チャコちゃん先生のつれづれ日記

きものエッセイスト 中谷比佐子の私的日記

着物が繋ぐもの 435

2021年07月08日 10時41分14秒 | 日記
フランスのマドモアゼル、ムッシューのセベンヌちゃん、繭を作り蛾になって昨日七夕の日全員お役目を果たした
今朝土に埋めお礼をした
短くて長い一生だ
種が府中の東工大に入学したのが、5月20日 まず目覚めたのが28日。チャ子ちゃん先生のところにやってきたのが6月4日。それから本日まで楽しませていただいた。塩漬けにしたのに塩の量に失敗して、みんな繭から抜けて蛾になり卵を産んでくれた。卵を産んだ後は静かに羽を休めて、この世から去るまでの時間を過ごす。蚕の見事な一生を見せてもらった。
東工大での卒業はできなかったけど秋桜舎での一生はどんなであったであろうか。白くて美しく、気品のある蛾であった

私達の先人は身近に蚕を飼育したので、この蚕が作る絹の糸を心から愛おしく、大切にしたのだと思う。そのために布を一ミリも捨てないという裁断方法の着物が出来上がったのだ
これは日本にしかない衣、日本人にしか理解できない布へのいたわり方だ

チャ子ちゃん先生が雑誌記者の駆け出しのころ、大役を仰せつかって臨んだ女性記者の集まりの会
そこで見聞きした事は一生忘れない
フランスの著名なデザイナーが、日本の着物の形を変えることをを日本の企業に依頼され、その着物の裁断方法のレクチャーを女性記者たちに教わっていた
とそのとき
「この着物の裁断は完璧で美しい、この形を壊すことは日本の文化を冒涜することになる。私にはできない、この仕事をお断りする」

いまこそ
この美しい決断と勇気ある言葉を日本人全員に聞かせたい
日本の誇りは「命の輝きを大事にする」ということではないか
それはどんな小さなものに対しても、生きている命に愛をもって付き合うかというところに原点がある

セベンヌちゃんはまた強く日本人の命に対する思いを私に教えてくれた

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