尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

立憲民主党の躍進をどう考えるか

2017年10月24日 21時22分11秒 |  〃  (選挙)
 前回も見た朝日新聞10.14日付調査の数字を見ると、
希望の党 選挙区=17~24~30、比例区=28~32~36 全体=45~56~66 となっている。
立憲民主党は 選挙区=7~11~16、比例区=11~30~33 全体=34~41~49 である。

 実際の結果は、立憲民主党が上回った選挙区で18、比例区で35、合計55だった。(北海道8区の追加公認を含む。)それぞれ調査時点の上限を超えている。一方、希望の党は、選挙区で18、比例区で32、合計50だった。比例区は予測調査の中央値通りである。苦戦は苦戦ながら、最終盤に予想以上に失速したわけではないのかもしれない。むしろ、共産党の比例予測14、維新の比例予測9が、実際は11と8だったのを見ると、特に前回は共産党に入れた左派票が立憲民主党に流れたという仮説が立てられるのではないだろうか。

 実際に立憲民主党が比例区でどのくらい取ったのかを確認してみる。
 それはなんと1108万4890票もあった。ちなみに比例区全体としては5575万7552票である。(大体1億人強が有権者数で、5500万ぐらいの票を奪い合っているという数字は頭に入れておいた方がいい。)なんとと書いたのは、2012年以後の民主党(民進党)の比例票を見れば判るだろう。
 2012年衆院選=9,628,653
 2013年参院選=7,134,215.038
 2014年衆院選=9,775,991
 2016年参院選=11,751,015.174 (民進党)
 
 短い準備期間で立ち上げられた立憲民主党は、民主党の最低値をはるかに超え、前回の衆院選で獲得した民主党票を大きくうわまった。2016年参院選で民進党が獲得した総得票数をもほとんど一党で獲得している。ちなみに、希望の党は約967万票、共産党は約440万票である。前回の共産党は606万票で過去最高の20議席を比例で獲得した。それと比べると、確かに160万票も減らした。これは立憲民主党に流れたと見るべきだろう。

 立憲民主党はなんでこのように躍進したのだろうか。論を立てると、政治姿勢や政策課題への共鳴とみてしまいやすい。それもあるにはあるだろうが、多分もっと違った有権者の感情に訴える部分があったと見るべきだ。それは東京新聞23日朝刊に載っている「全日本おばちゃん党」(ネット上のグループ)代表代行の谷口真由美大阪国際大准教授の話がよく示している。「経済ドラマ」であり「下町ロケット」だというのである。少し引用してみると、

 倒産の危機に陥った企業が外資系企業に吸収合併されることになり、社長が「社員をクビにしないでくれ」と懇願する。だが、外資系企業側は「必要ない人間は切る」と冷酷にリストラを告げる。不景気な社会ではよく目にする光景だ。(中略)そうした中で、切り捨てられた人たちが「もう一回頑張ろう」と立憲民主党を立ち上げ、自民党に立ち向かった。まるで町工場を舞台にした池井戸潤さんの小説「下町ロケット」を見ているようで、多くの支持を集めたのもうなずける。

 なるほど、このように見ると、立憲民主党が一種のブームを起こした理由が納得できる感じがするではないか。もっと言えば、社長が偽装倒産して露頭に迷いかねなくなった社員たちが、自分たちで労働組合を結成して自主生産に乗り出し全国展開を図っているという方がいいかもしれない。リストラ社員の自主管理労組だと見れば、左派系有権者の琴線に触れたのもよく判る。

 それともう一つ、2003年の総選挙で言われた「1区現象」に近いものが今回見られたのではないか。各地の1区は県庁所在地を中心とする地区になっている。立憲民主党は、北海道、東京、新潟、鹿児島の1区で勝利した。宮城、神奈川、静岡、愛知、岡山、島根などの1区では比例で当選した。また民進党系無所属が、福島、長野、佐賀などで当選した。このことを見ると、かつての民主党のように、候補者と政策を練っていくことで、さらに立憲民主党が伸びる可能性を示していると思われる。

 今回前議員だけでなく、多くの元衆院議員、元参院議員が立憲民主党から当選した。もっと立てていればもっと当選したという人もいるだろうが、時間が限られていた中でなかなか難しかったと思う。それに希望の党から出る民進党候補にはぶつけないという「原則」を守った。今後は市民運動との共闘などで新しい候補者を「発掘」していくことがとても大事だと思う。ドラマで伸びた時期は終わり、地道な積み重ねがないと票にならない時期が来る。

 そんなときに今までの政治家イメージを変えるような新鮮な候補者をどれだけ立てられるか。2019年参院選までの時間はそんなに長くはない。そしてその時に、改憲国民投票や衆参同日選が仕組まれる可能性も考えておかないといけない。そして、立憲民主党が一種の左派党として「中間派の排除」になった場合、希望の党と同じような失望を招かないとは言えない。反安倍政権であらゆる人々と協力していける中核になれるかどうか。そこが大事だと思う。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 自民圧勝の総選挙 | トップ | 立民、希望の票はどこから来... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

 〃  (選挙)」カテゴリの最新記事