眼鏡をかけたスーツ姿のA×KAさんが逮捕された時は、おろろいた。某週刊誌の記事に掲載されていた薬物中毒疑惑は、たちまち確信にかわっていった。そもそも、今回の逮捕のきっかけは妻の通報によるという。どういう経緯があったのかわからないが、妻が夫を警察に通報したのは、いろいろな意味での覚悟の”救済”方法を模索した結果なのかもしれない。
一方、ジャスミン(ケイト・ブランシェット)が夫の悪事をFBIに通報して破滅させたのは、女好きで浮気から本気へと離婚をきりだしてきた夫への復讐心からだった。アメリカの妻は情け容赦ない。確かに、ジャスミンは、経済的にも夫がいなければ生きていけない女だった。彼女が大学時代に出会ってたちまち恋に落ち、あげくの果てに退学してまで結婚した夫ハル(アレック・ボールドウィン)は、まさに最高の理想の男。ハンサム、女に優しい、そしてスーパーリッチ。しかし、ハンサムでリッチな男は、多少肥えても女性からの誘惑が多いものである。そして、用心しなければいけないのは、サプライズのような演出をして妻に高価な宝飾品をプレゼントする気がきくマメな男は、他の女性にもマメであり浮気性であるケースがままあるということだ。
映画は、現在の破産したジャスミンが、サンフランシスコの貧しい妹宅に居候するところからはじまる。ヴィトンのふたつのトランクを運び入れる彼女は、シャネルのスーツにエルメスのケリーバック。落ちぶれてもセンスがよく上品でお金もちのオーラが残るジャスミンに、入れ墨を入れて下品な服装でスーパーに勤め、”愛”という言葉を勝ち誇るかのように簡単に口にするジンジャー。血はつながっていないが、過去と現在の姉と妹の姿から格差社会のアメリカの風景がみえてくる。女性が自立している国というイメージのアメリカだが、意外にも学歴も職歴もないが夫次第で貧しい生活から王侯貴族のような暮らしも夢でない。
ウッディ・アレンはアメリカという国、ニューヨークという都会を抜群に描いてきた監督だが、本作でも久々のアメリカをきりとった映画となっている。豪邸だけでなく、素敵な別荘まで所有するハルの職業が、実業家ではなく単なる詐欺まがいの虚業だったこと。うまい投資話という勧誘でつって富豪になれる国、優秀な頭脳をそんな怪しいスキームを構築することに使うブレーンがいて、又、安易に投資でもうけられると思う人々がいる国。莫大な寄付金でハーバード大学に息子を入学させる親がいる一方で、テレビとゲーム三昧にふけるジンジャーの息子たち。耐え難いくらい短気で粗野な妹の恋人。一方で、パーティ三昧でハイクラスな生活を送る友人たちの虚栄と無関心ぶり。彼らの身なり、言動、笑えるくらい悲しい今日的なアメリカとアメリカ人である。
そしてウッディ・アレンらしい痛烈な皮肉を感じたのは、大学を中退して一切連絡が途絶えていた血のつながらない息子ダニーにジャスミンがようやく再会した時に、「犯罪に手を染めた父親は嫌いだけれど、こんな目にあわせたあんたは絶対に許せない」と激しい憎しみの感情で拒絶されたことだ。そもそも、ダニーの素晴らしい裕福な生活は、すべて人々をだました父親の嘘の金融ビジネスのお金の上に成り立っていたのだ。彼を裏切ったのは、父親の悪事を通報した継母ではなく、父親ではないか。こんな展開に現代版の罪と罰を描いた映画『マッチポイント』を思い出していた。
ウッディ・アレンは女を描くのがうまい。夫の浮気に遅まきながら気がついて、精神が崩壊していく女性役を演じた ケイト・ブランシェットの演技は、さすがにいつもながらさえている。そう、彼女はハルがいなければ生きていけない女だったのだ。ジャスミンの上品なセンスも楽しみながら、映画の冒頭での飛行機の中でのシーンで、あの素晴らしい身なりにエコノミークラスは似合わないと感じたのだが、妹にファースト・クラスできたと嘘をついた彼女の危うさは、現代がもたらす病巣をも感じさせる。ちなみに、余談だが、高価なブランドものは、やはりそれだけの価値はある。
原題:Blue Jasmine
ウッディ・アレン監督
2013年アメリカ製作
■アーカイヴ
・『マッチポイント』
・『ハンナとその姉妹』
・『タロットカード殺人事件』
・『メリンダとメリンダ』
・『インテリア』
・『ローマでアモーレ』
一方、ジャスミン(ケイト・ブランシェット)が夫の悪事をFBIに通報して破滅させたのは、女好きで浮気から本気へと離婚をきりだしてきた夫への復讐心からだった。アメリカの妻は情け容赦ない。確かに、ジャスミンは、経済的にも夫がいなければ生きていけない女だった。彼女が大学時代に出会ってたちまち恋に落ち、あげくの果てに退学してまで結婚した夫ハル(アレック・ボールドウィン)は、まさに最高の理想の男。ハンサム、女に優しい、そしてスーパーリッチ。しかし、ハンサムでリッチな男は、多少肥えても女性からの誘惑が多いものである。そして、用心しなければいけないのは、サプライズのような演出をして妻に高価な宝飾品をプレゼントする気がきくマメな男は、他の女性にもマメであり浮気性であるケースがままあるということだ。
映画は、現在の破産したジャスミンが、サンフランシスコの貧しい妹宅に居候するところからはじまる。ヴィトンのふたつのトランクを運び入れる彼女は、シャネルのスーツにエルメスのケリーバック。落ちぶれてもセンスがよく上品でお金もちのオーラが残るジャスミンに、入れ墨を入れて下品な服装でスーパーに勤め、”愛”という言葉を勝ち誇るかのように簡単に口にするジンジャー。血はつながっていないが、過去と現在の姉と妹の姿から格差社会のアメリカの風景がみえてくる。女性が自立している国というイメージのアメリカだが、意外にも学歴も職歴もないが夫次第で貧しい生活から王侯貴族のような暮らしも夢でない。
ウッディ・アレンはアメリカという国、ニューヨークという都会を抜群に描いてきた監督だが、本作でも久々のアメリカをきりとった映画となっている。豪邸だけでなく、素敵な別荘まで所有するハルの職業が、実業家ではなく単なる詐欺まがいの虚業だったこと。うまい投資話という勧誘でつって富豪になれる国、優秀な頭脳をそんな怪しいスキームを構築することに使うブレーンがいて、又、安易に投資でもうけられると思う人々がいる国。莫大な寄付金でハーバード大学に息子を入学させる親がいる一方で、テレビとゲーム三昧にふけるジンジャーの息子たち。耐え難いくらい短気で粗野な妹の恋人。一方で、パーティ三昧でハイクラスな生活を送る友人たちの虚栄と無関心ぶり。彼らの身なり、言動、笑えるくらい悲しい今日的なアメリカとアメリカ人である。
そしてウッディ・アレンらしい痛烈な皮肉を感じたのは、大学を中退して一切連絡が途絶えていた血のつながらない息子ダニーにジャスミンがようやく再会した時に、「犯罪に手を染めた父親は嫌いだけれど、こんな目にあわせたあんたは絶対に許せない」と激しい憎しみの感情で拒絶されたことだ。そもそも、ダニーの素晴らしい裕福な生活は、すべて人々をだました父親の嘘の金融ビジネスのお金の上に成り立っていたのだ。彼を裏切ったのは、父親の悪事を通報した継母ではなく、父親ではないか。こんな展開に現代版の罪と罰を描いた映画『マッチポイント』を思い出していた。
ウッディ・アレンは女を描くのがうまい。夫の浮気に遅まきながら気がついて、精神が崩壊していく女性役を演じた ケイト・ブランシェットの演技は、さすがにいつもながらさえている。そう、彼女はハルがいなければ生きていけない女だったのだ。ジャスミンの上品なセンスも楽しみながら、映画の冒頭での飛行機の中でのシーンで、あの素晴らしい身なりにエコノミークラスは似合わないと感じたのだが、妹にファースト・クラスできたと嘘をついた彼女の危うさは、現代がもたらす病巣をも感じさせる。ちなみに、余談だが、高価なブランドものは、やはりそれだけの価値はある。
原題:Blue Jasmine
ウッディ・アレン監督
2013年アメリカ製作
■アーカイヴ
・『マッチポイント』
・『ハンナとその姉妹』
・『タロットカード殺人事件』
・『メリンダとメリンダ』
・『インテリア』
・『ローマでアモーレ』
ご訪問とコメントをありがとうございます。
ウッディ・アレンは私も大好きです。
が、、、近作は聞かなくなりましたね。
残念です。
84歳。んっ、なんと自伝を出版するそうです!