【岩崎俊夫BLOG】社会統計学論文ARCHIVES

社会統計学分野の旧い論文の要約が日課です。

時々、読書、旅、散策、映画・音楽等の鑑賞、料理とお酒で一息つきます。

佐々部清監督『夕凪の街・桜の国』2007年

2008-11-13 16:12:10 | 映画

佐々部清監督『夕凪の街・桜の国』118分、2007年

              夕凪の街 桜の国

 「夕凪の街」「桜の国」の2部構成。話は連関しています。前者は昭和33年、後者は平成19年。広島で被爆した平野という家族の物語です。原作はこうの史代さんの同名のテーマのコミック漫画です。

<夕凪の」街>
 昭和33年。小さな会社で働く皆実(みなみ)[麻生久美子]。会社の同僚、打越さんとの間に小さな愛情が芽生えます。彼女は打越さんが好きでしたし、彼も皆実を好ましく思っていましたが、この時代の若い男女にありがちな恥じらいがあり、想いがストレートに通じあいません。ふたりの間にはある種のもどかしさがあります。

 皆実は終戦間近の8月6日、広島で被爆。父も妹の翠も被爆で亡くなりました。皆実自身、腕に焼け跡があり、またおぞましい被爆の街と苦しむ人々の光景が頭から離れず、これらのことも原因で恋愛に踏み出せません。自分は結婚できないと思っています。

 母(藤村志保)とふたりで広島に暮らす皆実には弟、旭(伊藤克則)がいました。弟は戦中、疎開していましたが、その疎開先の水戸の石川という親戚の家の養子になります。皆実と旭とは、姓は異なっても姉と弟の関係を大切にして、いつも会いたいと思っている間柄です。

 皆実は風邪で会社を休みました。しかし、何かおかしい、すぐに治らないのです。13歳で被爆した彼女は放射能を浴びたことによる原爆症におかされていました。26歳になっての発病でした。そして、打越さんと弟、旭との愛を感じながらの安らかな、静かな死。

<桜の国>
 50年後。旭(堺正章)は定年を迎えていました。東京で暮らしています(恋ヶ窪のあたり??)。姉の皆実の死後、広島の大学に合格し、水戸から出てきて広島の実母の家に住み、就職し、学生の頃からの知り合いだった京花と結婚しました。ふたりの男女の子[七波(田中麗奈)と凪夫(金井勇太)]がいます。妻、京花は40歳代の若さでやはり原爆病で亡くなっていました。
 
 初老の旭の様子の行動がどこかおかしいのです。東京の家から、どこか遠いところにでかけるような素振りです。七浪は弟の彼女である利根東子(中越典子)と夜行バスで広島に向かう父の跡をつけます。父にはある目的があったのです・・・・。

 原爆の傷跡が世代を超えて日常生活に影をおとしていることが、熱く伝わってきます。また前半の<夕凪の街>の各場面に昭和30年代の生活が懐かしく香ってきます。ちゃぶ台、おひつ、ハエたたき等々。

 皆実を演じた麻生久美子さん、清楚でいい感じです。藤村志保さん、堺正章さん、いずれも好演です。

             Kumiko Aso photo a