特に夜桜は怖い美しさがある
夜桜は一人で鑑賞するもの
「願わくば花の下で我しなんその如月の望月のころ」
西行の詠んだこのうた心奪われたのは思春期の頃だ
まだ陰暦と太陽暦の区別がつかず、如月は二月なのに櫻なんて咲かないじゃあないの?また望月という同級生がいて
「あなたの顔が丸いのは名字のせいね」
なんていじめたり
感傷的なのか、お笑い的なのかわからない青春
でもこの歌が気になり桜の下にはなぜか入れない時期があった
軍歌にも櫻はよく使われていて、潔いのか悲しいのかわからない花だなあと思う様になっていたのだ
余りの美しさ、散り際の潔さ、地や水を花びらが埋め尽くしても風情がある
生まれる前から人に期待され
生まれて命が消えるまでその時々を人に愛される
それは花が枯れて色が変わらないということもあるのかもしれない
木から離れても花でいられる
夜桜を眺めていると、悲しいのか嬉しいのかわからないような複雑な心境になってくる。昼と夜の姿の変化も又味わい深い
こりゃこりゃとグループではやしながらの花見も楽しいが、一人でゆっくり眺める夜桜も捨てがたい
この西行の歌を着物の柄にしていただいたことが在る
東京手描き友禅作家の20人に、東京多摩シルクの白生地を渡し、この歌のイメージで手描きしてほしいと依頼、出来上がった着物を仮縫いにしてスタンに着せ、新宿の高野の画廊で発表
タイトルは
「旅立ちの祝い衣」
つまり亡くなった方に西行のように桜の精に導かれてほしいという願望だった
仲の良い友達のお母さまが
「その日のためにこの着物にしよう」
と購入していただいたのをきっかけに、あれよという間に完売
お母さまはその着物に包まれて旅だった
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます