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一年間だけ、欧州を歴訪したら帰国してちゃんとお見合い結婚をするという両親との約束は、とうとう果たせなかった。初めてのローマに心を奪われてしまったからだ。
「ただ散歩しているだけでも驚くような街だ」
ここにもローマにすっかり心を奪われた男がいる。彼は、映画監督だったので、おかげで愉快で、ちょっとエッチな素敵な映画が仕上がった。その監督は、生粋のNYっ子で陽気なイタリア人とはタイプが異なるウッディ・アレン。
「映画を作っていなければ、家に引きこもってずっと自分の死について考えてしまうだろうからね」
そんな彼だから、こんな映画がつくれちゃうのだろうか。映画館の中で、声をだして何度も笑ってしまった。
カンピドリオ広場で偶然出会って恋におちたアメリカ娘のヘイリー(アリソン・ピル)とミケランジェロ(フラビオ・パレンティ)。彼らの婚約にかけつける元オペラ演出家の父ジェリー(ウッディ・アレン)と母親(ジュディ・デイビス)。そして、有名な建築家ジョン(アレック・ボールドウィン)に青年時代の分身の建築家の卵ジャック(ジェシー・アイゼンバーグ)と彼が夢中になる女優志望の娘(エレン・ペイジ)。そうかと思えば、田舎からローマに新婚旅行でやってきたアントニオ(アレッサンドロ・チベ)とミリー(アレッサンドラ・マストロナルディ)夫妻とセクシー爆弾娘のコールガール(ペネロペ・クルス)。ある日、突然セレブになってしまった平凡な中年男(ロベルト・ベニーニ)。なんと、本物の世界的テノール歌手のファビオ・アルミリアートまで、ミケランジェロの父親役としてシャワーを浴びながら、その朗々たる歌声を聴かせてくれるではないか。
NHKの大河ドラマかN響の指揮者の贅沢なラインアップのように、ベテランから今が旬な新鮮俳優までが次々と魅力的に登場するキャスティング。これもアレンの監督としての吸引力なのだろうか。圧巻なのは、クラシック界のテノール歌手のファビオまでが、シャワーを片手に泡だらけの裸体をさらけだして大真面目に演じている?ことだ。舞台がドイツだったら無理では?、あのローマだから陽気に笑ってはじけたのかも。あのベルルスコーニが首相として統治していた陽気なお国柄だ。
しかし、一番の役者は、久々にスクリーンに現れたウッディ・アレンだろう。引退したちょっと情けないオペラの演出家という役どころも意味しんである。せっかくのシャワー・オペラの演出も批評家からは超激辛の非難をいただいたところには、映画監督の喜劇と悲劇がこもごもしのばれる。気がつけば、ジェリーだけでなく、ジャック、ジョン、セレブになってしまった平凡な中年男、彼らにはみなこれまでのアレン自身とその作品が投影されている。ユーモアを散りばめ肩の力を抜いた脱力系の映画にみせつつ、観客の笑いをとって、かろやかに、けれども人生をちらりとかいまみせる。まるで、映画もオペラのようだ。やはり、アレンは一流の監督だった。
どうしよう、猛烈にローマに行きたくなってしまった!
監督:ウッディ・アレン
原題:To Rome with Love
2012年アメリカ=イタリア=スペイン製作
■アンコール
・『マッチポイント』
・『インテリア』
・『ハンナとその姉妹』
・『タロットカード殺人事件』
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