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チャコちゃん先生のつれづれ日記

きものエッセイスト 中谷比佐子の私的日記

着物が繋ぐもの 31

2018年10月10日 11時17分04秒 | 日記
奄美の男達は酒好き
東京から来た客をもてなすというより自分たちの楽しみが優先で賑やか
中に日活映画の元青春俳優もいてびっくり
自分で釣ったタコやイカを振る舞ってくれる

その元俳優は都会の風を持っているので
さり気なく私を誘い大宴会の会から脱出させてくれた
昔も今もいい男といると気分は和む
ホタルの飛び交う場所まで案内してくれて無事ホテルへ

早朝から元気な男達につれられまず糸染めの現場に
内地から届いた糸のカセを人肌の湯にくぐらせ汚れや油を取り除く
「気持ちいいよ女の肌みたいへへ」
「あれっこれ紬糸ではないですよね」
「うん?生糸だよ」
「だったらどうして紬と言うのですか?大島紬って」
「組合長さんに聞いてよ」
「はい」

テーチ木という樹皮を煮立てて染料にする
島に自生する「車輪梅」という木梅のような小さな花が咲いていてかわいいが木は大木
赤茶色の煮汁が出て底に糸を浸す何回も何回も絞っては浸す
30回ぐらい浸しては絞るという行動を繰り返し
その糸の束を持って泥田に行く
男達は上半身裸テーチ木の煮汁と同じような色に焼けている
泥田につけると茶褐色の糸がだんだん黒ずんでくる
これも何回もつけたり絞ったりそして水で洗い
また泥田で染めるつやつやした黒い色になる

「誰がこういう作業を開発したの?」
「組合長さんに聞いてね」

自分の仕事をただひたすらに続けているだけで何故になど考えない
「ここまでの色にする」
という思いで泥田水場と糸を持って往復しているのだ

「糸は揉まれて強くなると聞いたな」
と時々ポツリと哲学的な言葉が出るがあとは陽気に己の仕事を楽しんでいる
(最近は職人さんも詳しい説明をしてくれる)

一緒に歩いて泥田に行きまた一緒に歩いて水場に行き
その作業の後ろから質問を浴びせる私をだんだんめんどくさくなったらしく
「さあー休憩に入るわ」
と追い払われてしまった

仕方がないので編集長と島巡り
そうするとそれぞれので染め上がった糸を機にかけて独自の柄を考案して織っていることがわかった

竜郷村に行く
この村には西郷隆盛が幽閉されていた岩倉も残り
またここで島の娘と一緒に住んだ小屋のような家も残っていた
更に驚いたのはっ西郷さんとその娘のチコという名をとって
「チコと西郷」という小さな十文字絣に細い線を組み合わして織った絣が存在していた

西郷隆盛がこの島に流されても島の人々とともに文化を育て上げていたのだと胸が熱くなった

どこにいても「敬天愛人」を通した方だったのだとますます尊敬
大島紬を取材に来てもっと大きなそして深いものに出会ったことがこの島との出会いでもあった
(つづく)



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