。「公平に報道せよ」とうるさくチェックして、あとあとでしっぺ返しをしてくる(と思ってつい心配してしまう)安倍政権である。これではテレビが報じなくなるわけだ。「報道の自由」が奪われた結果としての、有権者の情報不足。それが「投票率の低下」になっている。
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非拘束式名簿の実情、そして「特定枠」とはー参院選比例区考②

2019年07月14日 20時36分29秒 |  〃  (選挙)
 1回目は参議院選挙の「比例代表」が「非拘束名簿式」になったところまで書いた。制度の移り変わりを見ると、かつては「全国区」(1947~1980)があり、それが「拘束名簿式比例代表」(1983~1998)に変わり、2000年に「非拘束名簿式」になったわけである。2001年から現在まで、今のところ7回行われている。有権者は「政党名」または「候補者名」のどっちかを書く。その票を合計して「党の得票」として、その票数をもとに各党に議席を配分する。各党の候補者は、個人得票の多い順番に当選となる。

 そこで一見すると、おかしなことも起こる。有名人候補が一人でたくさん得票すると、同じ党の個人得票の少ない候補者まで当選になる。一方、一人だけたくさん取っても、他の候補者や党名票が少ないと、合計した場合当選に届かないことがある。下の図表には「同じく100万票を獲得して、3議席が当選となった」という例が出ている。A党は有名候補が一人で96万票も取ったため、1万票しか入ってないC候補まで当選する。一方、B党は20万、18万、15万、14万と得票したが、14万票のD候補は落選。

 候補者名か党名かどっちかを書くと言っても、やってみたら「党名得票」が圧倒的に多かった。これは意外な感じがするが、タレント候補が少なくなった今、組織に所属していない有権者には候補者がよく判らないということだろう。前回2016年参院選を見てみると、自民党は約2千万票を獲得したが、そのうち1500万票が党名だった。2位の民進党(当時)も1175万のうち、875万が党名。共産党が一番党名得票度が高く、600万票のうち560万票近くが党名である。これは「党名投票」を呼びかけているのである。一方、公明党は個人得票度が高い。750万票ほどのうち、党名票は388万票で約半数が個人票。

 公明党は毎回「重点候補」を地区別に決めて個人名投票を徹底している。しかし、それは堅い支持者で、その周りに党名を書く「弱い支持層」がいるんだろう。21世紀の参院選比例区で、公明党は6~8議席を獲得している。ここ2回ほど7人が当選しているが、確実に当選を期すために「重点候補」は6人となっている。全部で17人が立候補しているが、公明党ホームページを見ても6人しか出てないという徹底ぶりだ。そのため、毎回のように個人名の最多得票は公明党である。(過去6回のうち、2001年は舛添要一が最多で、その後は全部公明党。)2016年は94万から38万で6人の重点候補が当選し、7議席まで当選となったため、次は1万8千票の候補に議席が回ってきた。

 その逆もあって、2010年は公明党が6人当選に止まったため、重点候補のうち得票が最少だった浮島智子が44万5千票で落選した。この年は民主党政権の与党だった国民新党が当選に届かず、40万票を取った長谷川憲正が落選した。これが最多個人得票落選者の1位と2位になっている。そういう事例は毎回のように起こっていて、2013年は緑の党の三宅洋平が17万6970票、2016年は新党改革の山田太郎が29万1188票の個人票があったが落選した。そのたびに「おかしい」と声を挙げる人が出てくるが、まあ制度上は仕方ない。(山田太郎は今回は自民から出たから当選するかもしれない。) 

 ところで、参議院の比例代表は2001年から定数が2つ減って48議席となった。それが2019年から50議席に戻された。そして各党に2議席分の「特定枠」なるものが作られた。「特定枠」は個人票の得票に関係なく、最上位にある。だから自民党の「特定枠」2人は、もう当選したのと同じである。その二人は島根県と徳島県出身者。前回2016年から、有権者数が少ない県が合区され「鳥取・島根」「徳島・高知」の両選挙区が出来た。2016年は鳥取、高知で自民党議員がいなかったので、島根、徳島の現職議員がスムーズに選ばれた。しかし、2013年は自民党が圧勝したので、4県すべてに自民党議員がいた。

 2019年は前回と逆に、鳥取、高知選出議員を合区の候補者とすることになった。そうなると、島根、徳島から2013年に当選した現職議員の処遇が問題となる。それが比例区の「特定枠」なのである。今回の自民党「特定枠」候補者は、島根と徳島の候補だ。(島根県の現職議員は選挙直前に死去したので、衆議院の比例当選者が候補に選ばれた。)もともと「合区」に反対が強い。しかし、日本は連邦制ではないのだから、人口をもとに「国民の代表」を選ぶのは憲法上の要請だ。今後、もっと「合区」が多くなれば、「特定枠」も増やすんだろうか。こういう訳の判らない仕組みを作るぐらいなら、「事前に順位を付ける」が「同率順位にして個人得票で決めてもいい」という方がいいんじゃないか。

 この「特定枠」候補にも個人名で投票してもいい。しかし、ほとんど個人の選挙運動はしてはいけないという。もちろん個人票の数に関係なく、優先して当選である。どうも変な制度だ。この制度導入に反対した野党各党は「特定枠」を使わなかった。選管へ「特定枠」を届け出たのは「れいわ新撰組」と「労働者の解放をめざす労働者党」だけだった。「れいわ新撰組」というのは、ネーミングが変だけど例の山本太郎新党である。「特定枠」を障がい者の候補2人に割り充てたから、山本太郎本人は3人目以下になる。話題にはなっているようだが、正直言って三人当選は難しいだろう。山本太郎が今回の最多個人得票落選者になる可能性が高い。それをどう考えるかはいろいろあると思うが。

 参議院の選挙方法は、衆議院以上に問題が多い。特に選挙区の方が変だ。1人区がいっぱいあって、2人区、3人区、4人区もあり、東京は6人も当選する。自民2人、公明1人だから、野党内の配分だけが焦点。人口が230万ほどの宮城県までが1人区で、260万の京都府、280万の広島県が2人区というのも納得しにくい。「合区」以前にもう都道府県ごとの選挙が無理だろう。僕は地区ブロック別に「非拘束名簿式」の比例選挙一本にするべきだと前から書いている。
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「非拘束名簿式」になった理由ー参院選比例区考①

2019年07月13日 23時23分12秒 |  〃  (選挙)
 参議院選挙へ行くと「選挙区選挙」と「比例代表選挙」の2回投票する。「比例代表区」という「区」は法的にはないんだけど、まあ普通「比例区」なんて言うことが多い。この「比例代表選挙」の方法が判りにくい。前から判りにくかったけど、今回さらに判りにくく改定された。政治に関心がある人でも案外ちゃんと知らないで、間違ったことを言ったり書いたりする人がいる。だからここで説明しておくことにする。前にも書いてるんだけど、今回から出来た「特定枠」については書いてないから。

 画像検索したら上の図が出てきた。これを拡大してみれば判るわけだが、もう少し詳しく書いておきたい。まず、参議院がなぜあるのかがよく判らない。大日本帝国憲法では「貴族院」だった。現在の国会議事堂は1936年に完成したもので、二院制にふさわしいように作られている。世界には「一院制」の国も結構ある(スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、トルコ、韓国など)が、連邦制を取る国(アメリカやロシア)、身分制議会の歴史から続く国(イギリス)など二院制の国の方が多い。日米英など皆二院制だから、あまり深く検討されずに「貴族院を廃して選挙で議員を選ぶ」ことだけ考えたんだろうと思う。

 憲法で参議院議員は「任期6年」「3年ごとに半数改選」が決められている。しかし「選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は、法律でこれを定める」と選挙の方法は憲法には書いてない。当初は、「地方区」(150人)と「全国区」(100人)で行われていた。「地方区」は都道府県ごとに選ぶ。今の「選挙区選挙」のこと。「全国区」は全国を一つの選挙区として50人を選ぶという選挙だった。(50人ずつ改選する。1947年の選挙だけ、100人を当選とし51位以下を任期3年とした。)

 全国区はよく「残酷区」「銭酷区」などと呼ばれた。全国一つというのは広大すぎて、お金も体力も大変だというのである。選挙運動で知名度を高めるのは困難だから、初めから知られている「タレント候補」か、有力な支持団体がある「組織内候補」(自民党は医師会、遺族会、宗教団体など、社会党は労働組合)が圧倒的に有利だった。最後になった1980年の全国区では、市川房枝(無所属、女性運動家)がトップ当選、続いて青島幸男(無所属)、鳩山威一郎(自民、鳩山一郎元首相の長男、元大蔵次官)、宮田輝(自民、元NHKアナウンサー)、中山千夏(革自連、女優)、山東昭子(自民、女優)、大鷹淑子(自民、女優山口淑子の本名)と当時の日本人なら全員が知ってる超有名人がズラッと並んでいた。

 そこで制度改正の動きが起こり、1983年の参院選から「比例代表制度」が日本で初めて取り入れられた。日本では明治時代に選挙が始まった時から、「候補者名を有権者が自分で書く」やり方を取ってきた。これは世界的に非常に珍しい。「識字率が高い」からだと自慢げに言う人も多いけど、障がい者を選挙から遠ざけている。今後外国出身で日本国籍を取得する人も増えるだろうから、「○を付ける」「チェックする」といったやり方に変えることを真剣に検討した方がいい。それはともかく、1980年に初めて「政党名」を書く選挙が行われたわけである。(それにしても、有権者が自ら書くことは同じ。)

 これはどの政党を選ぶかを有権者が決めるという意味では判りやすい。でも、例えば自民党が18人当選する分の得票をしたとして、その18人はどう選ぶか。当時は「政党が順番を付けて届け出る」方式だった。つまり、その届け出に書かれていた順番で決まる。18位なら当選で、19位なら落選。どこかで当落が別れるのは仕方ない。でも自民党のような大政党で、順番が1位や2位なら絶対に当選する。もうそれは間違いない。まあ1位、2位じゃなくても、一桁台なら安心だろう。では15位だったら?16位は? フタを開けて見ないと判らないけど、自民党の支持率が低いと危ない。安心してはいられない。

 じゃあ自民党はその順位をどう付けたのだろうか。比例順位で当落が別れるんだから、候補者としても納得できる付け方じゃないと困る。比例トップで優遇して知識人を擁立したこともある。しかし、大方の場合、あまり文句が出ないような指標を作って、それを基に順位付けをする方式を取った。こうして候補者が有権者じゃなくて、順位を決める政党幹部の方ばかり気にするようになってしまう。「党員をたくさん獲得する」というのは指標の一つだ。確かに党勢を大きく伸ばした人ほど、順位が上になるというのは納得しやすい。でも、ここで大きな問題が起きた。支持者を名前だけ党員にして党費は候補者が出しておく。こういう「幽霊党員」が大量に存在するようになり、大問題になったのだ。

 2000年に当時の久世公堯(くぜ・きみたか)国務相(金融再生委員長、参議院議員、ちなみに作家の久世光彦の兄)が、この幽霊党員の党費をマンション会社に肩代わりしてもらっていた事実が発覚。一ヶ月足らずで大臣辞任に至るというスキャンダルがあった。そこで「拘束名簿式」(順番が最初に決まってる方式)は問題が多いとなった。代わりに「非拘束名簿式」、つまり順番は決まってなくて、選挙をやった後で得票の多い順で順位を決めるという方式に変わったのである。ただし、有権者は政党名でも投票できる。これはこれで問題もあるが、長くなったのでここで一回切ることにする。
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「みんなの党」参議院議員はどこへ行ったか

2019年07月12日 23時06分00秒 |  〃  (選挙)
 「政党」は「私的結社」でありながら、日本でもっとも影響力の大きな組織(の一つ)である。近現代の歴史は政党が基本となる。前から政党の盛衰を書いてみたかったけれど、長くなりそうで書く気にならなかった。自民党から共産党まで、いろんな歴史がある。自民、公明、共産などはまだしも、10年前に政権を取った民主党がどういう経路をたどって「立憲民主党」と「国民民主党」(及びその他の人々)に別れていったのか。1993年に自民党を離党して以来、小沢一郎氏が順番に何という政党に所属していたのか。知らなくてもいいかもしれないが、自分はそういうトリビアに興味があるわけだ。

 今回は「みんなの党」を取り上げる。「みんなの党」に特別な関心があるわけじゃない。ただ、「今はもうない」から書きやすい。6年前の参院選の時はまだあったから、その時に「みんなの党」から当選した議員は今回どうするんだろう。そんなことを思ったのも、調べてみたきっかけだ。2009年の民主党政権が出来た衆院選直前に、自民党の渡辺喜美(わたなべ・よしみ)が離党して、無所属議員の江田憲司とともに新党を結成した。それが「みんなの党」の発足である。自民から山内康一、民主から浅尾慶一郎が参加した。準備不足だったが、東京で柿沢未途が比例区で当選して、5議席を獲得した。
(川田龍平が入党、左から江田、川田、渡辺)
 2010年参院選では、なんと10議席を獲得した。選挙区で3、比例区で7である。公明党が9議席で、つまり「みんなの党」の方が多かった。比例区票でも民主党、自民党に続き、第3党。公明党が第3党じゃなかったのは非常に珍しい。この時点が「みんなの党」の短い絶頂期である。2013年参院選では、選挙区4、比例区4の8議員が当選して、計18議席となった。しかし、比例区の得票は第6位。共産党よりも少ない。理由は簡単で、2012年末に結成された「日本維新の会」が比例区で6議席を取ったからだ。

 「日本維新の会」は、地方政党「大阪維新の会」が国政に乗りだし、石原慎太郎らの「太陽の党」と合同して作られた。2012年衆院選で一躍54議席を獲得し、第3党となった。「みんなの党」を含めて、もう誰も覚えていないような経過をたどって分裂を繰り返した。「結いの党」とか「維新の党」とか、もう誰も判らないだろう。「みんな」と「維新」は協力と対立を繰り返した。そもそも2012年衆院選の前に、「維新」から出馬したいと「みんな」の参院議員3人が離党を表明したのである。2013年12月になると、渡辺代表と江田幹事長の対立が激化、ついに江田グループが離党するに至る。

 2014年3月に、渡辺代表が参院選前に化粧品会社DHCの社長吉田嘉明から3億円を借りていたことが発覚した。2012年衆院選前にも5億円を借りていた。政治資金として届け出ていないため、違法ではないかと追求された。結局「個人的な借り入れ」として法的には不問になったが、政治的ダメージとなり代表を辞任した。浅尾慶一郎が代表となったが、2014年末の衆院選を前に路線対立が激しくなり、解党するに至った。「自民党でも民主党でもない」という位置取りに意味があるように見えた時代は短かった。民主党政権下で、「立ちあがれ日本」とか舛添要一の「新党改革」などが結成された。渡辺喜美や舛添要一が自民党に残っていたら、彼らが首相だったのかもしれない。

 衆議院議員全員を見ていると長くなるから、最初に当選した5人だけ見ておきたい。
渡辺喜美 2014年衆院選で落選、2016年参院選比例区に「維新」から当選。2017年都議選で「都民ファーストの会」を支持して除名。「希望の党」には参加せず、現在、無所属の参議院議員
江田憲司 2013年に離党、「結いの党」結成。2014年「維新の党」、2016年「民進党」、2017年衆院選には無所属で当選。「無所属の会」を経て、院内会派「立憲民主党・無所属フォーラム」。
浅尾慶一郎 2014年衆院選に無所属で当選。2016年自民党の院内会派に入会、2017年自民党入党。2017年衆院選は自民党は山本朋広を公認し、無所属で立候補して落選。
山内康一 神奈川9区の自民党議員から、離党して「みんなの党」比例北関東ブロックで2009年、2012年に当選。解党後、民主党に入党、2014年衆院選に埼玉13区から出馬し落選。2017年衆院選に福岡3区で立憲民主党から立候補して比例区で当選。
柿沢未徒 2009年衆院選で「みんなの党」から比例区で当選。2012年は「みんな」、2014年は「維新の党」で東京15区から当選。一時は「維新の党)幹事長を務めるも解任。民進党を経て、2017年衆院選は「希望の党」から比例区で当選。「国民民主党」に参加せず無所属。現在、院内会派「社会保障を立て直す国民会議」所属。

 四分五裂状況がよく判る。こうやって詳しく見ると大変すぎるので以下は簡単に。
2010年参院選当選、2016年の政治行動
松田公太(東京)  「日本を元気にする会」を経て、2016年は出馬せず政界引退。
水野賢一(千葉)  「無所属クラブ」を経て民進党。2016年は民進党から出馬して落選。
中西健治(神奈川) 2016年は自民党推薦の無所属で当選。追加公認を受けて自民党参議院議員

柴田巧(比例)  16年民進党から比例で落選。17年衆院選「希望の党」で落選。19年維新から比例区立候補
江口克彦(比例) 16年は立候補せず政界引退 
上野宏史(比例) 12年参院辞任、維新から衆議院比例当選。14年落選。17年自民党から比例区当選
寺田典城(比例) 16年立候補せず。17年秋田知事選に立候補して落選。
小野次郎(比例) 16年民進党から出馬して落選。
小熊慎司(比例) 12年参院辞任、維新から衆院当選、14年維新の党、17年希望で当選。国民民主党衆院議員
桜内文城(比例) 12年参院辞任、維新から衆院当選。14年次世代の党、17年希望から出馬して落選。
真山勇一(比例) 12年繰り上げ当選。16年民進党から神奈川で当選。立憲民主党参議院議員
藤巻幸夫(比例) 12年繰り上げ当選。14年死去。
山田太郎(比例) 12年繰り上げ当選。16年「新党改革」から立候補して落選。19年自民党比例区で立候補。
田中茂(比例)  14年繰り上げ当選。解党後、自民党会派入会、16年立候補せず。

2013年参院選当選、2019年の政治行動
松沢成文(神奈川) 次世代の党、希望の党を経て、19年「日本維新の会」から立候補中。
行田邦子(埼玉)  解党後は無所属、希望の党を経て、19年は立候補せず。埼玉県知事選立候補予定。
薬師寺道代(愛知) 無所属クラブを経て、19年は立候補せず、自民党から次期衆院選出馬予定。
和田政宗(宮城)  次世代の党を経て、自民党入党。19年は自民党から比例区立候補中。

川田龍平  結いの党、維新の党、民進党を経て、19年は立憲民主党から比例区立候補中。
山口和之  「日本を元気にする会」を経て、維新の会入党。19年維新から比例区立候補中。
渡辺美知太郎 無所属を経て、自民党会派入会。19年、那須塩原市長選に出馬して当選。
井上義行  「日本を元気にする会」を経て、自民党会派入会。19年は自民党から比例区出馬中。

 大分細かな話になって、選挙、政治家ウォッチャー以外は関心がないかと思う。以上を総計してみる気もないけど、結局「自民党に戻った」が一番多いように思う。「維新」に居場所を求めたものが次ぐ。江田憲司グループは「結いの党」「維新の党」「民進党」を経て、立憲民主党に属する人も多い。「希望の党」から「国民民主党」入りしているのは小熊慎司だけだろう。「みんなの党」に関わって、分裂を繰り返したあげく議席を失った人も多い。まあ渡辺喜美を「改革者」だと錯覚したことが「人を見る目」がなかった。ブームはあっという間に去るものだ。今回の参院選で何人が当選することやら。
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統一地方選、若い世代の政治参加を進めるために

2019年04月04日 22時49分52秒 |  〃  (選挙)
 統一地方選挙の前半戦、4月7日投開票の各道府県の知事議会議員選挙政令指定都市の市長選、市議会議員選挙が行われている。(東京はどっちも別時期なので、「都道府県」ではない。)その後、4月27日に市区町村長と議会議員選挙がある。47都道府県のうち、東京、茨城、沖縄、岩手、宮城、福島の6都県を除き、議会議員選挙はやってるから、全国ではかなりの人は選挙があるわけである。(自分自身はこの4月には一つも選挙がない地区に住んでるんだけど。)

 その選挙に女性候補が少ない。「政治分野の男女共同参画推進法」という法律ができたが、道府県選挙の女性候補は12.7%だという。しかも、女性議員の党派別議員数を見ると、共産党と公明党が抜きん出て多い。共産や公明は党組織(支持団体組織)がはっきりしているから、党活動の中から女性候補を選びやすいだろう。国政の最大政党である自民党は女性議員数が一番少ない。すでに有力な男性議員が地盤を築いているから、女性議員が入りにくいのだと思う。その結果、女性議員が一人もいない、あるいは一人しかいない議会も、少しずつ減ってはいるものの全国の半分近い。
  (女性議員がいない議会、女性議員の党派別のグラフ)
 「女性議員の数を増やす」というのはもちろん大賛成である。世の中の半分は女性なんだから、議会も半分ぐらいいていい。だけど、制度を変えずにただ増やせと言っても無理だ。それにマスコミには「(女性議員が少ないと)子育て世代の声が政治に反映しない」なんて書いてあるものもあったが、それは違うだろう。女性議員は育児や介護などに関心があり、一方男性議員は外交や経済に関心があるというのは「ジェンダーバイアス」である。それこそ「性別役割」を議員に担わせることになる。現実にも稲田朋美氏や杉田水脈氏のように、女性議員でもイデオロギッシュな人もいるじゃないか。

 「子育て」は男も関係あるわけだから、男性議員も暮らしに密着した課題に向き合うべきだ。しかし、現実には男性議員の多くは、支持団体で長く活動して「上がりポスト」で議席をもらっているような人が多い。だから高齢、保守の人が多い。「女性議員が少ない=男性議員が多い」には違いないけれど、もっと正確に言えば「高齢男性議員が多い」ということだ。時に若い保守系議員がいたとしても、多くは「二世議員」である。(最近は公募による若い保守系議員もいることはいるが。)

 性別も大事だけれど、パソコンもスマホも知らない高齢議員が重責を担うというんでは困ってしまう。(誤解されないように最初に書いておくけど、そういう高齢者の代表も必要だ。デジタル化ばかり進んで、高齢者は困るじゃないかという声を行政に伝える人もいるだろう。)マスコミも「女性候補こ数」は報じているが、「世代別候補数」は調べていない。育児や教育も大事だけれど、その前の「結婚未満世代」の問題、奨学金返還問題引きこもり対策など、政治課題としてもっと取り上げられていい。

 世界を調べると、被選挙権(立候補できる権利)はもっと若い国が多い。日本では参議院議員、都道府県知事は30歳。その他は25歳となっている。選挙権年齢を2歳引き下げたのだから、被選挙権も2歳下げてもいい。いや、市区町村議員などは成人していれば(20歳)いいのではないだろうか。組織のトップに立つには20歳じゃ若いだろう。でも地方議会の議員だったら、そういう議員もあっていい。そうしたら、大学在学中、あるいは卒業後の進路として「地方政治家」という選択肢ができる。

 さらに、「供託金をなくす」「インターネットによる選挙運動期間を長くする」「戸別訪問を解禁する」「ビラをもっと自由に作れるようにする」など大胆な改革をして若い世代が政治に参加しやすくするべきだ。今は市町村議会選挙は7日間しかない。これじゃ知名度も支持団体もない若者は当選できない。車で連呼する期間が長いと迷惑だが、ネット選挙は一ヶ月ぐらい出来てもいいじゃないか。ビラも今はパソコンですぐ作れるから、資金のある候補じゃなくても活用できる。戸別訪問こそ、元気でヒマが多い若い世代向き。今どき何度も押しかけたり、買収したりする候補は、音声や映像が公開されてしまうだろう。そうやって若い世代は政治の世界に進出するとき、地方議会も劇的に変わるだろう。
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衆議院の「7条解散」は憲法違反

2017年12月28日 22時57分16秒 |  〃  (選挙)
 部活に関する考え方を大きく変えたと先に書いたけれど、他にもう一つ今年になって大きく考え方を変えた問題がある。それは「憲法7条に基づいて衆議院を解散すること」の是非である。後で詳しく書くけど、首相が有利な時期を見計らって解散をすることを、僕はこれまで「そんなもの」だと思っていた。数えてみたら、今まで15回の衆議院選挙で投票してきたが、このうち任期満了が1回不信任案可決が2回である。他は全部「7条解散」だから、なんとなく「そんなもの」だと思うわけである。

 7条解散というのは、日本国憲法第7条に「天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。」とあり、その三に「衆議院を解散すること。」とあることに基づく解散である。その前の4条で、天皇は「国政に関する権能を有しない」とされ、3条では「天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負ふ」とされる。

 だから、天皇が自分で衆議院を解散しちゃえというのはダメだけど、内閣総理大臣が「解散するべきです」と「助言」したら、天皇は解散するしかない。天皇には政治的な権能がないわけだから、臨時国会で審議もしないで冒頭解散するっておかしいんじゃないですか、解散は認めませんなどと言うわけにはいかない。内閣の「助言と承認」により、衆議院を解散するしかない、と僕も思っていた。それがいいか悪いかとは別問題として、今の憲法の解釈としてはそうなるんだろうなということである。

 ところが、この解釈は間違いだというのが片山善博氏(早大大学院教授、元鳥取県知事、元総務大臣)の違憲論である。東京新聞11月27日夕刊に掲載された、片山氏の「ご都合主義の衆院解散 憲法を素直に読み、限定を」という所論を読んで、僕も完全に説得された。確かに明示的には7条解散は否定されてはいないと思う。だが、憲法の解釈としては「7条解散は想定されていなかった」と考えるのが正しいのではないか。今年になって考え方を変えたのである。

 そのことを説明するとちょっと面倒くさいんだけど、まあ一応きちんと書くことにする。まず、天皇の国事行為を定めた7条の前の、憲法6条から。そこでは「天皇は、国会の指名に基いて、内閣総理大臣を任命する。」そして「2 天皇は、内閣の指名に基いて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する。」とある。これはものすごく重要で、絶対覚えていないといけない決まりだ。

 ところで、なんでこんな決まりがあるのだろうか。普通の大臣は、「内閣総理大臣は、国務大臣を任命する」(68条)。最高裁の裁判官は「(前略)その長たる裁判官以外の裁判官は、内閣でこれを任命する。」(79条)ということで、どっちも内閣が責任を持っている。戦前の大日本帝国憲法では、総理大臣は天皇が選ぶことになっていた。まあ天皇が自分で決めるというよりも、元老や重臣で決めていたわけだが、条文上では天皇の権限とされていた。

 現行憲法では、内閣総理大臣は国会の指名、最高裁長官は内閣の指名である。それならそのまま決まりでいいじゃないか。それをあえて「天皇の任命」にしているのは、天皇が「日本国の象徴であり日本国民統合の象徴」(1条)だから、国家として重要な総理大臣と最高裁長官の「権威付け」を図るために「天皇任命」になっていると考えられる。天皇は政治的な権能は持たないけど、象徴という「権威」はあると思われているから、このような決まりになるのだと考えられる。

 さて、7条にある「天皇の国事行為」は以下の通り。
一 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること
二 国会を召集すること
三 衆議院を解散すること。
四 国会議員の総選挙の施行を公示すること。
五 国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること。
六 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること
七 栄典を授与すること。
八 批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること
九 外国の大使及び公使を接受すること。
十 儀式を行ふこと。 

 この中に六の「大赦、特赦、減刑…」は、憲法73条で、内閣の権限として「大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を決定すること。」が挙げられている。内閣が決めるんだけど、それを天皇が「権威付け」するわけである。一番最初にある「憲法改正、法律、政令及び条約」の公布に関しても、それぞれが憲法の他の条文で定められている。例えば、法律に関しては59条で「特定のある場合を除いては、両議院で可決したとき法律となる。」とある。法律は国会で決まるわけだが、公布にあたっては天皇の名で行うことで「権威付け」している。

 憲法改正についても「各議院の総議員の3分の2以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。」となっている。当たり前のことだけど、天皇が、あるいは内閣が勝手に憲法改正を公布することはできない。安倍首相が「憲法9条に自衛隊を明記する」と憲法を改正して欲しいと天皇に「助言」しても、これは天皇が承認できない。

 栄典授与、外国大使・公使の接受、儀式などは憲法の他の条文に書かれていないけど、これは当然のこととして「権威付け」である。栄典に関しては、憲法制定当時は軍人等の勲章は停止されていたから書いてないのではないかと思う。その後、勲章が復活するが、もちろん内閣が決定している。このように、「天皇がするべきこと」はおおむね憲法の他の条文に書かれていて、それを「権威付け」するためにのみ天皇が関与することになっている。

 そういう中に、憲法7条の「三」の衆議院解散がある。そうすると、これも憲法の他の条文に書かれていることの「権威付け」だと考えるのが自然だ。憲法69条には「内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、10日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。」とある。衆議院で内閣不信任案が可決された場合、内閣が衆議院の解散を決断する場合である。これ以外に衆議院が解散されるケースは憲法に書いてない

 だから憲法を素直に解釈すると、内閣不信任案が可決され衆議院が解散されるとき、その解散・総選挙を「権威付け」するために天皇が出てくると見る方が自然だ。ちょっと面倒なことを書いてきたけど、要するに憲法7条をタテにして「天皇に助言して解散する」は脱憲法的手段だということだ。僕はそう思うようになったわけである。衆院議員の任期は4年もあるのに、首相が解散権をもてあそび、任期の半分も過ぎれば議員がソワソワし始めるというのは確かにおかしい。

 与党が圧倒的多数だったのに、今年ことさらに選挙をする意味はない。多額の国税を費やして選挙をやったのは、私的結社である自民党総裁選に対する個人的な野望のためだろう。イギリスでは選挙は基本的に任期満了でやるように法律で決めた。しかし、2017年には任期前に総選挙を実施している。それは首相が表明し、国会が同意した場合に特例で解散できるとなっているからである。だから、最低でも法律で「国会の同意ある場合は衆議院を解散できる」という決めない限り「7条解散」はおかしい。そう思うようになったわけである。
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非拘束名簿式比例代表制なら-選挙制度を考える③

2017年11月19日 21時24分03秒 |  〃  (選挙)
 まあこれならいいかと思う選挙制度を書いて、この問題を終わりにしたい。選挙制度の問題は関心がない人も多いと思うが、「政治を考える材料」という意味では相当面白いテーマだと思う。世界には様々な選挙制度があり、それぞれに長所短所がある。それを調べて考える問題は、高校や大学での調査学習やディベートのテーマに向いているのではないか。

 ところで、そういう風に議論を進めるときに、前提として考えておくべきことがいくつかある。まず絶対条件として、「一票の価値」の平等がある。これは最高裁の判例が確立している。具体的に何倍を超えると違憲か、国会にどの程度の「努力」を求めるかなどでは異論があっても、選挙をするときに「一票の価値」が重要なファクターであることは議論の余地がない。都道府県を基礎にして小選挙区制度を実施すると、一票の価値が実現しにくい。全国規模で比例代表にすれば、(原則的には)「一票の価値」問題は生じない。これは「比例代表」を重視していくべき大きな理由になる。

 もう一つは「衆議院と参議院」の問題である。まあ「一院制」にしてもいいわけだが、現実的には改憲案を参議院で通すのは難しいだろう。だから、両方あるとして、同じ選挙制度にするか、違う選挙制度にするか。首相指名は衆院が優先するわけだから、例えば衆議院は完全な小選挙区参議院は衆院のチェックを目的として完全な比例代表制にするということも考えられる。しかし、そうなると衆議院で圧倒的な得票で指名された首相が、参議院ではいつも少数派になりかねない。

 もっとも、そのようなチェック機能が大事だとも言えるが、日本では数年前まで「決められない国会」問題で困っていた。どっちがいいのだろうか? いまのように衆参両院で与党が安定多数を持っていると、「決めすぎる国会」になってしまうかもしれない。国民が与えた議席なんだから、それでいいとも言えるけど、選挙では全ての問題を議論しているわけではない。選挙後に与党が提起して、世論調査では反対が多いような法案でも、国会であまり議論されずに成立するのでは困る。

 さらに「当選者の決め方」、あるいは「投票方法」の問題もある。世界には国民の識字率が低いために、政党のシンボルカラーを選ぶといった投票方法もある。でも、日本では明治以来ずっと有権者が候補者名を自書する投票が行われてきた。100年以上ずっと続いていて、国民はそのやり方になじんでいる。学校で学級委員を選ぶなんてときにもクラスメートの名前を書くことが多い。だから、政党が全部順位を決めておいて、有権者は政党だけ選べばいいという方法には違和感がある。

 参議院ではかつて「全国区」という制度があり、全国から50人を選ぶという超大選挙区になっていた。でも「残酷区」とか「銭酷区」などと言われて、問題が多かった。全国的にに知名度があるから、石原慎太郎や青島幸男が最初に立候補したのも全国区。「タレント候補」と言われた。1983年から、比例代表区に変更されたが、その時は政党が立候補の時点で順位を全部決めておく制度(拘束名簿式)だった。しかし、そうなると候補者が有権者以上に党本部を気にする。自民党の名簿で1位や2位になれば、落選する心配は皆無でずいぶん気持ちが楽な選挙になるのだから。

 そこで2001年から、「非拘束名簿式」に変更された。有権者は個人名または党名に投票でき、合算して党ごとの議席を比例で決める。候補者の順位は、個人名投票の多い順にするというやり方である。そうなると、大政党は党名投票が多く、個人名の得票が少なくても当選できることがある。大量得票できる有名候補がいれば、その恩恵を他候補が受けることにもなる。だけど比例で決めるから「一票の価値」は平等だし、個人名でも投票できる。他の制度よりも良い点が多い

 前に書いたように、現在の日本で比例代表のみの選挙制度にすると、過半数を一党で獲得する政党は永遠に出てこないと思う。自民党は多少の増減があるだろうが、人気が落ちても比較第一党になるだろうから、他党を連立に加えて保守政権がずっと続く可能性が高いと思う。それでも、小選挙区だと初めから勝敗が見えている選挙区が多くて、有権者の投票意欲をそぐのに対し、比例なら投票するだけの意味が必ずある(「死票」がない)という利点がある。有権者が投票した通りの結果になるんだから、一番納得できるのは間違いない。 

 ただ、比例代表だと基本的には無所属で立候補ができない。その問題をどうするか。僕は衆院選の制度を都道府県単位の非拘束式比例代表制に変え、無所属候補を「一人一党」として認めるというのではどうだろうかと思う。参議院は地域ブロック別で同じ制度で行う。これなら、衆参で大きく違う選挙結果になることが少なくなると思う。ベストじゃないけど、ベター。

 先に書いたように、選挙制度はベストの方法はなくて、どの制度にもいい点も悪い点もある。それを認めたうえで、日本では「一票の価値の平等」の観点から、比例代表制の方がいいと思う。(小選挙区にも、制度としての利点はあるけれど、一票の価値の観点から、どうやっても毎回裁判になるのを避けられない。)また、小選挙区の大きな問題として、「小選挙区を一家で独占する」という問題がある。まるで封建制度のように、親から子へ選挙区を「世襲」してしまう。安倍、麻生などは後10年ぐらいかもしれないけど、小泉進次郎なんか30代なんだから、あと数十年も当選し続けるかもしれない。横須賀近辺の若者が政治を目指すのは難しい。そういう意味でも「比例代表」の方がいいのかなと思う。
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並立制と併用制-選挙制度を考える②

2017年11月18日 23時00分13秒 |  〃  (選挙)
 選挙をおこなう意味は何だろうか? 一つはもちろん「国民の代表」を選ぶことである。その選ばれた代表が集まって、議会で法律を作る。そういう「立法」が国会議員の役割だけど、日本のような議院内閣制では「内閣総理大臣の指名」も大きな役割となる。「行政権の肥大化」は先進国共通で進行しているからから、行政トップを選ぶというのは、むしろ一番重要とも言える。

 国会議員をどう選ぶかというときに、「国民の代表」選びを最大の仕事と考えるなら、できるだけ国民の多様な声をそのまま反映する議会構成がふさわしいことになる。だから、完全な比例代表が望ましいわけだ。しかし、「行政トップを選ぶ」方を優先するなら、小選挙区で政権の選択を国民ができる方が望ましい。比例代表だと過半数を取る政党がなかなか出ない。だから、イタリアでは全630議席中、最大党派が340議席に達しなかった場合、最大党派に340議席を自動的に与えるという規定がある。比例代表選挙に政権選択機能を持たせるためだけど、「民意」通りの議会にはならない。

 そのように、「小選挙区」と「比例代表」はどちらも利点と欠点があり、それを相補うために「並立制」や「併用制」がある。日本は並立制を取っているが、導入の際に「穏健な多党制」が望ましいとされた。公明党や共産党も重要な政党として残っているから、ある意味で導入の目的は果たされているが、僕には問題点の方が大きいと思う。ここ4回ほど「与党が3分の2」を取るほど過大議席になっている。また、比例区で議席数が足りなくなって他党に議席が移ることも多い。

 日本の制度では、小選挙区と比例代表区に「重複立候補」が認められている。比例区は同一順位にしておいて、小選挙区で敗退した時に「惜敗率」(落選候補者の得票÷当選者の得票)で順位をつける。この制度では、自分の選挙区で支持候補を当選させるためには、有権者は小選挙区で投票したうえで、もしそっちで負けても比例で復活できるように比例区でも支持候補の党に入れないといけない。だから、党に勢いがあると小選挙区でどんどん当選し、比例区でも同じようにどんどん当選する。名前を貸した程度の意識の党職員が比例名簿の最下位なのに当選したりする。

 現在のように「憲法改正」が政治課題とされている時には、このような「過大議席」をもたらしやすい選挙制度は望ましくない。では、他にどんな制度があり得るかと考えてみると、ドイツで行われている「小選挙区比例代表併用制」というのがある。これは「併用」というけど、ベースは比例代表である。だが比例代表では当選者をどう決めるかに難問がある。党が作った比例名簿だけだと、有権者の側が議員個人を選べない。そこで、議席数は比例で決めて、当選者の決定に小選挙区を使うということで「併用制」というわけである。もっとも、これにも大きな欠点がある。

 それを具体的にドイツの事例で見てみたい。ドイツでは2017年9月24日に連邦議会選挙が行われた。法定の議席数は598で、その半数の299の小選挙区がある。有権者は2票を持ち、基本的には比例代表で議席数が決まる。その結果、メルケル首相の与党であるCDU・CSU(ドイツキリスト教民主同盟、キリスト教社会同盟=バイエルン州だけ社会同盟)が33.0%を獲得して第一党になった。連立を組んでいた社会民主党(SDP)は20.5%となった。それぞれ64議席、40議席を減らした。

 実際の議席数は、CDU・CDSが246、社民党が153である。全部で約600議席なんだから、おおよそ3割を取ったCDU・CDSは200ぐらい、社民党は2割程度だから、120程度のはずである。そこが「併用制」の面白いところで、まず比例で当選数を決める。そのうえで小選挙区の当選者で、その党の当選者数を埋めていく。そうすると、比例で決まった数を超えて小選挙区で当選していることがある。その場合、小選挙区当選者は自動的に当選とするので、議席数の方が変わるのである。これが「超過議席」で、今回はなんと111議席の超過当選者が出て全議席数は709になった。

 どうしてこうなったのか。長年の保守、革新の二大政党の人気が落ちてきて、新興右翼政党などが勢力を伸ばしたわけだが、やはり小選挙区では左右両翼の党、あるいは緑の党などは当選が難しい。だから、キ民同盟や社民党などしにせ政党に大量の「超過議席」が生じたのである。ドイツでは(ナチス台頭の過去を警戒して)小党排除のための「5%条項」がある。しかし、今回は初めて7党(キリスト教民主同盟と社会同盟を別の党として数えた場合)が当選者を出している。

 議席数の内訳は、右派の「ドイツのための選択肢」が前回ゼロから一挙に94議席で第3党。中道自由主義の「自由民主党」(FDP)が80議席。旧東ドイツ与党と社民党左派が合同した「左翼党」が69議席。環境派と東ドイツの民主化運動勢力が合同した「同盟90/緑の党」が67議席。メルケル首相が4期目を確実にしたと日本では報じられたが、実はまだ連立の組み合わせが決定していない。年内の合意は難しいと言われている。

 社民党はメルケル内閣と連立しても難民政策などで独自性を打ち出せず、党勢が伸び悩むので今回は連立しないと決めてしまった。極右の「ドイツのための選択肢」と左派の「左翼党」は、どこの党も連立の対象にはしないので、そうなると「自由民主党」と「緑の党」に連立に加わってもらうしかないけど、これは相当に難しい。比例代表を中心にすると、政権のあり方が決まらないことがあり得るという好例である。しかし、そもそも100以上の超過議席が生じ、選挙の前には選挙後の議席数が判らないというのは、やはりおかしいのではないか。こうしてみると、比例代表と小選挙区をうまく組み合わせたはずの「並立制」も「併用制」もどっちもかなり問題があるということになる。
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小選挙区制と比例代表制-選挙制度を考える①

2017年11月17日 22時47分33秒 |  〃  (選挙)
 今さらめいているけど、選挙制度に関して考えておきたいと思う。選挙が終わると、選挙制度への関心も薄れてしまう。そして負けた側は「選挙制度が悪い」と言ったりする。今回の選挙でも、負けた野党支持者の中には「小選挙区制度が悪い」というような意見が見られる。今回の選挙で、自由民主党は(追加公認を含めて)284議席を獲得した。これは全体の465議席のほぼ57%にあたる。しかし、比例代表区での自民党の得票は33.3%ほどだった。全体の3分の1しか得票していない政党が6割近い議席を占めている。おかしいじゃないかというわけである。

 何となく納得したくなるかもしれないが、よく考えてみるとちょっとおかしい。自民党の284議席の中で、大部分を占めるのは小選挙区で獲得した218議席である。そして、すべての小選挙区で自民党と公明党は協力をした。だから、自民党の得票率だけ見て、自民党の議席を論じるとおかしくなる。比例区の公明党は、12.51%を得票している。(「日本のこころ」を含めた)与党合計では、45.93%。では、自民党と公明党は小選挙区ではどのぐらい得票を得ているのだろうか。

 今回の小選挙区での自民党の得票率は、47.82%に達している。(追加公認を含まない。)一方、全国で9選挙区に候補を擁立した公明党は、1.5%を獲得した。合わせると、49.32%。しかし、埼玉11区、山梨2区、岡山3区では公認調整がつかず、二人の候補が無所属で立候補して当選した方を追加公認すると事前に決まっていた。だから、その3選挙区の無所属で立候補した2候補は両方とも自民票に加えてよい。ちょっと手作業をしてみると、2689万2457票となり、全体に対しては48.52%公明票を加えると、50.0%になる。小選挙区で、投票した有権者の半分は自公の与党に票を投じた。

 一方、野党側を見てみると、比例代表では19.88%とほぼ2割の支持を受けた立憲民主党だけど、小選挙区では擁立が少なかったこともあって、8.53%になる。小選挙区の野党第一党は、擁立数が多かった希望の党の20.64%。(比例の希望票は、17.36%)。共産党は比例で7.9%、小選挙区で9.0%。このような選挙結果をみると、自民党の議席数は確かに過大ではあるけれど、「自民+公明」の協力を前提にする限り、やはり「与党が国民に支持された」から勝利したのである。

 「小選挙区は民意を反映しない」という人が時々いるけれど、これはおかしい。「民意」をどう考えるかの定義にもよるけれど、その選挙区で一番の人を当選とするんだから、これを「民意」と言わずして何と言うのか。アメリカ、イギリス、フランス、カナダなどは小選挙区制度である。それらの国の議会もみな、民意を反映していないと言うのだろうか。比例代表以外の政治制度は一切認めないというなら、それも一つの考え方だと思う。だけど、それで本当にいいのか。

 いや、僕は何も絶対に小選挙区を支持しようと思っているわけではない。特に「比較多数」で当選するのはおかしいと何度も書いてきた。もし、小選挙区を続けるなら、フランスのように「決選投票」やオーストラリアのように「順位付け投票」のような制度にした方がいい。僕の考え方は、小選挙区にも比例代表にも問題点があり、最善の選挙制度などはないというものだ。そして、両方をミックスすればいいということで作られた、現行の「小選挙区比例代表並立制」はやはり問題が多い

 まず、比例代表制の問題点だけど、もし今回比例代表だけだったら、どのような結果になっただろうか。その前に言っておくと、今の比例代表は「ブロック制」を取っている。だから、四国ブロックなど議席が少ないところでは、小党が当選しにくい。そのため、自民党の得票率33.3%に対し、比例区の議席66というのは、比例区全議席の37.5%に達している。そういう問題があるわけだが、一応現行の仕組みを前提にして、ただ今回の比例区の当選者数だけで考えてみる。

 そうすると、自民66、公明21、立憲民主37、希望32、共産11、維新8、社民1
 合計176だから、過半数は89。自公では届かない。しかし、圧倒的に自民が1位だから、自民中心の政権ができるのが自然だろう。維新を加えると、95議席になる。それで過半数にはなるけれど、議長や各委員会の委員長を出すと必ずしも万全の数ではない。そこを考えると、希望の党を連立に誘い込む方が安全だということになるだろう。もちろん、立憲民主党と希望の党を足すと自民党を上回るわけだが、選挙の経緯を考えると、この両党中心の連立は難しいと考えるべきだろう。

 現在の日本のような発展した経済大国では、価値観の多様化や投票率の低下が起こってくる。だから、比例代表制の選挙をしている国では、過半数を単独で獲得する党は出てきにくい。日本でも比例区で過半数を取る党は今後も出てこないだろう。世界で見てみると、宗教的立場が重要視されるイスラエルでは、完全な比例代表制を取る国会(クセネト)120議席の中で、与党連合は61議席になっている。第一党のリクードは、政権党ではあるけれど、たった30議席しか持っていない。様々な右派政党、ユダヤ教正統派などが連立に加わるため、政策の融通性が欠けてくる。どこか一党が連立離脱を宣言すれば、政権が崩壊するわけで政治の安定性にも欠ける。

 日本は事情が違うので、比例代表制度を取ると、「保守大連合」が恒常化する可能性が高いのではないだろうか。そして、過半数を獲得するために小党を連立に加わってもらう必要があるから、例えば「維新」がこだわっているような政策、カジノ解禁などが連立合意に入ってくる可能性がある。つまり、比例代表だと議席数だけは「民意」の通りになるわけだが、実際の政権を作る段階になって「民意」とかけ離れた結果になることも多いわけである。比例代表を中心としている国では、例えばドイツのように政党が分立して過半数を形成しにくいことが多い。じゃあ、どうすればいいのだろうか。特に先に「小選挙区比例代表並立制」は良くないと書いたが、それは何故か。それは次回に。
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立憲民主党の躍進をどう考えるか

2017年10月24日 21時22分11秒 |  〃  (選挙)
 前回も見た朝日新聞10.14日付調査の数字を見ると、
希望の党 選挙区=17~24~30、比例区=28~32~36 全体=45~56~66 となっている。
立憲民主党は 選挙区=7~11~16、比例区=11~30~33 全体=34~41~49 である。

 実際の結果は、立憲民主党が上回った選挙区で18、比例区で35、合計55だった。(北海道8区の追加公認を含む。)それぞれ調査時点の上限を超えている。一方、希望の党は、選挙区で18、比例区で32、合計50だった。比例区は予測調査の中央値通りである。苦戦は苦戦ながら、最終盤に予想以上に失速したわけではないのかもしれない。むしろ、共産党の比例予測14、維新の比例予測9が、実際は11と8だったのを見ると、特に前回は共産党に入れた左派票が立憲民主党に流れたという仮説が立てられるのではないだろうか。

 実際に立憲民主党が比例区でどのくらい取ったのかを確認してみる。
 それはなんと1108万4890票もあった。ちなみに比例区全体としては5575万7552票である。(大体1億人強が有権者数で、5500万ぐらいの票を奪い合っているという数字は頭に入れておいた方がいい。)なんとと書いたのは、2012年以後の民主党(民進党)の比例票を見れば判るだろう。
 2012年衆院選=9,628,653
 2013年参院選=7,134,215.038
 2014年衆院選=9,775,991
 2016年参院選=11,751,015.174 (民進党)
 
 短い準備期間で立ち上げられた立憲民主党は、民主党の最低値をはるかに超え、前回の衆院選で獲得した民主党票を大きくうわまった。2016年参院選で民進党が獲得した総得票数をもほとんど一党で獲得している。ちなみに、希望の党は約967万票、共産党は約440万票である。前回の共産党は606万票で過去最高の20議席を比例で獲得した。それと比べると、確かに160万票も減らした。これは立憲民主党に流れたと見るべきだろう。

 立憲民主党はなんでこのように躍進したのだろうか。論を立てると、政治姿勢や政策課題への共鳴とみてしまいやすい。それもあるにはあるだろうが、多分もっと違った有権者の感情に訴える部分があったと見るべきだ。それは東京新聞23日朝刊に載っている「全日本おばちゃん党」(ネット上のグループ)代表代行の谷口真由美大阪国際大准教授の話がよく示している。「経済ドラマ」であり「下町ロケット」だというのである。少し引用してみると、

 倒産の危機に陥った企業が外資系企業に吸収合併されることになり、社長が「社員をクビにしないでくれ」と懇願する。だが、外資系企業側は「必要ない人間は切る」と冷酷にリストラを告げる。不景気な社会ではよく目にする光景だ。(中略)そうした中で、切り捨てられた人たちが「もう一回頑張ろう」と立憲民主党を立ち上げ、自民党に立ち向かった。まるで町工場を舞台にした池井戸潤さんの小説「下町ロケット」を見ているようで、多くの支持を集めたのもうなずける。

 なるほど、このように見ると、立憲民主党が一種のブームを起こした理由が納得できる感じがするではないか。もっと言えば、社長が偽装倒産して露頭に迷いかねなくなった社員たちが、自分たちで労働組合を結成して自主生産に乗り出し全国展開を図っているという方がいいかもしれない。リストラ社員の自主管理労組だと見れば、左派系有権者の琴線に触れたのもよく判る。

 それともう一つ、2003年の総選挙で言われた「1区現象」に近いものが今回見られたのではないか。各地の1区は県庁所在地を中心とする地区になっている。立憲民主党は、北海道、東京、新潟、鹿児島の1区で勝利した。宮城、神奈川、静岡、愛知、岡山、島根などの1区では比例で当選した。また民進党系無所属が、福島、長野、佐賀などで当選した。このことを見ると、かつての民主党のように、候補者と政策を練っていくことで、さらに立憲民主党が伸びる可能性を示していると思われる。

 今回前議員だけでなく、多くの元衆院議員、元参院議員が立憲民主党から当選した。もっと立てていればもっと当選したという人もいるだろうが、時間が限られていた中でなかなか難しかったと思う。それに希望の党から出る民進党候補にはぶつけないという「原則」を守った。今後は市民運動との共闘などで新しい候補者を「発掘」していくことがとても大事だと思う。ドラマで伸びた時期は終わり、地道な積み重ねがないと票にならない時期が来る。

 そんなときに今までの政治家イメージを変えるような新鮮な候補者をどれだけ立てられるか。2019年参院選までの時間はそんなに長くはない。そしてその時に、改憲国民投票や衆参同日選が仕組まれる可能性も考えておかないといけない。そして、立憲民主党が一種の左派党として「中間派の排除」になった場合、希望の党と同じような失望を招かないとは言えない。反安倍政権であらゆる人々と協力していける中核になれるかどうか。そこが大事だと思う。
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自民圧勝の総選挙

2017年10月23日 22時45分48秒 |  〃  (選挙)
 2017年10月22日投票の第48回衆議院総選挙は予想通り、自民党の圧勝自民・公明で国会の3分の2を維持するという結果に終わった。今回は台風が近づき、前週からずっと雨が続いていた。日曜日も多くの地域で大雨で、それがどう影響するのかと思ったら、前回より若干上がったぐらいで(それでも戦後第2位の低さ)、ほとんど事前予測に変化がなかった。

 離島の票が台風の影響で運べずに、開票ができない地域が多かったのも特徴。愛媛県第1区は松山市の大部分だけど、当日には全く開票できなかった。それでも当日夜に「当選」が出ていた。出口調査等で圧倒的な差が付いていたのだろう。台風による避難勧告なども出ているような状況で、投開票にも防災にも大きな問題が生じずに終わった(死者も出ていて各地にかなり被害はあったが。)徹夜で対応にあたった各自治体職員の苦労はとても大変だっただろうと思う。ご苦労様でした。

 希望の党の苦戦立憲民主党の躍進、それに続いて、共産党や日本維新の会の苦戦など、諸問題があるがそれらは次回以後に考えたい。まずは自民党の圧勝という問題。連立与党の公明党は、小選挙区で一つ敗れ、比例代表でも5議席減らした。比例代表は今回から4つ減ったけど、その分公明党も大きく影響を受けた。だから、今回「与党圧勝」感があるのは、ひとえに自民党が大勝したということに尽きる。僕なんかには理解できないんだけど、それが日本の現実なのである。

 朝日新聞が10月14日(土)付でで各党の議席予測を報じている。それは13日までの調査ということになる。それで見ると、自民党はほぼ予測通りになっている。選挙区は208~217~227、比例区は59~69~76である。(中央値が一番可能性が高い議席数。)実際は選挙区で218、比例区で66。比例は東海ブロックで立憲民主党の名簿登載者がいなくて自民に回った分を含んでいるので、実際は予測よりも減っていた。それでもほぼ調査予測通りの結果になっている。

 公明党は選挙区が6~~9、比例区が18~21~26の予測で、中央値がピッタリである。つまり公明党が固める票はすでに固まっていて、その後の運動や他党の動向では上昇も下降もしないということなんだろう。与党系で選挙区は226、比例区は87、合計で313議席。実は2014年の選挙では、自民の選挙区当選者は223議席だった。(実際はその時に次世代の党や民主党で当選した人が自民に入党したから、実質はもっと多い。)今回は218なんだから、選挙区では減らしているのだ。

 一方、比例区では2012年の政権回復時には、比例区では57議席しか取ってなかった。(その時は「日本維新の会」が比例で40議席、「みんなの党」が14議席、両党計54議席とほぼ自民と同じぐらい取っていたのである。)2014年には、比例区で68議席、2017年が66議席。定数減を考えると、これは党勢に衰えが見られないというべきだと思う。

 2012年の時点では、「民主党でも自民党でもない」勢力に一定の支持があった。その後、「みんなの党」も「日本維新の会」も解体・再編され、維新が大阪中心に一定の力を持つが、他の人々は自民党か民主党(民進党)に吸収分解されていった。そして、自公政権は政権復帰後5年も経つけど、まだ支持が高い。自分の都合で解散できるんだから、有利は事前に判っている。立憲民主党あるいは民進党系無所属にかなり小選挙区を奪われながらも、なお比例区で高い支持を得ている。北海道を除けば、選挙区で落選した議員もほとんどが比例区で復活当選している。

 それは、経済状況をよいと見ての「現状維持願望」、北朝鮮情勢に対応した「強い政権願望」じゃないかと思う。それが正しい認識とは思えないけど、そして安倍首相自身には「飽き」や「不信感」を感じつつも、それでも「政権を任せられるのは自民党だけ」と考える層がかなり広範にいるということだろう。もう一つは「郷里の政治家意識」である。全国民の代表なんだから、地元への利益誘導を言うのはおかしいんだけど、地方では事実上「郷里に一番尽くした」と宣伝している。

 そこでポッと出の「希望の党」候補者が落下傘で来る。全然浸透しないのは当然だろう。相手は親どころか祖父以前からその地域の名門政治家だったりする。政治家本人はもう小さいころから東京に住んで、東京の学校しか知らない。それなのに「父祖の地の選挙区」で出て、安定して当選する。これでは祖先伝来の「封土」を与えられている「封建制度」の領主ではないか。

 今回小池都知事が「三都物語」などと言って、東京、愛知、大阪の三知事会合を開いた。愛知県の大村知事の対応はその後揺れたみたいだけど。それでも東京から神奈川、静岡、愛知では希望の党がそこそこ当選している。一方、日本地図を見て気が付くのは、日本海側は圧倒的な自民独占県だという現実である。青森から、秋田、山形、(新潟を除き)、富山、石川、福井、京都の日本海側の京都5区、鳥取、島根、山口、福岡に至るまで小選挙区はすべて自民党が勝利している。

 北海道と新潟県だけが野党系優勢の結果が出ている。どちらも今までの長い経緯と地域性があると思うが、野党協力の積み上げがあるということが大きい。どっちも昔から知事選や参院選などで革新系が強かった。労働組合や農民組合などの歴史もある地域である。どこでもすぐできるというもんじゃないと思うんだけど、自民党政権と対峙することを考えている場合、こういう地域性を本格的に考えるべきだ。それ以上の具体的なアイディアはないけれど。
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野党共闘をどう考えるか-参院選の結果②

2016年07月13日 23時01分02秒 |  〃  (選挙)
 今回の参議院選挙で、野党4党、つまり「民進党」「共産党」「社会民主党」「生活の党と山本太郎と仲間たち」が、1人区で選挙協力を行った。その結果、一人区32の選挙結果は、自民党が21、野党系が11と3分の1で野党が勝利した。前回は岩手と沖縄以外はすべて自民党が勝った。(なお、岩手県の平野達男は民主を離党し、無所属で出馬し当選した。今日になって、自民党入党を申請し、自民党の参議院過半数が実現することになった。)

 そのことを考えると、「一定の成果があった」ということは間違いではない。だけど、それは「まとまれば勝てる」いくつかの選挙区で、「まとまったら自民を上回った」だけのことで、野党が弱いところでは全く歯が立たなかった。野党の結集に国民の期待がふくらんで、無党派や与党支持の有権者もワーッと寄り集まってきた、という状況はほとんど起きていないと思う。

 今回の選挙結果で印象的だったことは、各紙の事前調査報道はほとんどぴったり当たったことだった。1人区はもちろん、3人区、4人区や比例区もほぼ当たっている。生活の党は厳しいが、青木愛に勢いがあるとか、新党改革は議席が難しいが党首の荒井より山田太郎が1位になりそうだなどという予測まで、ぴったり当たっていのには、正直かなり驚いた。1人区に関しては、事前報道と選挙区の特性から、僕は事前記事で「12選挙区に野党勝利の可能性がある」と書いた。そのうち、愛媛を除いて野党系が勝った。もう少し落とす可能性があると思っていたので、協力した意味はある。

 この結果をもたらしたのは「投票率の上昇」である。僕は先に「甲信越がカギ」と書いた。全部野党が勝ったが、その中でも長野県は全国トップの62.86%。3年前より、5%上がっている。新潟も4%、山梨も2%上がった。敗れたとはいえ8千4百票差だった愛媛も、7%も上昇した。与野党一騎打ちで接戦を伝えられると、有権者の関心も深まり、無党派層が多く行くと野党票が増えるという「法則」があるのである。ただし、それは東日本の話。

 6年前の1人区では、岩手、山梨、三重、滋賀、奈良、岡山、高知、大分で民主党が勝った。(福島、新潟、長野は2人区だった。)つまり、民主党政権だった6年前は、結構西日本でも勝っていたのである。その中で、今回は三重と大分しか守れなかった。(6年前は自民が勝った青森、山形、沖縄で今回は非自民が勝った。)それどころか、長崎以外はどこも10万票以上の大差が付いていて、どうにも対策が思いつかない。現在の政権は、僕が時々書くように「長州藩閥」みたいな状態になっている。総裁、副総裁に加え、副総理、幹事長、前幹事長(地方創生相)など政権の要がほとんど西日本である。そういうこともあるだろうけど、他にも何か社会的、経済的な理由があるのだろうか。

 さて、比例区の票を確認しておきたい。自公は1回目に見た。
 民主党は、6年前の参院選では1845万を集めて第1党だった。その後、2012年の総選挙では963万、3年前の参院選は713万と最低を記録。2014年の衆院選では976万票。
 今回、民進党となって初の選挙で、1175万票
 以下、6年前の参院選から各党の比例区票を見ておきたい。

 共産党は、426万→369万→515万→606万。今回は601万票。前回衆院選より少ない。
 社民党は、224万→142万→126万→131万。今回は153万票。ここ数回では一番多いんだけど、6年前よりは70万票減らして、2議席あった現職が一人に減った。
 「生活の党」が、13年参院選で94万(議席ゼロ)、14年衆院選で103万票(議席ゼロ)だったのに対し、今回は106万票を獲得して、初めて比例で1議席を獲得した。民進党を3年前の民主党票と考え、得票を比べてみる。3年前の参院選に比べて、民進、共産、社民、生活、実は4党全部票を増やしているではないか。それは3年前の安倍政権が政権復帰直後で絶頂期にあったということだと思う。

 以上の4党を合計すると、2037万票
 自民、公明の与党合計は、約2770万票。ほぼ公明党分の差がついている。

 そして、野党ではあるが位置づけが難しい「おおさか維新の党」が515万票である。
 3年前の参院選では、「日本維新の会」が635万票「みんなの党」が475万票獲得している。その他、「みどりの風」が43万票、新党大地が52万票、緑の党が46万票。
 今回は他に、「日本のこころを大切にする党」が73万票、「支持なし」が65万票、新党改革が58万票、「国民怒りの声」が47万票という票の出方になっている。

 こうしてみても、前回の維新、みんな票がどこへ行ったかは、どうもよく判らない。
 与党は権力を持っているから、その権力を使って見たいと思う人が集まってくる性格がある。民主党が政権を握っていた時には、けっこう多くの自民党議員が民主党の方に参加したり、自民を見限ったりした。今回東京選挙区で出た浜田和幸という人は、6年前に鳥取から自民党で当選した人だが、当選後に自民を離れて国民新党に参加してしまった。かの舛添氏も「自民党の歴史的使命は終わった」と決めつけて、離党して「新党改革」の代表となった。(残っていれば有力な首相候補になっていたのかもしれない。)今は自民党政権がしばらくは続くのが確実な情勢である。だから、もともと保守的な人にとっては、自民党に吸い寄せられていくという行動を取りやすい。

 最初に触れた平野達男などもそうだろう。民主党政権で復興大臣を務めたが、元は岩手県だから小沢一郎系である。だけど、閣僚だったから民主党分裂時に小沢に付かず、その後無所属、自民となる。もう一人あげると、元杉並区長の山田宏。6年前の参院選では元横浜市長の中田宏らと「日本創新党」を立ち上げるも、東京選挙区で8位で落選。4年前の衆院選で「日本維新の会」から出馬して比例区で当選。しかし、2年前の衆院選では「維新」分裂後に属した「次世代の党」から出たが、比例区順位1位にも関わらず議席を獲得できなかった。今回は自民党比例区から出馬して、名前票が12位で当選した。要するに「寄らば大樹の陰」なのである。

 野党側は野党である限り、「理念」でまとまる。それがなければ与党に乗り換えた方が都合がいい。だけど、理念を掲げると、小さな違いに敏感になり、どんどん分裂していくことになりやすい。強いものに立ち向かうときは、一緒になれるところを探して協力を組む方がいい。一般論では僕はそう思うことが多い。今回、民進党と共産党が協力したことに対し、自民党政権は「野合」だと強く非難を繰り返した。この選挙協力に対しては、右からも左からも強い批判が浴びせられた。僕はそのことについて、ほとんど書いていない。まあ、「一定の効果」はあるだろうが、選挙の全体情勢をガラッと変えるほどにならないと踏んでいたからである。おおよそ、僕の予想した範囲の結果になったと思う。

 民進党、共産党が「野合」したとしても、西日本ではほとんど相手にならない。そういう現実があって、追い込まれて「選挙協力」したのである。「野合」かどうかなどというのは、与党側が勝手に設定したテーマであり、僕にはどうでもいいように思う。野党4党が協力しても、「一定の成果」しかあげられないという厳然たる事実。ここまで強大化した自民党とどう向き合うか。知恵と勇気がないと生き抜けないと強く思う。
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