【岩崎俊夫BLOG】社会統計学論文ARCHIVES

社会統計学分野の旧い論文の要約が日課です。

時々、読書、旅、散策、映画・音楽等の鑑賞、料理とお酒で一息つきます。

「科学朝日」編『スキャンダルの科学史』朝日新聞社

2008-11-26 21:31:05 | 自然科学/数学

「科学朝日」編『スキャンダルの科学史』朝日新聞社、1989年
     
         
            
 科学(似非科学を含む)と科学者にまつわる26の事件の経緯と顛末です。

 誤解だった黄熱病病原菌の発見(野口英世)
 幻の錬金術発見(丸沢常哉)
 超能力「千里眼」の嘘(山川健次郎)
 少壮気鋭の総合自然史学者の心中(北川三郎)
 幻想だった脚気菌発見(緒方正規)
 血液型の似非科学(古川竹二)
 「味の素」で特許取りの契機(池田菊苗)
 サイクロトロン破壊事件(ハリー・ケリー)
 丙午・大地震襲来騒動(今村明恒)
 伝染病研究所移管事件(北里柴三郎)
 雛の雌雄鑑別法と男女産み分け論争(増井清)
 東京天文台移転事件(一戸直蔵)
 心臓移植の是非(和田寿郎)
 毒ガスによる中毒(小泉親彦)
 弘前・財田・松山事件の血痕鑑定(古畑種基)
 若返り療法の怪(榊保三郎)
 電気灯による国会議事堂焼失(藤岡市助)
 脚気は伝染病説に固執(森鴎外)
 実験科学者である文部大臣の自決(橋田邦彦)
 占領下日本研究基地化事件(イシドル・ラビ)
 理論物理学教授恋愛失脚事件(石原純)
 水銀還金事件(長岡半太郎)
 ルイセンコ学説事件(徳田御稔)
 ペスト感染事件(青山胤通)
 長崎大学の医学博士号売買事件(勝矢信司)
 定年制と辞職表明事件(田中館愛橘)

  心臓移植の和田教授の話は、わたしが子どものころの札幌で聞いたこともある話で、大騒ぎだったのを覚えています。

 野口英世、長岡半太郎、池田菊苗、北里柴三郎、森鴎外などは、これは子供のころ偉人伝で知ったのですが、この本ではむしろ偏屈者のように描かれています。どちらも実像とみるべきなのでしょう。人間は「矛盾の統一物」ですから。

 本書でとりあげられているスキャンダルは血液型と人間の性格との強い相関関係、錬金術、若返り療法などの怪しげなものもあれば、科学者の先入観、矜持、偏見が作用した事件もあります。人間臭いと言えば言ますね。

 しかし、ことが科学の世界の出来事だけに落差が大きすぎる感じです。

 『科学朝日』に連載された読み切りもののせいか、面白いのですが、物足りないところも多々ありました。