千の天使がバスケットボールする

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『メリンダとメリンダ』

2006-05-09 23:27:55 | Movie
「人生は喜劇か、悲劇?」

マンハッタンのとあるビストロで、売れっ子劇作家たちがそんな議論を交わす。そして彼らは食事を楽しみながら、不倫の火遊びから離婚したばかりのバツイチ・いい女メリンダを主人公に、同じ設定でそれぞれのストーリーを展開していく。舞台は、ウッディ・アレン監督だから勿論ニューヨーク。洗練された知的なゲームをあなたもどうぞ。

①人生は甘い喜劇だ

失業中の俳優ホビー(ウィル・フェレル)は、映画監督スーザン(アマンダ・ピート)の新作映画の資金集めのパーティで、ホスト役&料理人としてかいがいしく働く。映画化が実現したら、自分にも出演のチャンスがあるから、妻の尻にしかれている立場としてのご奉仕ばかりとも言えない。準備が整い、魚をオーブンで焼いているというメインイベントの最中に、なんとアパートの階下に引っ越してきたばかりのメリンダ(ラダ・ミッチェル)が闖入してくる。
浮気がばれて医師の夫と別れたばかりの彼女は、睡眠薬を飲み過ぎてぼろぼろではあるが、なかなかいい感じの女性ではある。めでたくシングルになった彼女に、次の牡馬のお世話をしようと、周囲はお金持で多趣味な歯科医とのマッチ・メイキングに奔走する。ところがメリンダを競馬に誘ったボブは、そこで医師との結婚の理由を「タッチングが上手」という性的テクニックと聞かされてから、心身ともに落ち着かなくなる。やがて、高級スパーツカーを運転する歯科医とのお見合いの日がやってくるが・・。

②シリアスな悲劇こそ人生だ

俳優のリー(ジョニー・リー・ミラー)と音楽教師である妻ローレル(クロエ・セヴィニー)が、ホームパーティを主催している時、突然ドアの呼び鈴がなる。なんと、裕福な夫と結婚してふたりの子供にも恵まれた友人のメリンダが、単身長距離バスに乗って突然やってきた。
写真家との浮気がばれて離婚され、こどもにも会えず、そのあげくに離婚の原因となった恋人にも裏切られ、精神科に入院もしていたというではないか。しばらく友人夫婦宅のアパートに身を寄せるつもりだが、あきらかにリーは迷惑顔。しかし、ローレルともうひとりの友人は、メリンダにすっかり同情し、彼女のためにお見合いパーティを計画する。
その席で出会ったピアニストの「神経をはりつめて生きる女性はオペラ的」という芸術家らしい気障なセリフに有頂天になる。すっかり舞い上がり、彼との生活を夢みるのだが。

この映画は、ウッディ・アレンのウッデイ・アレンのための、そして彼らしさを好むファン、つまり私のようなスノッブな都会を舞台にしゃれた会話を笑いたいタイプの者へのプレゼントだ。
映画の随所に、ユーモアとウィットが散りばめられ、小技とちょっとしたひねりのきいた知的な会話のキャッチボールがとびかう。人生が、ほろ甘いか、せつなく苦いものなのか、いずれにしろ彼流のコメディという点では、定番である。

この映画製作の現場でも、俳優たちは作品の全貌を知らされず、リハーサルも殆どなくアドリブをとりいれて撮影されている。それが、ハリウッド俳優たちから金ピカの”ハリウッド”らしさという垢を落とし、自然だけれど奇妙な一種の室内劇のような雰囲気をただよわせている。俳優の知名度が必要、という映画界の事情から結局役にありつけない夫、お嬢様育ちの妻の行動をどうせ”ショッピングとランチ”で時間をつぶしていると嘲笑する夫、なにかと夫婦の生活に干渉してくるおしゃれできれいなママと待ち合わせてランチする妻、ハンサムだけど快楽的で頭がからっぽな歯科医、こういうスノッブな視点のキレル皮肉は、さすがに老いてもウッディ・アレン健在である。

恋愛遍歴も多く、女優として円熟した輝きのあるミア・ファローと生活している時に、35歳年下の韓国人の養女との関係が彼女の裸の写真が見つかったことで暴露された、という珍しい?経験もある恋愛の達人ウッディ・アレン。
彼にとって、人生とは苦いけれど、やっぱり喜劇なのだろうか。それとも甘~い悲劇なのだろうか。。。

苦くて甘いオトナのココアをNYのカフェでどうぞ。


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