実戦教師塾・琴寄政人の〈場所〉

震災と原発で大揺れの日本、私たちにとって不動の場所とは何か

今市事件・下 実戦教師塾通信八百八十六号

2023-11-10 11:29:27 | 戦後/昭和

今市事件・下

 ~再審の壁~

 

 ☆初めに☆

前々回の能天気な宇都宮レポートは、今市事件「勝又拓哉さんを守る会第7回総会」の翌日のものです。今回は総会のレポートになります。会場の宇都宮総合コミュニティセンターは、市の郊外にあります。

総会の基調講演は、京都法律事務所の鴨志田祐美弁護士でした。再審開始が決定されたものの、先の6月に棄却された「大崎事件」を覚えてますか。満期まで刑務所で過ごし、96歳となった今も無罪を訴えている原口アヤ子さんの事件です。鴨志田弁護士は大学時代のインターンからこの事件に関わり、それで40年間担当。『大崎事件と私:アヤ子と祐美の40年』という「40年」はそういう意味です。写真が鴨志田弁護士(不鮮明ですみません)。

 

 1 証拠開示

 ここしばらくの間、袴田事件の報道が連日のようにあったわけで、裁判の仕組みを考えた読者も多いのではないだろうか。27年間にわたって開示されなかった証拠が、裁判所の開示勧告で出て来た。そのひとつが「5点の衣類」だ。無茶苦茶な発見のされ方と、恣意的な判断はもうここでは書かない。まず、証拠開示が大切なものであるにもかかわらず、それが極めて困難である実情は知らないといけない。2016年、ここの改善が試みられる。「証拠の一覧表(タイトル)交付制度」が国会で通る。しかし、弁護士会はこれに対し積極的な評価をしない。まず、証拠のタイトルが分かっても、どのような証拠なのかを判別することは困難であること。袴田事件で言えば、タイトルに「5点の衣類」と示されたところで何も分からない。また、その証拠について実際に開示を受けられるかどうかは別の問題となっていることだ。さらに良くないのは、この法案とセットになった司法取引(「自白内容で起訴を免れる」等)の導入、通信傍受(盗聴)の拡大等によって、捜査側に大きな武器を与えたことだ。鴨志田弁護士は語る。

「証拠開示は、裁判所による検察官への証拠開示勧告・命令がなければ実現せず、証拠開示勧告・命令を行うか否かは事件を審理する裁判所の裁量に委ねられています。つまり証拠開示によって冤罪被害者が救済されるか否かが、当たった裁判官のやる気次第(「再審格差」と呼ばれる)という事態を招いています」

しかし、今市事件の場合、開示されていない証拠とは何なのだろう。勝又拓哉さんのDNAを始め、凶器のバタフライナイフもすべて、証拠が「ない」か「見つかっていない」のである。あるとしたら、取り調べの録音・映像だけという情けない状況だ。しかし、別件逮捕から自白まで4カ月間の記録はとってない。映画「それでも僕はやってない」・周防正行監督のコメント「一部可視化は冤罪を生む」が、守る会に寄せられている。

100名の方々が詰めかけて、講演に耳を傾けました。

 

 2 「敵は法務省にあり!」

 この「再審の壁」は、世界に共通のものではない。日本の刑訴法(刑事訴訟法)は、明治から大正にかけ明文化される。その原型となったドイツでは1964年の法改正により、再審開始決定に対する検察官上訴は明文で禁止された。つまり、袴田事件や大崎事件のようなことは、ドイツでは起きない。また、日本の刑訴法をひな形にした台湾では、

①「新証拠」は「判決確定前に存在し……たが調査はしていなかったもの、若しくは判決が確定した後に存在し……た事実や証拠」とされた(2015年成立)。

②新証拠になることが……期待できるときは、原裁判所にDNA鑑定を請求出来る(2016年成立)。

等のような改良が見られる。もっとあるのだが、分かりやすい部分のみの抽出である。流行り文句で言えば、ガラパゴス化している日本と言ってもいい。日本はいま何をしているのか。以下は、鴨志田弁護士の講演からの聴き取り。

 国会においては、かなりの数の議員たちが超党派で再審法改正について議論し、改正案上程を目指している。地方議会から国会に対し、再審法改正を求める意見書を採択する動きが拡大(今年の10月現在、北海道・岩手県・山梨県の議会と153の市町村議会が意見書を採択)。市民団体レベルでも、「再審法改正を目指す市民の会」「冤罪犠牲者の会」が、去年結成されている。これだけの動きがあるというのに国がなかなか変わろうとしない理由は、国会の方にあるのではなく旧態依然とした「法務省」だと、鴨志田弁護士は断じた。そして、冤罪は自分に無関係だと思っている人が多いがそれは違う、と言って鴨志田弁護士が強調したのは「痴漢」という「言いがかり」だった。素朴な勘違いもあるが、示談金目当ての方(もちろん「女の人」)もいるそうだ。他人事ではないゾと強調したのだった。

勝又拓哉さんのお母さんや弁護士さんも写ってませんが、守る会の中心スタッフ。最前列のトレーナーが、弟の高瀬有史さんです。守る会の各支部が、全国で活動中です。

 

 ☆後記☆

ガザの「トンネル網」をイスラエルが攻略してます。トンネル網はハマスの隠れ家だとイスラエルは言いますが、その中には当然、住民がすがる思いの防空壕もあることでしょう。私は沖縄戦での「ガマ」を思い出しました。イスラエルには鉄壁の守りと言われる、レーダー&ミサイル迎撃がセットとなった「アイアンドーム」と呼ばれるシステムがあります。この圧倒的な力の差を比較すると、ガザ、いや、パレスチナの人々を思わないわけには行きません。「私は壁の側ではなく卵の側に立ちたい」と言った、村上春樹はどう思っているのでしょうか。ガザのレポートは再来週になります。次回は成り行きとはいえ、市役所に乗り込むことになってしまったことを、お知らせしたいと思っています。

 ☆☆

やってくれましたね、オオタニさん💣 いいニュースは、やっぱりここからだぁ 全国のすべての小学校に、グラブを合計6万個 少し調べたら、現在の小学校の総数は20390校だそうで。全校で千人を越える学校もあれば、中には10人という学校もあるわけです。ひとつの学校にグラブは3個。玄関に飾る学校もあれば、全校生徒がわが手で愛でる学校もある。なんか、ロマンを感じますねぇ


最新の画像もっと見る

コメントを投稿