千の天使がバスケットボールする

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立花隆氏の小泉「専制」政治への警鐘

2006-07-02 23:44:34 | Nonsense
「知の巨人」立花隆氏が、ウェブに連載していた時事評論をまとめて、4月に「滅びゆく国家」として刊行された。



今年66歳を迎える知の巨人の見識によると、日本は今、100年に1度の大改革を迎えた曲がり角だという。その立役者は、勿論オペラ鑑賞で帽子を被り、ドミンゴと並んで悦にいる小泉首相。庶民を泣かす小泉首相の成果は、金融機関の不良債権処理の加速や社会福祉のカットという外科手術だけで、あとは病人を放置して自己回復を待つ無責任な外科医と立花氏は厳しく批判している。
今週号の『週刊エコノミスト』の「問答有用」のインタビューアーに立花氏が登場しているのだが、その鋭く本質をつく切り口に何度もうなる。

■ニートは社会の共同体に入れないまま”アウトカースト”として存在している。一昔前までは、高校や大学を卒業していればどこかに就職できた。お互いが助け合う日本的な大家族社会の一員になれたが、今はそこに入れない人が大量にいる。

■60年に東大に入学した時は、電車を降りて校門に入るまで左翼シンパのビラで両手がいっぱいになった。戦後に一時期は、それほど左翼系の学生運動がキャンパスを支配していたが、日本の歴史を遡ると、右翼、国粋的な流れがほうが、圧倒的に本流。

■東大というのは、西欧先進文明の輸入総代理店として国家が造った大学であり、近代国家日本を支える官僚と各界のテクノクラートを養成してきた。東大の歴史と近代日本の歴史はぴたりと重なる。

■『天皇と東大』で、「日本はバイカル湖まで戦線を拡大すべき」という意見書を提案した誇大妄想狂としかいいようのない戸水寛人博士(バイカル博士と異名がつく)に、聴衆は熱狂する。大衆は戸水博士に煽られ、現実離れした皮算用をするが、それがかなわないと怒りを爆発させて日比谷焼き討ち事件を起こした。大衆は今でもそうです。小泉改革に熱狂したのも同じ、小泉首相は”バイカル博士”に類する人物である。彼自身が”天皇”になってしまった。彼が演説でなにか言うたびに、小泉チルドレンが一斉に拍手する。あれは、一昔前のソ連や中国、現代の北朝鮮などの専制国家と同じ。

■4月に入省した若手キャリア官僚16人を相手の研修会に出席したが、東大を出て、官僚になる人たちが本当に歴史を知らない。それに、科学技術を知らない。いまだに、東大法学部卒業の文系官僚が国をリードするシステムが変わっていないのだから、我々は歴史も科学技術も何も知らない人たちに、日本の舵取りをまかせている。

立花氏の著書は、これまで科学系の書物しか読んだことがないし、その業績に敬意をはらいつつも、ひそかに氏の科学的なセンスは意外と平均的と感じてもいた。
今回立花氏のインタビューを読み、知の巨人というよりも、知の灯台のような警鐘と本質をみぬくまなざしに感動する。かって田中角栄や日本共産党の研究で日本の知識人をうならせたという立花さんは、2006年をむかえ小泉首相は旧来の自民党型政党政治を壊したが、日本も壊したと憂える。憂国の士は、
「100年単位の世界構造変化のなかで、日本は自分たちが生き残るニッチを探し出さないといけません。」
とも。

日経BP