自民党の人権思想 改憲草案に見る④ 古い家族観の復活
自民党は、いま切実な課題となっている同性婚の法制化や、選択的夫婦別姓制度の導入に、かたくなに反対してきました。
岸田文雄首相は同性婚に関し、「家族観や価値観、社会が変わってしまう課題だ」(2月1日の衆院予算委員会)と答弁しています。また、同月には荒井勝喜首相秘書官が、LGBTQなど性的少数者や同性婚について「見るのも嫌だ。隣に住んでいたら嫌だ」「同性婚なんか導入したら、国を捨てる人も出てくる」と暴言を吐き、国民的批判の爆発で罷免に追い込まれました。
安倍晋三首相(当時)は選択的夫婦別姓について、「わが国の家族の在り方に深くかかわることで、国民間にさまざまな意見がある」(2020年1月23日の衆院本会議)と、実現に背を向けていました。
18年には自民党の杉田水脈衆院議員が月刊誌への寄稿で、LGBTQなど性的少数者のカップルには「生産性がない」と主張し、国民から強い批判の声が上がりました。しかし、杉田氏が謝罪と発言撤回に応じたのは、22年12月のことでした。
こうした動きの背景には、何があるのでしょうか。
日本国憲法24条は、婚姻は「個人の尊厳」と「両性の本質的平等」に立脚するとし、戦前の「家」制度や家父長的価値観を否定しています。
同性婚を認めない民法等の規定を「違憲」とする判決に喜び合う支援者や弁護士ら。こうした判決にも自民党は背を向け続けています=5月30日、名古屋地裁
「家」制度復活
これに対し自民党改憲草案では、24条の冒頭に1項を新設。「家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家族は、互いに助け合わなければならない」と明記しました。個人ではなく「家族」こそが社会の基礎単位だと宣言したのです。「家」中心の古い価値観への執着です。
戦前の「家」制度のもとでは、結婚は家と家との関係とされ、家長の同意なしには認められませんでした。女性は基本的に無能力者とされ、妻には財産の管理権も椙続権も認められませんでした。家長によって統率される「家」を単位として、すべての国民を天皇中心の国家体制に動員する仕組みだったのです。
旧文部省が1937年に天皇中心思想を徹底するために発行した『国体の本義』は、国民の生活の基本に「家」を位置付け、「我が国は一大家族国家であつて、皇室は臣民の宗家にましまし、国家生活の中心であらせられる」と説きました。個人の上に家族、家族の上に天皇を置く考え方を国民に浸透させ、天皇制国家が突き進んだ侵略戦争に国民を動員していったのです。
こうした価値観を否定し、女性の無権利状態を根本的に是正することが日本国憲法24条の意義でした。
同条に、「個人」ではなく「家族」を「社会の基礎的な単位」としてあえて位置付け直すことは、まさに「家」制度的な価値観復活の危険をはらんでいます。
日本会議勢力をはじめ、自民党保守派が別姓や同性婚に執拗(しつよう)に反対することの背景には、こうした思想があります。
助け合い強制
一方で、自民党改憲草案は、24条に「家族は、互いに助け合わなければならない」と書き込みました。これは前文で「家族や社会全体が互いに助け合って国家を形成する」と定めたことと一体で、「自助・共助」を国民に押し付けるものです。自民党の『日本国憲法改正草案Q&A』は、前文の規定について「自助、共助の精神をうたいました」と告白しています。古い価値観に新自由主義的な価値観を接続するという異様な改憲案です。
「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年9月12日付掲載
日本国憲法24条は、婚姻は「個人の尊厳」と「両性の本質的平等」に立脚するとし、戦前の「家」制度や家父長的価値観を否定。
これに対し自民党改憲草案では、24条の冒頭に1項を新設。「家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家族は、互いに助け合わなければならない」と明記。個人ではなく「家族」こそが社会の基礎単位だと宣言。「家」中心の古い価値観への執着。
自民党は、いま切実な課題となっている同性婚の法制化や、選択的夫婦別姓制度の導入に、かたくなに反対してきました。
岸田文雄首相は同性婚に関し、「家族観や価値観、社会が変わってしまう課題だ」(2月1日の衆院予算委員会)と答弁しています。また、同月には荒井勝喜首相秘書官が、LGBTQなど性的少数者や同性婚について「見るのも嫌だ。隣に住んでいたら嫌だ」「同性婚なんか導入したら、国を捨てる人も出てくる」と暴言を吐き、国民的批判の爆発で罷免に追い込まれました。
安倍晋三首相(当時)は選択的夫婦別姓について、「わが国の家族の在り方に深くかかわることで、国民間にさまざまな意見がある」(2020年1月23日の衆院本会議)と、実現に背を向けていました。
18年には自民党の杉田水脈衆院議員が月刊誌への寄稿で、LGBTQなど性的少数者のカップルには「生産性がない」と主張し、国民から強い批判の声が上がりました。しかし、杉田氏が謝罪と発言撤回に応じたのは、22年12月のことでした。
こうした動きの背景には、何があるのでしょうか。
日本国憲法24条は、婚姻は「個人の尊厳」と「両性の本質的平等」に立脚するとし、戦前の「家」制度や家父長的価値観を否定しています。
同性婚を認めない民法等の規定を「違憲」とする判決に喜び合う支援者や弁護士ら。こうした判決にも自民党は背を向け続けています=5月30日、名古屋地裁
「家」制度復活
これに対し自民党改憲草案では、24条の冒頭に1項を新設。「家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家族は、互いに助け合わなければならない」と明記しました。個人ではなく「家族」こそが社会の基礎単位だと宣言したのです。「家」中心の古い価値観への執着です。
戦前の「家」制度のもとでは、結婚は家と家との関係とされ、家長の同意なしには認められませんでした。女性は基本的に無能力者とされ、妻には財産の管理権も椙続権も認められませんでした。家長によって統率される「家」を単位として、すべての国民を天皇中心の国家体制に動員する仕組みだったのです。
旧文部省が1937年に天皇中心思想を徹底するために発行した『国体の本義』は、国民の生活の基本に「家」を位置付け、「我が国は一大家族国家であつて、皇室は臣民の宗家にましまし、国家生活の中心であらせられる」と説きました。個人の上に家族、家族の上に天皇を置く考え方を国民に浸透させ、天皇制国家が突き進んだ侵略戦争に国民を動員していったのです。
こうした価値観を否定し、女性の無権利状態を根本的に是正することが日本国憲法24条の意義でした。
同条に、「個人」ではなく「家族」を「社会の基礎的な単位」としてあえて位置付け直すことは、まさに「家」制度的な価値観復活の危険をはらんでいます。
日本会議勢力をはじめ、自民党保守派が別姓や同性婚に執拗(しつよう)に反対することの背景には、こうした思想があります。
助け合い強制
一方で、自民党改憲草案は、24条に「家族は、互いに助け合わなければならない」と書き込みました。これは前文で「家族や社会全体が互いに助け合って国家を形成する」と定めたことと一体で、「自助・共助」を国民に押し付けるものです。自民党の『日本国憲法改正草案Q&A』は、前文の規定について「自助、共助の精神をうたいました」と告白しています。古い価値観に新自由主義的な価値観を接続するという異様な改憲案です。
「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年9月12日付掲載
日本国憲法24条は、婚姻は「個人の尊厳」と「両性の本質的平等」に立脚するとし、戦前の「家」制度や家父長的価値観を否定。
これに対し自民党改憲草案では、24条の冒頭に1項を新設。「家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家族は、互いに助け合わなければならない」と明記。個人ではなく「家族」こそが社会の基礎単位だと宣言。「家」中心の古い価値観への執着。
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