千の天使がバスケットボールする

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『ハンナとその姉妹』

2009-05-02 12:23:02 | Movie
ウッディ・アレンである。好きな監督ウッディ・アレンの中でも評価の高い『ハンナとその姉妹』を初めて鑑賞したのだが、やっぱりウッディ・アレンだ。

1980年代、マンハッタンにある家族が恒例の感謝祭のパーティを祝っている。ホスト側の女優として成功しているハンナ(ミア・ファロー)の夫、芸術・芸能一家の中で最も?唯一?常識人で”まとも”と思われるエリオット(マイケル・ケイン)の告白から映画がはじまる。彼は、ハンナの妹、元俳優夫婦の両親の三女にあたるリー(バーバラ・ハーシー)の顔とグレーの地味なセーターに隠された未知の「おっぱい」の美しさに感嘆している。妻の妹でしょ。そんな道徳観を軽いジャズでもて遊ぶのがアレン流。ハンナは、子種がなくて気まずくなり別れた元夫のテレビプロデューサーのミッキー(ウッディ・アレン)を次女の売れない女優のホリー(ダイアン・ウィースト)に紹介(斡旋)し、彼らはデートをしたこともある。ちょっと日本人では考えにくいシチュエーションだ。
結局、エリオットは、プライドが高く厳格な年上の画家フレデリック(マックス・フォン・シドー)と同棲しているリーをホテルに呼び出すことに成功したのだったが。。。

宗教、人生、恋愛、こども、家族愛もアレンにかかれば軽妙洒脱でユーモアとウィットのエスプリの効いたセリフと演出で、上等の映画にしあがる。素敵な本屋、重厚な建築物、セントラルパークとニューヨークらしい景色が次々と登場するのも、みどころ。特に興味をひいたのが、彼らの住む家にある蔵書である。リーとフレデリックが同棲しているソーホーの自宅には蔵書が壁一面に並び、ハンナの家にもあちらこちらに本が整然と並んでいる。読書が生活の一部であることもニュヨーカーらしさなのだろうか。
それぞれに魅力的な三姉妹のキャラクターと服装もそれぞれの個性を表現していて、また職業との相関関係を考えさせられる。
長女のハンナは、長女らしく親の期待をかなえ人格的にバランスのとれた優等生。だからエリオットもリーに強烈に惹かれながらも、逆にハンナへの愛情が深まる。ネクタイを占めたブラウス姿の中年にさしかかったミア・ファローは、フランク・シナトラ、アンドレ・プレヴィン、そしてこのウッディ・アレンと才能溢れる男たちを次々とノックアウトしてきた永遠の妖精のような雰囲気がある女優だ。映画の中でも養子に体外受精児のこどもふたり、合計4人の母の身分でまだエリオットととのこどもを欲しがりせまる場面が私生活を彷彿させて、こんなしかけも楽しい。次女のホリーは、三姉妹の中では実は一番美人で色気があると私には思える。彼女のおしゃれは、いつも完璧。売れない女優で経済的に困っている設定なのだが、セレブ風スーツ姿もファッション雑誌からぬけでたような計算された衣装もコーディネートが抜群である。自由奔放でちょっといろいろな意味で軽い女性なのだが、女性として魅力的なタイプ。三女のリーは、いつもセーターかシャツにGパン姿。おしゃれには全くかまわないか無頓着なのが、芸術好きな一面を表現している。同棲しているフレデリックは、自由人の画家なのだが、逆に自宅で寛ぐ時もきっちり刈った短髪、明るい水色のベストに白いYシャツとまるで几帳面な銀行員のようである。いかにも、、、という人柄と生活にあったスタイルを装いつつも、ちょっと意表をつくようなはずし方をするのが、スノッブなニューヨーカー好み。

傑作なのは、ウッディ・アレン演じるミッキーである。彼は、病気恐怖症。どんなに小さなカラダの変調も、不治の病に結びつきたがるのだが、あれこれ悩んでユダヤ人にも関わらず、カソリック信者に改心しようとする。そんな彼が買物の紙袋からとりだしたのは、十字架、聖書、キリストの写真に、最後にとりだしたのが何故かパンとマヨネーズ。こんなお茶目な皮肉がうける。ミッキーは最終的にトルストイの「人生とは、結局無意味なことを悟ること」という名言のさとりに到達する。この映画は、英語で観た方が絶対におもしろいと感じつつ、字幕を見るのが情けなかった。
やっぱり、だからウッディ・アレン!

ウディ・アレン監督・脚本
1986年製作

■多作なアレンのこんな映画も
『タロットカード殺人事件』
『マッチポイント』
『メリンダとメリンダ』
『インテリア』


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