工藤鍼灸院・院長のひとりごと2

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あんな夢こんな夢

2006年04月26日 12時43分41秒 | 工藤鍼灸院の出来事
今朝、患者さんから非常に興味深い話を聞きました。

この患者さん、鍼をすると体調が良いという事で、ここ数年定期的に必ず治療を続けて頂いているおばあちゃんです(おばあちゃんと言っても大変若々しい活動的な方なのですが)。
実は先日ちょっとした事から体調を崩し、「救急車を呼ぼうかと思ったけど先生に来て欲しかった」といって僕に往診の依頼を下さいました。その日から数日間往診へ出向いて治療し「入院しなくて済んだ」と大変喜ばれたのですが、いつもの健康な脈に戻るにはあとちょっと・・・と僕は判断していました。

今朝は久しぶりにご自分の足でご来院されたのですが、脈が驚くほど平脈(全ての脈が均一にそろっている状態)で顔色もすこぶる良い・・・。まるで仙人のような脈で穏やかな顔つき。「こりゃ一体どうしたんですか?」と思わず聞いてしまいました。
どうしたも何も体調が良いのだから喜ばしい事なのですが、この患者さんはいつもなら”やや腎虚証”の状態でいる時が最も体調が良い状態のはず・・・。それが、六部位の脈が全てピタッとそろっているのです。

おばあちゃんは急に治療台からピョンと起き上がり、面白い話を始めました。

昨日の夜、おばあちゃんは奇妙な夢を見たのだとか。
暗闇の中に長い上り階段があり、そこをてっぺんまで上って行くとやはり暗闇の中にポツンと駅があり、特急列車が止まっていたそうです。どこへ行くかもわからないその列車の切符を買い、おばあちゃんはその列車に乗り込みます。列車には人がいっぱいで、なぜか乗客は全員手に白い花束を持っていたのだとか。直感的に「このまま乗っていたら死ぬかもしれない」と感じて発車直前にホームへ降りたそうですが、列車が行ってしまうと人は誰もいなくなり、途方に暮れているとどこからか小さな子どもがやって来ておばあちゃんの補聴器を奪って逃げ出したそうです(おばあちゃんは昔から少々耳が不自由です)。すぐに追いかけて子どもを捕まえ、お尻をぺんぺんして叱っていたら、その子どもは小さな火の玉になってしまったのだとか・・・。

・・・と、そこで目が覚めたそうですが、「これは何かの虫の知らせじゃないか?」と思ったそうで、朝から遺言書を書き、貴重品を全てテーブルの上に用意し、隣人に家の合鍵を渡して「何かあったら宜しく」と伝えてから今朝当院へご来院されたとの事でした。そんな思いとは180度違い体調だけはすこぶる良好で、「何だか憑き物がとれたみたいな感覚」と複雑な表情でお話をしてくださいました。

さて、困ったのは治療です。いつもはやや腎を補って脈を整えていたのですが、これだけ脈がそろって体調も完ぺきだと何をすればいいやら・・・。悩んだ挙句、おばあちゃんですからやはり腎気を補っておく方がいいのでは?と考え、腎虚証として軽く本治法を行って終了としました。
治療中も治療後も脈は仙人状態。治療が効いてるのかどうかすら確認できませんでしたが、とにかく脈は最高です。「身辺整理なんてとんでもない、○○さんの今日の脈は今までで最高の状態です。あと100年は生きられる脈をしてますよ(笑)。」とお話しながら治療を進めました。



五臓の変調は夢に現れる事があります。『素問』の方盛衰論には以下のような記述があります。

肝気不足の時はきのこや草花など自然の夢を見る。
心気不足の時は太陽や雷の夢を見る。
脾気不足の時は空腹感がある食料不足の夢を見る。
肺気不足の時は白く悲しく人が死んだり人を殺したりする夢を見る。
腎気不足の時は沈没船や水難の夢を見る。

この記述は数千年前のものですから今の時代では少々表現が合わなくなりますが、これらはあながち間違いではないと感じています。カゼをひくと人が死ぬ夢を見て寝汗をたくさんかいて起きる・・・という話は実際によく聞きますし、水におぼれる夢を見たらおねしょをしていた・・・という経験は僕にもあります(幼い頃ですよ、念のため^^;)。臨死体験では「まぶしい光を見た」という方がとても多いそうですが、これも心の陽気が急激に減少した結果だと推測できます。

しかし、おばあちゃんの夢は・・・一体何でしょう?全体的に薄暗い夢ですから心気の変調(生死にかかわる夢)や肺気の変調(カゼ)ではないはずですし、恐ろしい夢でも食べ物の夢でもない。何だかわかりませんが、とにかく不思議な夢です。
治療後おばあちゃんはますます元気になり、「今度来る時はゆりの花を持って来るからね!」とニコニコしながらお話してくださいました。ありがとうございます、くれぐれもご無理だけはなさらないようにしてくださいね(^^)



体調が良くなったのですから結果的には良い夢だったのでしょうけれど、身体の中で起こった気の動きがさっぱりわかりません・・・。鍼灸師にとって東洋医学的な病理がわからないというのはとても悔しいのですが、今日一日ゆっくり考えてみようと思います。

今日は午後から息子の授業参観です!
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