実戦教師塾・琴寄政人の〈場所〉

震災と原発で大揺れの日本、私たちにとって不動の場所とは何か

根拠/拠り所  実戦教師塾通信二百九十九号

2013-07-18 11:27:16 | 子ども/学校
 教師の善意/親の愛

     ~補記③「いじめ解決の困難な道のり」~


 1 二つのケース


 若者の殺人・自殺が相次いでいる。「誰でもよかった」(埼玉県)、または「わいせつ目的」(茨城県)と、取りつく島がない中、相変わらずと言っていられない対応が見られるのがいじめ事件だ。何度か言ってきたが、報道の問題点もこの回で触れておく。その問題点とは、「被害生徒」に対する姿勢が、原発事故の被災者に対する「腫れ物(はれもの)にさわる」かのような姿勢と似ているような気がすることだ。

①アンケート書き換え
 今月初旬、栃木県栃木市の小学校で行われたいじめアンケート調査で、三年生の担任が、児童の「いじめられたことがある」とした回答に、
「いじめじゃなかったよね」
と指導し、書き換えた(7月10日)。

②名古屋市中学校「転落死」
 当初は「マンションから転落」とされた名古屋の中学男子生徒の事件である。16日のニュースで、全校アンケートの結果に、自殺生徒が「死ね」と言われているのを聞いたことがある、あるいは「殴(なぐ)られている」のを見たことがあるという21件の回答があった、という市教委の会見があった。「そんなに簡単には死ねない」という担任の発言もあったという。ご存知の通り、三日前のニュースでは「新聞の取材」に、複数の生徒が「担任は自殺をあおるような発言をした」とあり、それに対して「やれるならやってみろ、という発言は一切していない」という担任の反論、とある。

 まず初めに、このいじめ問題の面倒(めんどう)なところは、二つのケースのように、
「『言ったかどうか、したかどうか』は核心ではない」
にも関わらず、
「『言ったかどうか、したかどうか』がめやすになってしまう」
ことだ。例えば、今日びの中学生にとって「死ね」は、あいさつのようなものだ。それらが、大人(社会)が言うような「決して言ってはいけない」意味で流通しているわけではない。それらの「死ね」をいくつかを通訳すれば、
「うるせえよ」「ほっといてくれよ」
「黙れ」「オメエは関係ねえ」
に始まり、
「分かったよ」「悪いのはオレだし」
とか穏健(おんけん)種もあるし、にこやかに
「頑張れよ」「じゃあな」
という、信じられないような使われ方もある。すべて「死ね」が使われる。こういう話を聞いて、そういうことならそういう風に言わせないといけない、という人たちには、子どもたちの姿は絶対見えて来ない。この人たちが、子どもたちに「死ね」と言われることは間違いない。この類の面倒を、名古屋の事件は抱えているように思う。付け加えれば「殴(なぐ)る」「蹴(け)る」も同じだ。その事実だけではなんとも判断がつかない。
 さて、それをおいても、①の担任によるアンケート書き換えは少しばかりおかしい。小学校三年の段階で「いじめかどうか」の判断は、確かに少し困難を伴うこともある。記入にあたっては、おそらく事前に、
「不愉快なことだった」か「仕方がなかったことだった」か
が違うことを、担任は指導したと思う。だから、その後の記入結果については、もうそれこそ
「仕方がない」
はずだ。さて、新聞記事の内容が事実である、という前提で話を進めよう。新聞(東京)によれば、「いじめられている(またはそれを見た)」と回答した児童7人を「推定した」担任が呼び出した。「推定」が意味するのは、アンケートが「無記名」だったということだ。それで7名が「多分これを書いたのはあなたたちね」と、担任から呼び出された。その後、この担任が「指導」して、2名に「いいえ」を担任自身が書き加えた、とある。この7名、あるいはこの子たちの周辺で、担任に対しての不安・不満が生じた。だから「保護者からの訴(うった)え」が生まれた。結局、子どもたちが初めに書いた回答「はい」を学校側が認めるのだが、こんないきさつもおかしい。担任と保護者(児童)の間に学校が入らないといけなくなった、ということだ。こじれたのだ。どちらも折れなかった。この場合、保護者が
「先生もこんなにこだわらなくてもいいのにね」
と、書き換えのことを笑ってすまさなかった、と考えた方がいい。担任と児童が良好な関係だったら発生しなかった問題と思える。担任が
「『言ったかどうか、したかどうか』がめやすになる」
ことを恐(おそ)れて行ったフライングと思える。
 一方、名古屋の事件は異例な展開を見せている。これも新聞の報道が事実と考えて進める。
 まず一つ目は、市教委とともに担任が記者会見をしている。通常考えられない。というか、記憶にない。あったとすれば、大阪桜宮高校の顧問(こもん)の言い訳ばかりの会見。それは事件のず~っとずっとあとだった。普通は担任(または顧問)の「出る幕ではない」。名古屋の担任は、頑強(がんきょう)に出席を主張したと思われる。こういう時の冷静さを保つ困難さもあるし、で「最終責任者」たる校長や市教委で会見はされる。しかし、担任は出席した。そして、二つ目の異例が始まる。その席上で
「悲しい・悔(くや)しい」
と、担任が言ったことだ。今までこんなことがあっただろうか。こんな当たり前のことを会見で言ったのを見たことがない。もしかしたら、今までは、記事や録画の編集で削(けず)っていたのだろうか。やはり私はそう思えない。数々の画面からは、
「厄介(やっかい)なことになった」
というエライさんの苦(にが)り切った顔しか、私には伝わって来なかった。仲間の話では、会見での校長の顔(表情)がよくなかったという。その場しのぎの言葉を校長は言ったのだろうか。それは今後明らかになるにしても、この
「悲しい」
が、今まで発せられることのなかった、という点で異例なのだ。「いじめと自殺の関係」について、校長は「一つだけに断定はできないが、可能性は高い」と言ったこともそうだ。アンケートの結果だけで、ここまで言った例を私は知らない。いつだって、
「いじめはあった。しかし、自殺との関係は分からない」
と言ってきた。


 2 『坊ちゃん』

 名古屋の生徒の遺書(いしょ)-メモを読んだだろうか。全文かどうか分からぬが、ここでもう一度確認。いやな遺書だ。

 まず自殺しようと思ったのは、なぜかですが、一つ目、自分自身に嫌気(いやけ)がした。二つ目、いろんな人から死ねと言われた、ということがあったからです。
 一つ目についてはうそをたくさんつく。提出物も出さない。そんな自分がいやになりました。先生や両親には、こんな自分を変えられなくて申し訳ないです。
 二つ目はそのままあえて名前は言いません。気付いてあげられなかったなどと後悔(こうかい)しないでください。自分から隠(かく)していたのです。大丈夫なようにふるまっていたのです。悪いのは自分と一部の人なのですから。さようなら。もし死後の世界があるなら、見ています。ありがとう。(7月13日付朝日新聞)

「(死ねといった人の)名前は言いません」なる文言(もんごん)は、今後、「誰が(言ったか)」という舵取り(かじとり)をしていく。この一週間ほどの報道から、そしてこの遺書から、確かに「死ね、うそつき」「うそじゃない、ホントに死ぬよ」というやりとりがあったことがうかがえる。今後もやはりこの世の中、「『言ったこと』がめやす」となる。また子どもたちの世界が息苦しくなっていく。
 それはいい、というか置いとく。この遺書から読者はどんなことを感じるのだろうか。私には、誰にも愛されることのなかった、だから自分を愛することもない少年の姿が露出(ろしゅつ)しているようにしか思えない。簡単に言おう。「死んでやる」と言ってホントに死んで見せる人間は、愛されていない。私は漱石(そうせき)の『坊ちゃん』を思い出す。

「小学校に居る時分(じぶん)学校の二階から飛び降りて一週間ほど腰を抜かした事がある。……同級生の一人が冗談(じょうだん)に、いくら頑張(がんば)っても、そこから飛び降りることは出来まい。弱虫やーい。と囃(はや)したからである」

坊ちゃんは、母が兄ばかりひいきにし、おやぢはちっとも自分をかわいがってくれなかった、と言っている。それが「愛されていなかった」理由になるかどうかは、確かに心もとない。しかし、両親の影がとてつもなく薄いことは確かだ。坊ちゃんが、小さい頃に二人を亡くしてしまうことを差し引いても、充分に影が薄い。坊ちゃんを支えていたのは「下女(げじょ)」の清(きよ)である。坊ちゃんはこの年老いた清と、将来(しょうらい)一緒に暮らしたいとさえ思っていた。漱石自身のことを書いているかに思える部分だ。
 最後に、この名古屋の生徒の両親のために言うが、ことはこの子の親のことで言っているわけではない。何度も言ってきたが、今の親の多くが「子どもを愛していない」ということだ。

○小学校の頃からカギのかかる部屋を与える

ような親は子どもを愛していない。こんなものは「子どもの自立」とか「自由」というものとは縁(えん)がない。また、子どもには「寝る時間」があり、「見てはいけないもの」があるとかいうことについて、どれだけの親・大人が自覚しているだろう。そんなことだ。


 ☆☆
結局終わりませんでした。あと一回続きます。

 ☆☆
いよいよ夏休みまであと一日。私には関係ないようですが、やっぱり嬉(うれ)しい。いろんな夏休みソングありますが、私はやはり吉田拓郎の、ずばり『夏休み』。この間もコメントに全曲入ってました。30年前の磐梯山(ばんだいさん)でのキャンプファイア、私たちのクラスの出し物が『夏休み』でした。懐(なつ)かしい。

 ☆☆
今度の日曜って選挙の日なんですね。どうします? それでお知らせしますが、自民党中央と地方がねじれてるのって沖縄だけだと思ってませんか。福島もなんですよ。ニュースになったのは今年2月16日の朝日新聞だけだと思います。前日の15日に開かれた、原発のある13道県の議長による「資源・エネルギー調査会」の席上、すべての議長が原発再稼働に賛成したのですが、それに激怒(げきど)した福島県の議長が退席したというものです。自民党の福島県議会議員は全員、再稼働に「反対」してるんです。

 ☆☆
白鵬頑張れ!

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1 コメント

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おめでとうございます! (ズバリそうでしょう!)
2013-07-19 13:31:58
もうすぐお祭り(選挙)ですね!!!
自民、共産の喧嘩御輿!
政治家も、随分、汚れたまってきてんじゃないですか!
さあ徹底的に洗礼してあげましょう!
ワッショイ ワッショイ
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