【岩崎俊夫BLOG】社会統計学論文ARCHIVES

社会統計学分野の旧い論文の要約が日課です。

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安達智彦『株価の読み方』(新書)筑摩書房、1997年

2008-11-07 15:17:51 | 経済/経営
安達智彦『株価の読み方』(新書)筑摩書房、1997年

            株価の読み方

 10年ほど前の本なので今日の金融情勢を理解するには古いかなと思いきや、出版が日本型金融ビッグバンが始まったころなので現在の金融システムの大きな枠組みを理解するには役立ちました。ただ、難解な箇所もあります。

「第1章:株式と株式市場」、「第2章:株価の決まり方と株価予測」、「第3章:株価指数とデリバティズム」、「第4章:株式市場と日本経済を読む」。基礎的なタームの説明が行き届いていますが、それはともかく株式市場の存在理由が市場メカニズムによって資金の効率的な配分であること(「資本市場における資金の量には限度があるので、これをより高い収益をもたらすと期待される投資案件に、相対的により小さなコストで優先的・差別的に配分すること」[p.62])と明確に述べられているのが気に入りました。

 また、株式市場全体の将来水準を正規分布表で予測する試みに対して、1982年6月から94年3月までの収益率のデータの分布をみて、予測は失敗となることを検証し、このことをもって「株価形成は物理現象のようには扱えないという好例」(p.128)と述べているところにもガッテンです。

 最終章の「第4章:株式市場と日本経済を読む」はわかりやすく、面白いです。袖の惹句に「株式と株価についての基本的知識を身につけながら、21世紀に向けての投資のあり方までを解説し、かつフェアバリューを見失い混迷する株式相場を読み解く力がつくように編集された株式投資入門の書」とありますが、内容はどうしてどうしてかなり専門的です。

 著者の結論は、限られた資本が自由化(98年の「外為法」改訂など)によってグローバル化し日本で蓄積された資本が海外投資に向かうというのは必然である、ビッグバンのもとでは投資家の自己責任とともに企業サイドの情報開示も当然の流れである、ということのようです。