きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

ビジネスと人権 国連「訪日報告書」を読む(上) 人権機関の不在に懸念

2024-06-23 07:13:47 | 政治・社会問題について
ビジネスと人権 国連「訪日報告書」を読む(上) 人権機関の不在に懸念

昨年夏、日本において企業活動が人権に与えている影響を12日間にわたって訪日調査した国連「ビジネスと人権」作業部会の報告書が、6月18日から始まった国連人権理事会(~7月12日)に提出されました。報告書の内容について労働者教育協会の筒井晴彦理事に寄稿してもらいました。

労働者教育協会 筒井晴彦理事

報告書の分析は多岐にわたります。報告書はまず、差別などのリスクに直面している人びととして、女性、LGBTQI+の人びと、障がい者、マイノリティーグループと先住民(アイヌ民族)、子ども、高齢者を挙げ、それぞれの人権状況を分析しています。
さらに、①健康・気候変動・自然環境(福島第1原発事故、PFAS=有機フッ素化合物)②労働権(労働組合、長時間労働、移住労働者と技能訓練制度)③メディアとエンターテインメント産業④バリューチェーン(原材料調達から販売までの事業活動)と金融の規制―という4テーマについても詳しく分析しています。
本連載ではこれらのうち、職場における人権問題を軸に報告書の内容を整理し、紹介します。

「LGBTQI+」:レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、クエスチョニング、インターセックスほか多様な性のあり方を表す言葉。



訪日調査の結果について日本記者クラブで会見する国連「ビジネスと人権」作業部会の専門家=2023年8月4日

国家の義務
報告書は、人権を保護する国の義務に関わり「日本国内において『国連ビジネスと人権に関する指導原則』への認識不足が全般的に、とりわけ東京以外の地方で見られることを注視する。指導原則が定める権利と義務、責任を関係者が全面的に理解するには、相当の努力が求められる」と指摘しています。
指導原則は、①人権を保護する国の義務②人権を尊重する企業の責任③被害者救済へのアクセス拡大―という3本柱(一般原則)で構成され、さらに柱ごとに「やるべき」原則を定めています。合計31のやるべき原則のうち14原則が企業の責任に関わるものです。
作業部会は、日本の関係者が指導原則を全面的に理解するために、日本政府に相当の努力を払うよう求めているのです。

企業の責任
報告書は企業の責任に関わって「企業の99・7%を占める中小企業において指導原則への理解が低い。指導原則を理解・実行する点で、企業間に大きな格差が存在する」と指摘します。また「もっと積極的に指導原則の義務を遂行する必要が国にはある。もっと実践的な指導を経済産業省と厚生労働省、外務省、法務省に求める」とのビジネス界の主張を紹介しています。
報告書は、司法の利用と効果的な救済に関し、「指導原則と広範な人権についての裁判官の低い認識が重大な問題の一つとなっている。作業部会は、日本において(政府から独立した)国内人権機関が存在しないことを強く懸念している。経済協力開発機構(OECD)38カ国のなかで、国内人権機関が存在しないのは日本を含め8カ国のみである。法務省の人権局は、国内人権機関の機能を果たしていない」と厳しく指摘しています。
国内人権機関はすでに世界120カ国に存在しています。国連はこれまでも、世界であたり前になっている国内人権機関の確立を繰り返し日本政府に勧告しています。
(つづく)(3回連載です)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年6月20日付掲載


作業部会は、日本の関係者が指導原則を全面的に理解するために、日本政府に相当の努力を払うよう求めている。
作業部会は、日本において(政府から独立した)国内人権機関が存在しないことを強く懸念している。経済協力開発機構(OECD)38カ国のなかで、国内人権機関が存在しないのは日本を含め8カ国のみ。
国連はこれまでも、世界であたり前になっている国内人権機関の確立を繰り返し日本政府に勧告。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« トヨタの不正(下) 新車短... | トップ | ビジネスと人権 国連「訪日... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

政治・社会問題について」カテゴリの最新記事