山本百合子さんの「ベートーヴェン後期のソナタとリストの小品たち」(サロン形式、聴衆22人)
山本さんは、最初にベートーヴェンとリストの時代背景を説明してくれました。
ピアノは18世紀に登場しました。1709年イタリア・フィレンツェでクリストフォリが最初のピアノを製作したといわれています(ヴァイオリン、チェロは16-17世紀にほぼ楽器として完成しましたが、ピアノは遅れました)。以来、イギリスの産業革命、フランスの市民革命を背景に、ピアノは発展していきました。
楽器としてのピアノの可能性を引き出したのがベートーベン、リストです。
ベートーヴェンの初期の作品には当時のピアノの音域としては存在しない部分も書かれています。彼はピアノメーカーがその音を出せるピアノを製作できることを予知していたのです。
1803年、エラール社が納品したピアノは細かなトリルが可能となり、ベートーヴェンは「ワルトシュタイン」を作曲、さらに1817年ー18年に最低音の音域が、F音から4度下のC音まで可能となり、当時の最低音と最高音を響かせる「ハンマークラヴィア」を作曲しました。
40年ほどの時代の差はありますが、リストもピアノという楽器に関心をもち、自宅には6台のピアノがあったといわれています。
そして、いよいよ演奏・・・。曲目は、以下のとおりでした。
◆ ベートーヴェン
① ピアノ・ソナタ 第30番 Op.109
Ⅰ Vivace, ma non troppo
-Prestissimo
Ⅱ Andante molto cantabile ed espressivo
② ピアノ・ソナタ 第31番 Op.110
Ⅰ Moderato cantabile, molto espressivo
Ⅱ Allegro molto
Ⅲ Adagio ma non troppo-Allegro ma non troppo
◆ リスト
③ 「二つの伝説」
④ 「愛の夢」~三つの夜想曲より~
⑤ 「ため息」~三つの演奏会用練習曲より~
⑥ 「ラ・カンパネラ」 ~パガニーニ大練習曲より~
ベートーヴェンのこれらの2曲のソナタは、いずれも簡潔な第一楽章、短くて自由奔放な第二楽章、そしてこの2つの楽章より長い終楽章からなります。
また、これらの2曲の特徴は、音楽用語が斬新な使われカをしていることです。
作品109では、teneramente(愛しむように)、 piacevole(平和に満ちて)など。作品110では、冒頭に con amabilita(愛らしく)、 sanft(やわらかく)と書き込まれています。第三楽章には、「嘆きの歌」Klagender Gesang- Arioso dolenteとあり、さらに二番目のアダージョではPeldedo le forze, dolente(嘆き悲しみで消え入るように)-Ermattet, klagend (人生に疲れ果てて)と表示されています。
以上、山本さんの「授業」のメモです。
リストの曲はみなおなじみのものですが、山本さんは口ずさむように、リズムを体でとりながら、弾いていました。手の動きを追ってみていましたが、「ラ・カンパネラ」は難曲ですね。
深い感動を与えて、演奏は終了しました。午後8時15分。喝采!