チャコちゃん先生のつれづれ日記

きものエッセイスト 中谷比佐子の私的日記

着物が繋ぐもの

2018年11月28日 18時21分07秒 | 日記
文楽人形の着付け

文楽では人形遣いがその役の人形の着付けを毎回するということを初めて知った
歌舞伎は着付師がちゃんと居て着付けていく
しかし文楽人形に関しては人形扱う人がそれぞれの思いを込めて着せていくのだ

その現場の写真を撮らせて頂いた
40を少し過ぎた吉田簑助さんにお願いしたところ快く引き受けてくださった
(それからのお付き合いだからチャコちゃん先生の文楽歴も長い)

それはさておき
国立小劇場での公演前日に撮影は行われたのでその時の演目「心中宵庚申」のお千代の衣装ごしらえ

あの有名な「いまごろはんべえさんどこでどうしているかいなあ」と切なく身を捩る仕草が文楽フアンの胸を絞る
簑助師匠の名演技がなお涙をそそる場面

人形ごしらえは町方女房「お千代」衣裳は三回着替える
あの名場面は茄子紺の地色に白い小花の小紋
夫を思いながらせつなさ、愛しさ、哀れさなどを表現する
その時の顔の表情は下膨れのほうが顎の表情が出しやすいということで首(かしら)は下膨れで目はぱっちり

肩と顎で物思いに耽る仕草
そのため衿の抜き具合に工夫がある
前襟を詰めて後ろ襟をu字に抜く
そのために後ろ襟は肩に縫い付けておく

髪をなでつけるときは胸を張ると仕草に色気が出る
半襟は真綿を入れてたっぷり出し襟あわせを下の方ですることで胸の膨らみに品が出る

悔しさ悲しさは表で表さず長襦袢の袖を噛みしめる
そのため長襦袢の色は着物とよく合うようにこの場合茄子紺の地色に合わせて藤紫を使う

夫の半兵衛と心中をするときは「グンジョウジマ」のきものに着替え、中には白装束の下着を重ねている
襟をきちんと合わせ胸もあまり膨らみを強調しない着付けになる

着付けをしている簑助さんはお千代になりきっていて
胴串の中に頭を入れたら
お千代さんがいきなり話し出すくらいのリアル感があった

鏡の前でいろんな仕草を重ね
すこしでも気になる所があれば着物を脱いでやり直す

その他にも芸者の仕草
着付けるときに肩の線が重要とばかり方をいろいろ動かしながらきものを胴串にとじていく
肩を落とし胸を差し出すようにすると芸者の色気が出る
心の中を訴えたいときは
左肩を落とし背筋を伸ばすことで後ろ姿に華がでる

説明を受けながら
一コマ一コマ撮影をした日々はその後の着物の着方に大きなヒントを与えてくれた
自分の着物姿に疑問を感じたときいつもこの時の写真をもう一度見直している
きものサロンで19ページに及ぶ特集だった

#文楽 #吉田簑助 #心中宵庚申 #お千代 #胴串 #湯文字 きものサロン
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 蚕も放射線で育つ | トップ | 着物が繋ぐもの 58 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

日記」カテゴリの最新記事