【岩崎俊夫BLOG】社会統計学論文ARCHIVES

社会統計学分野の旧い論文の要約が日課です。

時々、読書、旅、散策、映画・音楽等の鑑賞、料理とお酒で一息つきます。

山口義行『聞かせる技術』河出書房新社、2008年

2008-11-14 21:12:42 | 読書/大学/教育

山口義行『聞かせる技術』河出書房新社、2008年

                             聞かせる技術<

 大学がレジャーランド化し、授業中は学生の私語が蔓延、彼らは単位をととることばかりにきゅうきゅうとしている、大学がそのように評されるようになってだいぶたちます。

 著者はそのようなマスプロ大学のマスプロ授業で、それも「金融論」という難解な授業で、「私語」のない授業を行っているということで、いつしか有名になってしまった先生です。(中小企業問題でよくTVに出演もしています)


 著者はまた、中小企業の経営者の前で話をする機会も多いようで、その経験もふまえて本書を書いたそうです。

 「あとがき」に本書執筆の動機が書かれています。それによると、同僚のK
氏が著者の「私語」のない授業(500-700人前後の学生を収容する大講堂での授業)を展開している様子に驚嘆したとの記事を書き、著者自身がその文章に接して、それが「そんなにすごいことだったのか」と我が身を省みて執筆を受諾したのだそうな(もちろん編集者の声かけがまずあったのですが)。

 話を「聞いてもらう」には、まず聞き手の心をつかまなければならず、そのためには聞き手が「半径1メートル」で生きている存在なのだからそのことを前提にした話から始めること、聞き手がどんなに多くとも「一対一」で語りかける姿勢をつらぬくこと、「損得にかかわること」「人生のドラマ」を挟み込むこと、キーワードで締めくくること、「足りない」ことを自覚させ知識欲をかきたてること、言葉の「由来」やわかりやすい「数字」を上手に使うこと、などがポイントだそうです。

 豊富な経験にもとづいたテクニック(というか実践で身につけたコミュニケーション哲学)を開陳しています。

 そうした方法は、もともとは女子短大の授業(話の「聞き手」は教室で化粧などして教師の話を聞こうともしない女子学生)で鍛えられたのだそうです(pp.27-28)。

 私語をしている学生の存在は教師の悩みの種ですが、怒っても、怒鳴ってもダメで、要は聞き手に対する真摯な姿勢であって、これは企業での経営者の社員に対する姿勢、営業マンの顧客に対する姿勢などコミュニーションの万端に通じるものだそうである。納得しました。

 本書は著者からの献本です。


佐々部清監督『夕凪の街・桜の国』2007年

2008-11-13 16:12:10 | 映画

佐々部清監督『夕凪の街・桜の国』118分、2007年

              夕凪の街 桜の国

 「夕凪の街」「桜の国」の2部構成。話は連関しています。前者は昭和33年、後者は平成19年。広島で被爆した平野という家族の物語です。原作はこうの史代さんの同名のテーマのコミック漫画です。

<夕凪の」街>
 昭和33年。小さな会社で働く皆実(みなみ)[麻生久美子]。会社の同僚、打越さんとの間に小さな愛情が芽生えます。彼女は打越さんが好きでしたし、彼も皆実を好ましく思っていましたが、この時代の若い男女にありがちな恥じらいがあり、想いがストレートに通じあいません。ふたりの間にはある種のもどかしさがあります。

 皆実は終戦間近の8月6日、広島で被爆。父も妹の翠も被爆で亡くなりました。皆実自身、腕に焼け跡があり、またおぞましい被爆の街と苦しむ人々の光景が頭から離れず、これらのことも原因で恋愛に踏み出せません。自分は結婚できないと思っています。

 母(藤村志保)とふたりで広島に暮らす皆実には弟、旭(伊藤克則)がいました。弟は戦中、疎開していましたが、その疎開先の水戸の石川という親戚の家の養子になります。皆実と旭とは、姓は異なっても姉と弟の関係を大切にして、いつも会いたいと思っている間柄です。

 皆実は風邪で会社を休みました。しかし、何かおかしい、すぐに治らないのです。13歳で被爆した彼女は放射能を浴びたことによる原爆症におかされていました。26歳になっての発病でした。そして、打越さんと弟、旭との愛を感じながらの安らかな、静かな死。

<桜の国>
 50年後。旭(堺正章)は定年を迎えていました。東京で暮らしています(恋ヶ窪のあたり??)。姉の皆実の死後、広島の大学に合格し、水戸から出てきて広島の実母の家に住み、就職し、学生の頃からの知り合いだった京花と結婚しました。ふたりの男女の子[七波(田中麗奈)と凪夫(金井勇太)]がいます。妻、京花は40歳代の若さでやはり原爆病で亡くなっていました。
 
 初老の旭の様子の行動がどこかおかしいのです。東京の家から、どこか遠いところにでかけるような素振りです。七浪は弟の彼女である利根東子(中越典子)と夜行バスで広島に向かう父の跡をつけます。父にはある目的があったのです・・・・。

 原爆の傷跡が世代を超えて日常生活に影をおとしていることが、熱く伝わってきます。また前半の<夕凪の街>の各場面に昭和30年代の生活が懐かしく香ってきます。ちゃぶ台、おひつ、ハエたたき等々。

 皆実を演じた麻生久美子さん、清楚でいい感じです。藤村志保さん、堺正章さん、いずれも好演です。

             Kumiko Aso photo a


ニキ・カーロ監督『スタンド・アップ』2005年

2008-11-12 23:41:55 | 映画

監督:ニキ・カーロ 原作:ビンガム&ガンスラー「集団訴訟」
出演:シャーリーズ・セロン、フランシス・マクドーマンド、ショーン・ビーン他

                                      画像

 1989年後半、故郷のミネソタ州の鉱山に仕事をもとめて女性、ジョージがひとりやっててきました。父親の異なる男の子と女の子の子どもがいて、夫の暴力から逃れての離婚歴がある様子。親子3人の生活を続けていくために、父親の働く鉱山に自身も就職。

 ところが男職場のその企業では、仕事がきついのはもちろんですが、男の仕事に割り込んできたことへの反発、露骨な性的いやがらせが日常茶飯事でした。

 企業はもとより 組合も似たりよったりで、女性労働者をそうした嫌がらせから守る姿勢など微塵もありません。男同士がかばい合い、女性労働者は我慢と忍耐の日々。ジョージは余りの仕打ちに訴訟を起こそうとします。しかし、同調する人は女性労働者のなかに、むしろそのような行為をすることで嫌がらせがより深刻になると、逆に彼女を白い目で見る始末です。

 ジョージは思いあまって、男性の弁護士に相談します。最初は冷ややかだった元アイスホッケー選手の弁護士も、彼女の熱意を受け、弁護活動に入ります。訴訟を起こすには3人以上の同調者(集団訴訟)が必要です。始め誰もが無視していたのですが・・・・。

 最後の法廷での場面は、感動的です。セクシャルハラスメントの禁止、女性労働者の労働条件の改善。炭鉱のこの企業の取り組みは、彼女の勇気ある闘いの最初の一歩から「集団訴訟」へ、その後の大きな運動へと発展していくことになりました。

 不運な人生を背負った女性が、挫けそうになりがちな気持ちを自ら励まし、諦めないで戦おうとする姿が美しい。リーダーシップをとる勇ましい女性の物語というのではなく、父親や子供との絆、鉱山で働く友人たちとの関係のなかで前進していく彼女に拍手。

             


リストとスメタナの名曲

2008-11-10 23:42:46 | 音楽/CDの紹介

List:Les Preludes・Mazeppa,Ungarische Rhapsodie No.2,Smetana:Vysehrd・Die Moldau

           スメタナ:『モルダウ』、リスト:『前奏曲』、ハンガリー狂詩曲第2番、他 カラヤン&ベルリン・フィル

 昨日の立教大学交響楽団の演奏会を前に、関連するCDをだいぶ聴きました。また、演奏会を終了してからも聴いています。そのひとつがこのCDです。

 指揮はカラヤン、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団です。

 スメタナの「モルダウ」はよく知っています。チェコを代表する曲です。この河はボヘミアの森から流れ出て、北に向かい、プラハを貫通し、エルベ川に合流します。絵画的でよどみなく清澄な曲です。

 交響詩《前奏曲》はリストの作品。リストには全部で13曲の交響詩がありますがもっとも有名なものがこれです。曲全体は2つの関連した主題による自由な変装の形式をとって、愛の美しさを表現する第一部、愛の世界を中断して破壊する嵐をうたう第二部、自然のなかでの静かな憩いをうたう第三部、平和な生活にたえられなくなった人々が鮮烈につく第四部からなっています。

 リスト自身が曲の内容を説明しています。「我々の一生はその厳粛な第一音が死によって奏でられる序曲にあらずして何であろうか? 愛はすべて生の輝かしい朝焼けである。しかし、嵐が来て、その青春の幻想を破らない運命がどこにあろうか?人はそのような平和に満足することができない。合図のラッパが鳴り響き、その戦いが何と呼ばれるものであろうとも、自分を戦士の列に加えていく。そして争いのなかで自分の力をためし、自分の力の完全なる所有に到達していく」と。

 このCDには他に、リストの交響詩《マゼンッパ》、ハンガリー狂詩曲第2番、スメタナの交響詩《高い城》[連作交響詩《わが祖国》から]が入っています。


立教大学交響楽団第99回定期演奏会

2008-11-09 23:32:37 | 音楽/CDの紹介

立教大学交響楽団第99回定期演奏会
         
 クラリネットを吹いている団員のM君を知っているので演奏会に行きました。場所は「すみだトリフォニーホール」です。

 演奏曲目は次のとおりでした。

 ① ベルリオーズ 序曲「海賊」
      (Hector Berlioz, Overtune"Le Corsaire",op.21

 ② リスト 交響詩「前奏曲」
      (Franz List, Poem symphonique"Le Preleudes)
 ③ サン=サーンス 交響曲第3番「オルガン付」
     (Saint-Saens 3e Symphonie en ut mineur,op.78     "avec orgue"

 「ベルリオーズ序曲「海賊」}は、初めて聴く曲です。8分ほどの短い曲です。リズム感があり躍動的です。しだいに盛り上がり、終りに近づくと大音響が鳴り響きます。バイロンの『海賊』に着想を得て書かれたのでこの名があります。
 
  リスト「交響詩(前奏曲)」では、交響詩の作曲家としての面目を示しています。リストと言えばピアニスト、ピアノ曲の作曲家という印象がありますが、その印象を覆してくれました。
   言うまでもなく、「交響詩」はリストが創始した管弦楽曲で、表題として掲げた文学や歴史などの事象を音楽で表現しようとするものです。フランスの詩人ラマルティーヌの「詩的瞑想録」にもとづいています。
 フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴットが牧歌的な旋律をかなで、最後のクライマックスで一気にもりあがり、壮大な終幕となります。シンバルが効果的に入ります。

 サン=サーンス「交響曲第3番(オルガン付)」も華やかです。オルガン、ピアノも入っています。楽器の音のバランスが良い曲です。オーケストレーションの魅力をいかんなく発揮してみせてくれます。第一楽章の2部は瞑想的です。第2楽章の第2部は荘厳なオルガンの和音で始まり、音の波紋が静かにひろがり、これもフィナーレに向かってオーケスラが全体で唸ります。

 指揮者は田村俊文さん。学生さんたちの能力を最大限に引き出したよい指揮でした。コンサートミストレスの女子学生は相当な実力者と思いました。M君もがんばっていました。学生のオーケストラとは思えない立派な交響楽団です。


安達智彦『株価の読み方』(新書)筑摩書房、1997年

2008-11-07 15:17:51 | 経済/経営
安達智彦『株価の読み方』(新書)筑摩書房、1997年

            株価の読み方

 10年ほど前の本なので今日の金融情勢を理解するには古いかなと思いきや、出版が日本型金融ビッグバンが始まったころなので現在の金融システムの大きな枠組みを理解するには役立ちました。ただ、難解な箇所もあります。

「第1章:株式と株式市場」、「第2章:株価の決まり方と株価予測」、「第3章:株価指数とデリバティズム」、「第4章:株式市場と日本経済を読む」。基礎的なタームの説明が行き届いていますが、それはともかく株式市場の存在理由が市場メカニズムによって資金の効率的な配分であること(「資本市場における資金の量には限度があるので、これをより高い収益をもたらすと期待される投資案件に、相対的により小さなコストで優先的・差別的に配分すること」[p.62])と明確に述べられているのが気に入りました。

 また、株式市場全体の将来水準を正規分布表で予測する試みに対して、1982年6月から94年3月までの収益率のデータの分布をみて、予測は失敗となることを検証し、このことをもって「株価形成は物理現象のようには扱えないという好例」(p.128)と述べているところにもガッテンです。

 最終章の「第4章:株式市場と日本経済を読む」はわかりやすく、面白いです。袖の惹句に「株式と株価についての基本的知識を身につけながら、21世紀に向けての投資のあり方までを解説し、かつフェアバリューを見失い混迷する株式相場を読み解く力がつくように編集された株式投資入門の書」とありますが、内容はどうしてどうしてかなり専門的です。

 著者の結論は、限られた資本が自由化(98年の「外為法」改訂など)によってグローバル化し日本で蓄積された資本が海外投資に向かうというのは必然である、ビッグバンのもとでは投資家の自己責任とともに企業サイドの情報開示も当然の流れである、ということのようです。

           
                  
    

山内昌之『「反」読書法』講談社現代新書、1997年

2008-11-06 23:09:03 | 読書/大学/教育
山内昌之『「反」読書法』講談社現代新書、1997年

             

 体系的で、「かくあるべし」といった読書の方法論を排し、読みたい本を好きなときに、買いだめをしたり、偏愛する著者を決め込んだりしながら、「読書はすべからく楽しむべし」(p.223)といった調子で書かれた本です。

 とはいえ著者の読書は質量とも半端ではないので、いい(「あるいはよさそうな)本がたくさん紹介されています。良書の紹介は相当な数に及ぶので列挙する余裕はありません。

 紹介された本のなかでわたしがすぐにも読みたいと思ったのは大仏次郎『天皇の世紀』『パリ燃ゆ』、高橋幹雄『江戸あきない図譜』『江戸いろざと図譜』、加賀乙彦『炎都』、ミシェル・ビュトール『ディアベリ変奏曲との対話』、吉村昭『落日の宴』、五木寛之『蓮如』、『スキャンダルの科学史』、花沢徳衛『脇役誕生』あたりです。

  宇野経済学、大塚史学に言及した箇所があり、歴史家である著者の眼からみるとどちらもも物足りない代物であり、歴史研究にほとんど役に立たないと書いてありました(p.177)。この点は痛快で、溜飲をさげました。

 著者の読書の守備範囲はまことに広く、専門およびそこに近い歴史書、文学、哲学から歌舞伎、相撲にまで及んでいます。

 『週刊文春』に連載された「読書日記」が本書には挿入されていて、この部分はは充実しています(これは著者が仕事でかかわったもので、読書日記は個人的にはつけないことにしているそうです)。

素晴らしい浮世絵が一同に。ボストン美術館「浮世絵」名品展

2008-11-05 23:23:53 | 美術(絵画)/写真
「ボストン美術館『浮世絵』名品展」(江戸東京博物館:両国)

特別展「ボストン美術館 浮世絵名品展」

 藝術の秋。上記の展示会が江戸東京博物館(両国)で開催中です。
 アメリカのボストン美術館には、約5万点の浮世絵版画が所蔵されているとか。その質も量も最大規模とか。余りにも多く、いまだ整理中のものもあるそうです。近年まで公開はごく稀でした。

 鈴木春信(水仙花など)、喜多川歌麿(蚊帳など)、東洲斎写楽(二代目瀬川富三郎の大岸蔵人妻やどり木など)、葛飾北斎(富嶽三十六景など)、歌川広重(東海道五十三次など)などの有名な画家の浮世絵はもちろん、歌川国政、奥村政信、一筆斎文調、磯田湖龍斎、歌川国芳など、あまりこの分野に詳しくないわたしが聞いたことがない画家のそれ、二代目鳥居清倍の漆絵など約130点が展示されています。その他、下絵、版本なども多数ありました。

 歌舞伎の一場面あるいは役者を描いたもの(初代尾上菊五郎の虚無姿の曽我五郎、初代瀬川菊之丞の傾城)、江戸名所、美人画、そしてあいかわらず源氏物語のワンカット(帚木、女三の宮など)多彩です。紅摺絵、錦絵など、線と色彩の美しさは例えようもありません。特に黒の色が効果的です。和歌が書き込まれている絵もありました。保存状態がきわめてよいものが多いです。

 全体は4章にわかれています。「第1章:浮世絵初期の大家たち」「第2章:春信様式の時代」「第3章:錦絵の黄金時代」「第4章:幕末のビッグネームたち」

 日本の貴重な絵画がボストンにあるなんて、と思ってしまいます。ボストンは貿易港としてアジア諸国との関係が深かったので、ボストン美術館では早くから中国、日本、インドなどアジア地域の美術に着目し、その収集に力を入れていたそうです。中でも日本美術のコレクションは、日本国外にあるものとしては質・量ともにもっとも優れたものとして知られています。モリス、フェノロサなどがとくに力を入れていました。

 ウイークデーなのにかなり混んでいました。鑑賞者がじっくり観ている人が多くなかなか進みません。全部を観終えるのに、11時頃から2時間半ぐらいかかりました(途中、若干休憩)。

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石井代蔵『大相撲親方列伝』文春文庫、1993年

2008-11-04 20:15:23 | スポーツ/登山/将棋
石井代蔵『大相撲親方列伝』文春文庫、1993年
         

 懐かしい四股名がずらりと並んでいます。大ノ海(花籠)、若乃花(二子山)、栃錦(春日野)、千代の山(九重)、北の富士(九重)、増位山(三保ケ関)、北の湖(一代年寄北の湖)、鶴ヶ嶺(井筒)、琴桜(佐渡ケ嶽)。

 登場する親方は、春日野以外、小部屋からスタートして、無名の若者を発掘し、育て、隆盛にまでもっていったひとたちです。

 本書は「親方列伝」ですが、現役時代の活躍もだいぶ書き込まれています。わたしは世代的には、栃錦VS若乃花からです。千代の山の相撲はラジオで聞いていたことがあったような。壮絶な若乃花VS千代の山は、ラジオの実況中継で聞いた記憶がかすかにあります。

 印象に残ったのは現役時代もろ差しの名人としてならした鶴ヶ嶺が3人の兄弟を、奥さんの急逝という悲運のなかで育てたこと(美男で関脇まで昇進した「寺尾」はこのお母さんの死で角界入りを決意。母の旧姓の「寺尾」を四股名にしました)。

 三保ケ関部屋がもともと大阪相撲に拠点があったとは知りませんでした。千代の山が年寄出羽の海を襲名できず、一門から追われて九重を襲名し、北の富士が九重に従ったこと、琴桜が佐渡ケ嶽襲名がむずかしかったところ、佐渡ケ嶽の急逝でその襲名を実現できたことなど、土俵の外での相撲界の確執が書かれていて興味深かったです。

「特別展・釈迦追慕-称名寺釈迦如来像造立700年記念展示会-」

2008-11-03 12:53:46 | イベント(祭り・展示会・催事)
「特別展・釈迦追慕(称名寺釈迦如来像造立700年記念)」 [10/3(金)~12/7(日)]

 昨日のプログ記事で、「金沢文庫」に出向いたのは表記の展示会があったからです。
 この展示会は、京都・清凉寺の釈迦如来像に拠る清凉寺式として名高い称名寺釈迦如来像が徳治三年(1308)に造立されて700年になるのを記念するものとして催されています。
 また、昨春、約50年ぶりの仏師運慶の真作発見として話題になった称名寺光明院所蔵の大威徳明王像が今年7月に国指定重要文化財となったこともあわせて記念しています。その大威徳明王像が特別公開されているのです。

 全体は三部構成で、第一部では、南都(奈良)やその影響を受けた鎌倉の舎利・釈迦信仰が「清凉寺式釈迦如来像への信仰」を中心に検討されています。

 第二部では、実時、顕時、貞顕の金沢北条氏三代に縁のある称名寺釈迦如来立像の造像背景がわかるような展示になっています。

 第三部では、釈迦・舎利信仰が未来仏である弥勒菩薩への信仰へと展開することの意味が新発見の弥勒菩薩坐像(光明院所蔵)を中心に紹介されています。

【主要展示品】
 重要文化財 釈迦如来立像(京都・峰定寺)
 重要文化財 釈迦如来立像像内納入品(京都・峰定寺)
       釈迦如来立像(清凉寺式)(岐阜・即心院)
 重要文化財 釈迦如来座像(鎌倉・極楽寺)
 重要文化財 大神宮御正体(奈良・室生寺)
       宝篋印塔型舎利厨子(奈良・室生寺)
       籾塔(宝篋印塔)(奈良・室生寺)
       持蓮華形舎利容器(奈良・室生寺)
 重要文化財 釈迦如来立像(清凉寺式)(称名寺(神奈川県立金沢文庫保管)
       仏涅槃図(称名寺(神奈川県立金沢文庫保管)
 重要文化財 十六羅漢図(称名寺(神奈川県立金沢文庫保管)
       弥勒菩薩坐像(光明院・神奈川県立金沢文庫保管)
       弥勒菩薩坐像納入品(光明院・神奈川県立金沢文庫保管)
 重要文化財 金銅装宝篋印塔(称名寺(神奈川県立金沢文庫保管)
                                    


金沢文庫とは??

2008-11-02 18:24:54 | 旅行/温泉
金沢文庫(神奈川県横浜市金沢区金沢町142)

          
現在の神奈川県立金沢文庫新館
              (現在の金沢文庫)


 横浜のほうに行くと、「金沢文庫」(京急線沿線)という変わった名前の駅があり、その名の由来はしらず、気になっていました。先日、ここに行ってきました。

 
「金沢文庫」は称名寺の左手のトンネルをくぐるとあります。称名寺の参道を進むと、文政元年(1818)にできた仁王門があります。この仁王門をくぐると苑池が眼前にひらけ、朱塗りの反橋(現在、修復中)の向こうに天和元年(1681)造営の金堂が建っています。
 
 現在、寺域は狭く、全盛期の姿にはとおく及びませんが、背後の丘陵も含めて境内全域が国指定史蹟として保存され美しい自然がそこにあります。中世の景観を想像することができます。

 簡単に言えば、「金沢文庫」は北条実時(1224-1276)が創設した日本最古の図書館です。

         

                 (称名寺)


 金沢北条氏は、鎌倉幕府執権を継承する北条氏の末裔です。武蔵野国の六浦庄金沢に拠点がありました。三代にわたる実時(1224-1276)、顕時(1248-1301)、貞顕(1278-1333)らは学問好きで、膨大な数の書籍を集め、遺しました。

 これらの書籍を保存したのは、称名寺です。金沢山称名寺は北条実時によって創建されました。建設時期は定かではありません。1258年(正嘉2年)実時が六浦荘金沢の居館内に建てた持仏堂(阿弥陀堂)がその起源ではないかといわれています。その後、1267年(文永4年)下野薬師寺の僧・審海が開山に招かれて真言律宗の寺となりました。

 北条実時は鎌倉を中心に金沢家に必要な典籍や記録文書を集め、これらの収集した和漢の書を保管する書庫を金沢郷に創設しました。

 文庫は実時の蔵書をもとに拡充されました。金沢貞顕が六波羅探題に任じられ京都へ赴任すると、公家社会と接する必要がでてきて収集する文献の分野も広がりました。

 金沢氏を含め北条氏の滅亡後は、称名寺が管理を引き継ぎました(当時の建築物は現存しません)。

  「金沢文庫」は、 1897年に伊藤博文らによって称名寺大宝院跡に再建されました。関東大震災で失われたものの、1930年に神奈川県の運営する文化施設として復興されました。

 1990年に改装され、現在は鎌倉時代を中心とした所蔵品を展示公開する歴史博物館と、国宝や重要文化財を含む金沢文庫の蔵書を分析・研究する施設とが設置されています。 

  称名寺の前には大きな池があり、水鳥が「隊列」をなして湖面を泳いでいました。往時、ここで僧・審海らが民衆に戒律を説き、食事を施したことが偲ばれました。

『帝室技巧員と1900年パリ万国博覧会』宮内庁三の丸尚蔵館

2008-11-01 18:01:48 | イベント(祭り・展示会・催事)
『帝室技芸員と1900年パリ万国博覧会』宮内庁三の丸尚蔵館

         三の丸尚蔵館

 1900年(明治33年)に開催されたパリ万国博覧会は、19世紀最後の博覧会でした。同時に新しい20世紀を展望する博覧会であり、その内容は大変にブリリアントだったようです。

 日本もこれに美術工藝品を中心に積極的に参加しました。帝室および宮内庁が出品に関わり、御下令により、帝室技芸人など23人の作家に製作が依頼されました。各作家は全力でこの出品にとりくんだそうです。国家の威信をかけたのでしょう。

 その時の出品作品が現在、宮内庁三の丸尚蔵館(皇居)で一般公開されています。展示は四期に分けられ、第一期は7月19日から8月14日まで、第二期は8月30日から9月28日まで、そして現在第三期です(10月4日から11月9日まで)。なお、第四期は11月15日から12月14日までです。

 今回の展示会には、博覧会出品作品以外にも、同時代の帝室技芸人による作品が併せて出品されています。

 展示室は大きくはなく、20-30分もあれば全部観ることができます。高村光雲の「山霊詞護」、海野勝の「太平楽置物」、並河靖之の「四季花鳥図花瓶」、伊藤平左衛門「日本貴神殿舎計画図」などが展示されています。100年前の作品とは思えない感じで鑑賞しました。

            

 無料です。尚蔵館は、地下鉄東西線で大手町で降りて、皇居の大手門から入るとすぐです。