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判決 実戦教師塾通信九百三十一号

2024-09-27 11:27:54 | 子ども/学校

判決

 ~取手いじめ事件~

 

 ☆初めに☆

判決と言っても、袴田さんの判決ではありません。2015年に起きた取手いじめ事件で、当時の担任が停職処分を受けました。その後、この処分は不当である、と担任が県教委を相手に訴訟を起こします。水戸地裁は「懲戒事由には該当しない」と、処分撤回の判決を出しました。このことは以前少し触れました。どのような判決か、検証します。

 1 東京高裁17階

 取手いじめ事件の担任は、酒酔い運転や傷害などの法律違反や、わいせつ行為や盗撮などの信用失墜行為(前出の例も、実はこの範疇となる)を犯したわけではない。茨城県教委も少し頑張ったか? とは、私が唯一信頼を置いてる、教育行政担当者の発言である。なるほど、ニュースの切り取りでしかないが、確かに、

「県教委が出した処分に該当するものは見当たらない」

とあった。水戸地裁判決を巡る報道である。これも、抜粋だったが「処分を出す背景となった調査報告は、その根拠に乏しい」「憶測で出されたもの」ともあった。読まないと分からないので検索したが、判決全文はなかった。

  東京高等裁判所

なかなかに面倒な経過をたどって、やっと閲覧がかなったのは東京高裁だった。持ち出し(コピー)禁止なので、職員がひしめき合って仕事をしている、だだっ広い民事法廷事務室隣の閲覧室に案内された。23頁と、意外に短い判決文だった。冒頭の経過によれば、原告(「担任」だが、以下「原告」と表記)は、人事委員会に審査請求している。それが却下されて、県を訴えた。2022年の3月である。結果は、原告の全面勝訴と言えるだろう。

 2 事実ではない

 考えてみれば当然なのだろうが、原告は当局の対応に、全く言及していない。だから、第一次調査委員会が検証した資料を自ら廃棄したことや、市教委が「重大事態に該当しない」と迅速に議決してしまったこと、市教委が遺族に「いじめはありませんでした」と報告したこと等は取り上げることなく、自分に関わることだけ正当性を主張した。

これ見よがしの「口パク」「耳打ち」をいじめと断ずることは出来ない/交友関係の軽微な変化にいちいち対応出来るものではない/学校アンケートに現れたネガティブな回答のひとつひとつを取り上げることはしない等々。

これらを、市に代わって県が立ち上げた調査委員会が「いじめ」として採用し、原告の学級経営のネグレクトと断じた。判決は、そのことを「憶測」と言っている。この辺りの判断は保留も可能だ。それより、驚いたことがある。ひとつは、原告が「事実ではない」と主張したことだ。以前のレポートを読んで頂いた方は覚えているだろう。私立高校には「単願(専願とも呼ばれる)」制度があり、他校を置いてどうしても当該校に入学したいという生徒を、一般受験生に優先する制度がある。そのためには、校長の推薦が要る。校長推薦と言っても、進路を担当する三学年の教師を中心として協議し、成績や人物、特技等が相手私立校の指定する範囲に収まれば推薦印はもらえる。生活状況としては、欠席数が顕著な場合、不可となるか十分な説明は必要となる。

 さて、原告は夏の三者面談(担任・親・本人)で、公立高校の併願(第二志望)は不可能と伝えている。報告書での言及はないが、私立に落ちれば最終的に公立を受けるのは当然の帰結。最後に控えている受験校は公立校だからだ。「第一希望が落ちたら公立を考える」という申し入れだったはずだが、報告にはそう書かれていない。この後、本人(奈保子さん)は、直接県立高校に「併願可能」なことを確認する。そのことを伝えられた原告は、11月に認識を改め奈保子さんに「併願可能」を伝えた。しかし、保護者には連絡していない。原告は、この経過を「事実無根」としたのである。いまとなっては、この経過の後半部は奈保子さんしか知らないのだ。でも、前半部に関しては、母親が同席している。「単願受験を認めるかどうかは今後の生活態度を見て決める」という、原告(ばかりでない良くある傾向)の発言も聞いていたはずである。一体、公判ではどのような展開がされたのだろう。

 3 疑わしきことの検証は?

 驚きはまだある。水戸地裁の裁定には、県の調査委員会が出した考えが全く無に帰していたことだ。

<お互いにふざけあって書いただけであり,本件生徒が傷ついているということはないとの弁明がなされているが,このような書き込みが冗談として許容されるのは,少なくとも,AやHと本件生徒との間に,強い信頼関係で結ばれ,相互に冗談で書き合えるような対等な関係性が存在する場合でなければならない。>

これが報告書に出された、寄せ書き「〇〇(本人)くそだよね~」等への、極めて重要かつ踏み込んだ判断だ。しかし、原告は「書き込みだけで人格否定があったかのような判断が出来るものではない」とする。調査委員会が透徹した「からかいや冗談が成立する時の条件」を、再び振り出しに戻すものとなっている。

「アルバムの書き込みに人格非難にあたる記載がされることは、通常は想定しがたい」

とは、地裁判決なのだ。だから「内容を確認しなかったことは非難にあたらない」と、信じられない断定が続く。原告は、何点かにわたって「他の教師もやってない(orやっている)」と主張している。つまり、この寄せ書き点検は「他の教師もやってない」し、席替えによる生徒指導の方法は「他の教師もやっている」と主張するのだ。当然だが、寄せ書き点検をしないといけないクラスもあるし、席替えが失敗した時の対処は教師によって違うんだゾ。「他の教師もやっている(orやってない)」ではすまない。しかし、判決はさらに、原告の主張を後追いするかのようだ。

「すでに他の二人は席についてしまっていたし、授業は始まっていた」

というのが、遅刻した3人の生徒のうち奈保子さんしか怒らなかった理由なのだ。そこの二人!何をとぼけて席に着いてるんだ?一緒に前に来なさい! と言わなかったことは自然な成り行きとされた。

「いじめについて保護者や本人から何も聞いていない」「本件処分にかかる非違行為は、他の教員も行っている」「責任を負うとすれば、本件学校関係者全員が負うべきだ」

このようにも原告は言っている。控訴審の判決は来月の31日である。

 

 ☆後記☆

閲覧に至るまで、様々なことを知りました。閲覧者や目的に疑義を挟むものがあってはならないのでしょうが、窓口対応が極めて厳重だったことです。一番驚いたのは「既に判決文はここにありません」という、水戸地裁の対応でした。高裁に入る時はズボンのベルトが金属探知機にひっかかったりと、面白いことも続きました。

所内食堂で食べたタヌキそば。まずくはないですが……380円で文句つける気?と言われちゃうか。

 ☆☆

袴田さん、無罪判決出ましたね。検察が控訴を断念しますように。関連しますが、つい先日、和歌山カレー事件を取り上げたドキュメント映画『Mommy-マミー』を観ました。

林真寿美被告が罪を犯している人物であることは紛れもないのですが、このカレー事件に関しては元々濡れ衣だと思ってました。映画で衝撃だったことは、被害者は被害者でなかったことです。「共犯者」と思われることです。

そして、冤罪と言って忘れて欲しくないのが「今市事件」です。皆さんも、被害者の有希ちゃんを司法解剖した担当医・本田克也教授の「わいせつの痕跡なし」鑑定書を、ぜひ読んでいただきたいです。

 ☆☆

サンスポもらっちゃいました💛


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