実戦教師塾・琴寄政人の〈場所〉

震災と原発で大揺れの日本、私たちにとって不動の場所とは何か

帰還/再生への思い  実戦教師塾通信四百八十三号

2016-02-19 11:11:48 | 福島からの報告
 帰還/再生への思い
     ~春よ来い!~


 1 雪

 先日、雪の降らなかったのは、首都圏では柏だけだったらしいが、ここ福島のいわきにもずいぶん降ったようだ。あちこち雪が残っているのに、驚いた。

これは高久中央台仮設住宅近くにあるケーキ屋さんの店先。寄せ集めた雪にキャンドルを施(ほどこ)すあたりはさすが、と感心した次第である。

 これは日本晴れのいわき駅前のけやき通り。ここも日陰にはまだ雪が残っていた。ローマ字で「Kawauchi」とあるので分かるんだが、この交通案内標識の「川内」を、読者は「カワウチ」と読んだだろうか、それとも「センダイ」と読んだだろうか。どっちの読みでも原発が関係することになるのが、なんとも複雑なところだ。福島県の川内村は、2014年の10月に避難指示が解除されていることを思い起こしておきたい。

 2 「もうオレは自由人だ」
 今月7日のNHKはETV特集「帰還への遠い道のり」を見ただろうか。楢葉町の困難な状況を取材したものである。これは見なきゃと思った。実際、いつも目にしている風景が映し出された。
 楢葉町の当面する問題として、スーパーを取り上げていた。役場職員の言う、
「スーパーがないと住民が戻らない」
という考えと、
「人のいないところにスーパーを建てても採算がとれない」
というスーパーの経営者の言い分が、どこまでも平行線なのである。
 この通信の479号で広野のレポートをした。いま広野町は、住民の半分が帰還した。そこにスーパーのイオンが建設されている。私たちは今まで、日本中の小売店が、スーパーに駆逐される姿を見てきた。今まさにそんな状況が、震災/原発事故のあとに再び起きようとしているように思えたのである。広野二つ沼の小さな直販所も、きっと強い風にさらされる。私はだからこそ、
「でも私たちも頑張るよ」
という直販所のおばちゃんたちに胸打たれたのだ。

 テレビは楢葉のレポートなのである。写るかなあ/出るのかなあと思っていた酪農家の渡部さんの姿は、結局出なかった。その渡部さんの意見を聞かないわけには行かない。

「これが出たばっかりの『町政懇談会』の資料だよ」
渡部さんが渡してくれたのは、今月出たばかりの「27年度下半期」の資料である。その中に竜田駅周辺の整備計画図がある。竜田駅は、町役場と天神岬を直線で結ぶ中程にある。その周辺で廃炉(はいろ)を進める事業や、いわゆる先端的工業研究施設の建設が始まっている。3000人規模の工場/研究地帯である。それに伴って、商業施設や宿泊施設(ホテルだ)が出来る。渡部さんが言う。
「つまり、新しい産業が出来て、そこに新しい人たちがやって来るってことなんだ」
「そんな人たちが3000人ってのは、コンビニの守備範囲なんだよ」
渡部さんの不安が分かるだろうか。
 今まで楢葉の人たちのやっていた仕事ではないものが始まる。そして、そこに従事する人たちは、新たな宿泊施設に滞在し、お昼はコンビニで購入するか食堂ですます。渡部さんは続ける。
「スーパーや小売りは、そこで暮らす人たちが利用するものなんだけど、コンビニは違うんだよ」
「住民」というものは、朝と昼の定時に買い物をするわけではない。必要な時に必要なものを買いに行く。つまりどうやら、今までの「町の暮らし」とは、全く別なものが始まるということのようだ。
 早く町に戻りたいという渡部さんは、3月いっぱいで仮設住宅の仕事をやめる。春からいわき市内の高校に通う息子と、お先に楢葉に戻るという。そして、自分のところや近所の土地の面倒を見るらしい。
「農業ってのは、いくらでも仕事があるんだよ」
雑草を刈り取ったり地面を起こしたり、おそらくカリウムをまいたり。もちろん線量も測らないといけない。
 春からの職種はなんですかね、という私の問いに、
「4月から、オレは自由人だよ」
渡部さんは、嬉しそうに言うのだった。

 3 春よ来い!
 あと一カ月で、震災から5年。ニュースや新聞では「孤独死」や「復興」が報道されている。
 元気なおばちゃんたちがいなくなった仮設住宅は、
「なんか火が消えたようだよ」
と、集会所の担当職員が言う。みんな集会所に顔を見せず、外に姿を見ることも少ないと言う。先日はソフトバンク球団から「慰問(いもん)」の申し入れがあったそうだが、せっかくのイベントにも、肝心の住民が顔を出さないからと断ったそうだ。
 その一方で、復興住宅に移った人たちも、どうもはかばかしくない。この日、第一仮設住宅に来た復興住宅の方と、たまたま顔を合わせることが出来た。向こうも、あらあらと笑顔を見せてくれてありがたい。しかし、話は暗い話が多いのだ。
 通りの向こうに出来た商店のひとつが、店じまいをしたという。
「まあ、品物が少ないし、信号のない道を横断してまで行こうとは、みんな思わないんだよなあ」
相変わらず制約が多いという集会所は、みんな利用しないらしい。でも、廃材利用?のベンチがたくさん設置されたという。
「もうすぐあったかくなったら、みんなそこに腰掛けて話し込むよ」
嬉しそうに言うのだった。また、ヨーカドーが企画した販売車が、週に二回だけ住宅までやってくるそうだ。
「助かるよ。いつもみんな大喜びで買い物だよ」

 春よ来い!


 ☆☆
いわきの朝は冷え込みました。凍りついて真っ白になった愛車の窓を見て困っていたら、
「水やっか」
とは、向かいの住民の方でした。
湯本の夜空はいつも星が満開なんです。ホントにもうすぐ春ですね。

 ☆☆
今月になって、岡山の友人が牡蠣(かき)を送ってくれました。本当の旬(しゅん)は1~2月というから、ありがたいことです。確かに身が大きく味が濃い、ような気がします。みんなに配って喜んでもらってます。写真も送ってくれたので、読者の皆さんは写真で「堪能」してくださいね。悪しからず。




 ☆☆
前号記事に、結構反応ありました。部活のことはきっと一悶着(ひともんちゃく)ありですよと、投稿のすぐあと言ってくれた知り合いも何人かいました。偶然ですが、翌日の新聞に大きく部活のことが出ました(朝日)。舌打ちしながら読んだ私です。
あと、子育てと診察/病院のことなどに、多くの意見が寄せられました。どうやら私の考えを書いておいたほうがよさそうです。出来たら次号で、ダメだったらそのまた次に書きます。

いつもの立ち見台から、もうすぐ春の手賀沼。

 ☆☆
えっと、不倫の議員宮崎のことですが、
「人間としての欲望に負けた」
っていうくだりに、コメントがどこからも入りません。どうしてだろう。「人間として」っていう言葉は、ああいう文脈では使われないと思うんですがね。「性欲に負けた」ですよね。あの場合は。

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