「骨太の方針」を読む③ デジタル行財政改革 自動運転事業化狙う
今年の「骨太の方針」は、岸田文雄首相が昨年9月の内閣改造で看板に掲げた「デジタル行財政改革」を具体化しました。
河野太郎デジタル相は、デジタル行財政改革担当や規制改革担当を兼任。「わが国の規制が時代遅れになっていて、現実的な社会の要請に対応できていない」として、デジタル化の“障壁”を取り払う「規制改革」に執念を見せています。
岸田首相を議長とする「デジタル行財政改革会議」が設置され、「規制改革推進会議」「デジタル田園都市国家構想実現会議」などの政府の合議体やデジタル庁を統括。今年6月に最終報告をまとめ、それが同方針に具体化されています。
実質的な解禁
同方針は「ライドシェアを全国で広く利用可能とする」としています。ライドシェアはタクシーの営業資格を持たない一般ドライバーが自家用車を使い、配車アプリを通じて営利目的で送迎するもの。米国の一部地域で全面解禁されていますが、性犯罪の多発などの安全性や、ギグワーカーなど不安定な雇用の増加など多くの懸念を抱えています。
さらに「タクシー事業者以外の者が行うライドシェア」について、「法制度を含めて事業のあり方の議論を進める」としています。「タクシー事業者以外の者」とは、海外のライドシェア大手のウーバーやリフトなど、運転手と利用者をマッチングするアプリを提供するIT企業のことです。これらの新規参入を許せば、実質的なライドシェア全面解禁にほかなりません。
デジタル行財政改革の「課題発掘対話」に出席した岸田首相(左)と河野デジタル相=2023年10月、東京都千代田区
国の押し売り
同方針は「自動運転の社会実装」にも踏み込みました。河野氏はこれまで「(ライドシェア解禁論議の)本丸は自動運転だ」と述べています。「交通・物流DX」として一般道での自動運転を2024年度に約100カ所、25年度に全都道府県での通年運行の計画・実施、27年度に本格的な事業化を目指しています。
しかし、21年には東京パラリンピック選手村(東京都中央区)で、柔道代表選手が自動運転中の巡回バスと接触して負傷する事故が起きました。自動運転には技術的課題が山積しており、人口減少や人手不足を口実に安易な「社会実装」を行うべきではありません。
同方針はさらに、国と地方が共通デジタルサービスを利用できるよう、今夏から国・地方自治体間の連絡協議体制を整備し、各府省庁が「業務見直しとシステム構築を行う」としています。
河野氏は「自治体でバラバラだった様式を全国で統一し、システムを共通化する。政策判断をそれぞれの自治体できっちりやっていただく」などと、地方分権を「デジタル化」で制限する考えを示しています。
本来、住民の声に応えて創意工夫をこらした政策を具体化していく地方自治体に、国が一元的に期限や枠組みを決めたデジタル技術やシステム基盤を押し売りし、デジタル庁がカタログ化した住民サービスに共通化していくもので、地方自治の理念に反します。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年7月10日付掲載
骨太の方針は「ライドシェアを全国で広く利用可能とする」と。ライドシェアはタクシーの営業資格を持たない一般ドライバーが自家用車を使い、配車アプリを通じて営利目的で送迎するもの。米国の一部地域で全面解禁されていますが、性犯罪の多発などの安全性や、ギグワーカーなど不安定な雇用の増加など多くの懸念を抱えています。
同方針は「自動運転の社会実装」にも踏み込みました。河野氏はこれまで「(ライドシェア解禁論議の)本丸は自動運転だ」と。
自動運転には技術的課題が山積しており、人口減少や人手不足を口実に安易な「社会実装」を行うべきではありません。
今年の「骨太の方針」は、岸田文雄首相が昨年9月の内閣改造で看板に掲げた「デジタル行財政改革」を具体化しました。
河野太郎デジタル相は、デジタル行財政改革担当や規制改革担当を兼任。「わが国の規制が時代遅れになっていて、現実的な社会の要請に対応できていない」として、デジタル化の“障壁”を取り払う「規制改革」に執念を見せています。
岸田首相を議長とする「デジタル行財政改革会議」が設置され、「規制改革推進会議」「デジタル田園都市国家構想実現会議」などの政府の合議体やデジタル庁を統括。今年6月に最終報告をまとめ、それが同方針に具体化されています。
実質的な解禁
同方針は「ライドシェアを全国で広く利用可能とする」としています。ライドシェアはタクシーの営業資格を持たない一般ドライバーが自家用車を使い、配車アプリを通じて営利目的で送迎するもの。米国の一部地域で全面解禁されていますが、性犯罪の多発などの安全性や、ギグワーカーなど不安定な雇用の増加など多くの懸念を抱えています。
さらに「タクシー事業者以外の者が行うライドシェア」について、「法制度を含めて事業のあり方の議論を進める」としています。「タクシー事業者以外の者」とは、海外のライドシェア大手のウーバーやリフトなど、運転手と利用者をマッチングするアプリを提供するIT企業のことです。これらの新規参入を許せば、実質的なライドシェア全面解禁にほかなりません。
デジタル行財政改革の「課題発掘対話」に出席した岸田首相(左)と河野デジタル相=2023年10月、東京都千代田区
国の押し売り
同方針は「自動運転の社会実装」にも踏み込みました。河野氏はこれまで「(ライドシェア解禁論議の)本丸は自動運転だ」と述べています。「交通・物流DX」として一般道での自動運転を2024年度に約100カ所、25年度に全都道府県での通年運行の計画・実施、27年度に本格的な事業化を目指しています。
しかし、21年には東京パラリンピック選手村(東京都中央区)で、柔道代表選手が自動運転中の巡回バスと接触して負傷する事故が起きました。自動運転には技術的課題が山積しており、人口減少や人手不足を口実に安易な「社会実装」を行うべきではありません。
同方針はさらに、国と地方が共通デジタルサービスを利用できるよう、今夏から国・地方自治体間の連絡協議体制を整備し、各府省庁が「業務見直しとシステム構築を行う」としています。
河野氏は「自治体でバラバラだった様式を全国で統一し、システムを共通化する。政策判断をそれぞれの自治体できっちりやっていただく」などと、地方分権を「デジタル化」で制限する考えを示しています。
本来、住民の声に応えて創意工夫をこらした政策を具体化していく地方自治体に、国が一元的に期限や枠組みを決めたデジタル技術やシステム基盤を押し売りし、デジタル庁がカタログ化した住民サービスに共通化していくもので、地方自治の理念に反します。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年7月10日付掲載
骨太の方針は「ライドシェアを全国で広く利用可能とする」と。ライドシェアはタクシーの営業資格を持たない一般ドライバーが自家用車を使い、配車アプリを通じて営利目的で送迎するもの。米国の一部地域で全面解禁されていますが、性犯罪の多発などの安全性や、ギグワーカーなど不安定な雇用の増加など多くの懸念を抱えています。
同方針は「自動運転の社会実装」にも踏み込みました。河野氏はこれまで「(ライドシェア解禁論議の)本丸は自動運転だ」と。
自動運転には技術的課題が山積しており、人口減少や人手不足を口実に安易な「社会実装」を行うべきではありません。
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