安保改定60年 第二部② 横田が「戦略拠点化」
首都・東京に居座る米軍横田基地(福生市など5市1町)。CV22オスプレイの配備やパラシュート降下訓練、夜間飛行の増加など、異常な強化が進んでいます。その背景を探ると、中国など周辺諸国を念頭に置いた「戦争拠点化」の動きが浮かび上がってきます。

墜落恐怖感じる
2月13日午前、横田基地近隣に住む後藤太刀味さん(75)は「信じられない光景」を目撃しました。米空軍C130輸送機2機が住宅地の真上を低空飛行し、翼を60度ほど傾けて旋回したのです。「10年住んでいるがこんな極端に機体を傾けるのは初めて見た。墜落するのではないかと恐怖を感じた」
羽村平和委員会によると、2月10~14日に米アーカンソー州リトルロック基地からC130J輸送機が多数飛来。横田所属のC130を加えて最大7機が関東各地で編隊飛行訓練を行いました。
「横田基地の撤去を求める西多摩の会」の高橋美枝子代表も車内から目撃し、「今まで見たことない低空飛行だった。巨大な機体が車を覆うように飛んだ。まるで植民地のようだ」と語りました。
オバマ前政権時、米国の戦略的軸足を中東からアジア太平洋地域に移す「リバランス(再均衡)」が本格化した2012年以降、全国で在日米軍の新たな強化が進みました。在日米軍司令部がおかれる横田基地も、アジア太平洋地域の空輸拠点としての従来の機能に加えて、出撃拠点としての著しい強化が進んでいます。

滑走路南側に整列した7機の米空軍C130輸送機=2月10日、東京・横田基地(羽村平和委員会提供)

米アラスカ州の第4回空てい部隊による100人規模のパラシュート降下訓練=2012年1月10日、東京都・横田基地(羽村平和委員会提供)
降下訓練常態化
12年1月10日、100人規模のパラシュート部隊が無通告で横田基地に降下。強行したのはアラスカ州の第25歩兵師団第4空挺旅団戦闘団でした。以来、横凪では敵地への侵入を想定した大規模なパラシュート降下訓練が常態化。最近では高度約3000層で降下を開始し、低い高度でパラシュートを開く訓練が増えています。地元住民は「音もなく突然米兵が降りてくる」と言います。
同訓練は米本土の部隊に加え、トリイステーション(沖縄県読谷村)の米陸軍第1特殊部隊群第1大隊や在沖縄米海兵隊の実施が目立っています。沖縄では、基地外落下などの事故が相次いでいることから反発が強いため、訓練の一部を横田に移したとみられます。
さらに18年4月から特殊作戦機・CV22オスプレイが配備され、19年7月には同機を運用する第21特殊作戦飛行隊が発足。沖縄・嘉手納基地所属のMC130特殊作戦機の飛来も常態化するなど、特殊作戦部隊の拠点化も進んでいます。
こうした動きの背景として、軍事情報アナリストの小柴康男さんは「敵地に侵入する特殊作戦部隊は、地形に応じて機体を隠しながら飛行する訓練も行う。沖縄と違って東日本には高い山や平野、ダムなどがあり、特殊作戦の最適な訓練場所だ。また、沖縄と比べるとパラシュート降下訓練への自治体の反発が小さいのも理由では」と指摘しました。
首都の基地 攻撃対象
横田基地では、戦闘機の飛来増加も顕著になっています。羽村平和委員会によると、▽2016年1月20~22日にF22ステルス戦闘機が14機、F16戦闘機が6機▽同年7月30~8月3日にF16が14機▽17年7月30~8月3日にF16が14機▽18年7月7日にF22が7機―など一度に多数の戦闘機が飛来しています。
離着陸数が急増
こうした訓練や出撃拠点化で離着陸回数が急増し、周辺住民への騒音被害が深刻化しています。福生市の航空機騒音調査によると、18年度の離着陸回数は1万2313回、前年度比で約20%増加しました。19年度は20年1月末時点で1万1815回に達し、イラク戦争が勃発した03年度(1万2754回)を超えるペースです。(グラフ)

CV22オスプレイが配備された18年からは夜間の飛行訓練も急増しました。福生市の調査では、18年度の午後7~9時の離着陸回数は2567回、前年度比で約52%増加。19年度は1月末時点で2938回となり、前年度を上回っています。午後に横田を離陸し、夜遅くまで周辺地域を飛行し、帰投するのがCV22の主な飛行パターンです。オスプレイは独特の重低音を響かせ、低周波による健康被害も懸念されます。
横田基地での訓練激化に伴う被害は、単に同基地周辺だけの問題ではありません。同基地所属のC130訓練エリアは関東全域から伊豆半島にまで広がっています。さらに、1都9県にまたがり、米軍が管制権を握っている「横田空域」(横田進入管制区)の存在があります。15年10月に公表されたCV22「環境レビュー」には同空域が図示されていました。横田基地での訓練激化は、首都圏全域に影響を及ぼします。
「中国、ロシア、北朝鮮が安全保障環境の課題を突きつけている。直近の脅威は北朝鮮だが、長期的・戦略的な最大の脅威は中国だ。中国がますます経済、軍事、外交能力をあらわにし、威圧的な形で国際秩序に抗している」。在日米軍のシュナイダー司令官は2月25日、日本記者クラブでの会見でこう述べ、「中国脅威」を強調しました。

離陸するCV22オスプレイ=2月6日、東京・横田基地(羽村平和委員会提供)

横田基地に飛来したF22ステレス戦闘機=2016年1月26日(東京都福生市)
オバマ政権下で進められた「リバランス」戦略の大きな背景には台頭する中国があり、トランプ政権は台頭する中国に対抗する動きをさらに強めています。軍事情報アナリストの小柴康男さんは、横田基地への戦闘機の飛来の増加も、「中国軍の強化とあわせ、従来の戦闘機の出撃拠点である三沢・嘉手納に加えて、横田も出撃拠点としての役割が与えられてきている」とみています。
ただ、仮に中国との全面衝突になれば、どうなるのか。
17年6月に米海軍のシュガート大佐らがまとめた報告書「先制攻撃・アジアの米国拠点に対する中国のミサイルの脅威」は、中国の弾道ミサイル能力の向上によって撃墜不可能な最新弾道ミサイルの攻撃範囲内に、日本中の米軍基地が入ると指摘。想定される攻撃対象に①横田②三沢③横須賀④岩国⑤佐世保⑥嘉手納―などを列挙しています。
有事で米軍避難
報告書は、米国が台湾や南シナ海など中国の「戦略的利益」を脅かし、中国が米国の介入を阻止できない場合、在日米軍基地への先制攻撃もありえると指摘。このような状況下で米中戦争に突入し、ミサイル攻撃を防御できない場合、米軍部隊は「標的になりうる基地からの速やかな退避」をすべきだと結論付けています。
小柴氏は、在日米軍基地は「出撃拠点」どころか、「使い捨ての軍事要塞」になってしまうと指摘。「『米軍がいるから日本は安全だ』と信じている人が多いかもしれないが、米軍は有事になれば日本からの退避を真剣に考えているのが現実だ」と強調します。
世界最大の人口密集地である首都圏に存在する横田基地が攻撃目標になることが、どれほど危険なことか。難しい話ではありません。
横田基地周辺も水質汚染
地位協定理由に調査拒む米
沖縄県に続き、横田基地周辺でも、発がん性や毒性の可能性があり、国内では製造・使用が禁止されている有機フッ素化合物(PFOS・PFOA)による水質汚染が明らかになり、住民の懸念が広がっています。

有機フッ素化合物PFOSを含む泡消火剤を使って消火活動を行う米軍(米国防総省の公式ホームページから)
2018年、横田基地で10~17年にかけて、PFOSを含む泡消火剤が3161ミリリットル以上漏出したことが明らかになりました。昨年1月には、横田基地近くの立川市の井戸水から、両物質合わせて1340ナノグラム(1ナノグラム=10億分の1グラム)が検出され、その値は米国の飲用水の勧告値(1リットルあたり70ナノグラム)の19倍にあたります。
沖縄の米軍基地周辺の水源汚染を研究してきた小泉昭夫京都大名誉教授は、PFOS・PFOAの新生児への影響を指摘します。小泉氏は、1999年に沖縄県が発表した調査報告書で、汚染が疑われる那覇、宜野湾、沖縄各市の低出生体重児出生率が、汚染の可能性が低いとされる南城市よりも高かったことに言及。大阪府の化学メーカーがPFOAの使用をやめた後、隣接する摂津市、守口市では、1999~2004年に全国よりも高かった低出生体重児出生率は、12~16年には全国レベルに低下したと説明します。
厚生労働省は2月19日に、国内の基準値を1リットルあたり50ナノグラムとすることを正式に発表しました。小泉氏は、基準値の基になったのが、動物実験をつかった米環境保護庁のデータと同じものであり、人間の体はより敏感であることを考慮すべきだと強調。摂津市、守口市でわかった安全な血清濃度を基に、1リットルあたり10ナノグラムとすることを提案しています。
問題が深刻化する一方で、米軍は日米地位協定を理由に、基地での立ち入り調査を拒み続けています。
「しんぶん赤旗」日刊紙 2020年3月2日付掲載
日本の首都に米軍の出撃基地がある。もちろん攻撃対象にもなる。
CV22オスプレイ、F22ステルス戦闘機、C130輸送機などが飛来・集結。
パラシュート降下訓練も。
せめて首都からが出て行って欲しい。
首都・東京に居座る米軍横田基地(福生市など5市1町)。CV22オスプレイの配備やパラシュート降下訓練、夜間飛行の増加など、異常な強化が進んでいます。その背景を探ると、中国など周辺諸国を念頭に置いた「戦争拠点化」の動きが浮かび上がってきます。

墜落恐怖感じる
2月13日午前、横田基地近隣に住む後藤太刀味さん(75)は「信じられない光景」を目撃しました。米空軍C130輸送機2機が住宅地の真上を低空飛行し、翼を60度ほど傾けて旋回したのです。「10年住んでいるがこんな極端に機体を傾けるのは初めて見た。墜落するのではないかと恐怖を感じた」
羽村平和委員会によると、2月10~14日に米アーカンソー州リトルロック基地からC130J輸送機が多数飛来。横田所属のC130を加えて最大7機が関東各地で編隊飛行訓練を行いました。
「横田基地の撤去を求める西多摩の会」の高橋美枝子代表も車内から目撃し、「今まで見たことない低空飛行だった。巨大な機体が車を覆うように飛んだ。まるで植民地のようだ」と語りました。
オバマ前政権時、米国の戦略的軸足を中東からアジア太平洋地域に移す「リバランス(再均衡)」が本格化した2012年以降、全国で在日米軍の新たな強化が進みました。在日米軍司令部がおかれる横田基地も、アジア太平洋地域の空輸拠点としての従来の機能に加えて、出撃拠点としての著しい強化が進んでいます。

滑走路南側に整列した7機の米空軍C130輸送機=2月10日、東京・横田基地(羽村平和委員会提供)

米アラスカ州の第4回空てい部隊による100人規模のパラシュート降下訓練=2012年1月10日、東京都・横田基地(羽村平和委員会提供)
降下訓練常態化
12年1月10日、100人規模のパラシュート部隊が無通告で横田基地に降下。強行したのはアラスカ州の第25歩兵師団第4空挺旅団戦闘団でした。以来、横凪では敵地への侵入を想定した大規模なパラシュート降下訓練が常態化。最近では高度約3000層で降下を開始し、低い高度でパラシュートを開く訓練が増えています。地元住民は「音もなく突然米兵が降りてくる」と言います。
同訓練は米本土の部隊に加え、トリイステーション(沖縄県読谷村)の米陸軍第1特殊部隊群第1大隊や在沖縄米海兵隊の実施が目立っています。沖縄では、基地外落下などの事故が相次いでいることから反発が強いため、訓練の一部を横田に移したとみられます。
さらに18年4月から特殊作戦機・CV22オスプレイが配備され、19年7月には同機を運用する第21特殊作戦飛行隊が発足。沖縄・嘉手納基地所属のMC130特殊作戦機の飛来も常態化するなど、特殊作戦部隊の拠点化も進んでいます。
こうした動きの背景として、軍事情報アナリストの小柴康男さんは「敵地に侵入する特殊作戦部隊は、地形に応じて機体を隠しながら飛行する訓練も行う。沖縄と違って東日本には高い山や平野、ダムなどがあり、特殊作戦の最適な訓練場所だ。また、沖縄と比べるとパラシュート降下訓練への自治体の反発が小さいのも理由では」と指摘しました。
首都の基地 攻撃対象
横田基地では、戦闘機の飛来増加も顕著になっています。羽村平和委員会によると、▽2016年1月20~22日にF22ステルス戦闘機が14機、F16戦闘機が6機▽同年7月30~8月3日にF16が14機▽17年7月30~8月3日にF16が14機▽18年7月7日にF22が7機―など一度に多数の戦闘機が飛来しています。
離着陸数が急増
こうした訓練や出撃拠点化で離着陸回数が急増し、周辺住民への騒音被害が深刻化しています。福生市の航空機騒音調査によると、18年度の離着陸回数は1万2313回、前年度比で約20%増加しました。19年度は20年1月末時点で1万1815回に達し、イラク戦争が勃発した03年度(1万2754回)を超えるペースです。(グラフ)

CV22オスプレイが配備された18年からは夜間の飛行訓練も急増しました。福生市の調査では、18年度の午後7~9時の離着陸回数は2567回、前年度比で約52%増加。19年度は1月末時点で2938回となり、前年度を上回っています。午後に横田を離陸し、夜遅くまで周辺地域を飛行し、帰投するのがCV22の主な飛行パターンです。オスプレイは独特の重低音を響かせ、低周波による健康被害も懸念されます。
横田基地での訓練激化に伴う被害は、単に同基地周辺だけの問題ではありません。同基地所属のC130訓練エリアは関東全域から伊豆半島にまで広がっています。さらに、1都9県にまたがり、米軍が管制権を握っている「横田空域」(横田進入管制区)の存在があります。15年10月に公表されたCV22「環境レビュー」には同空域が図示されていました。横田基地での訓練激化は、首都圏全域に影響を及ぼします。
「中国、ロシア、北朝鮮が安全保障環境の課題を突きつけている。直近の脅威は北朝鮮だが、長期的・戦略的な最大の脅威は中国だ。中国がますます経済、軍事、外交能力をあらわにし、威圧的な形で国際秩序に抗している」。在日米軍のシュナイダー司令官は2月25日、日本記者クラブでの会見でこう述べ、「中国脅威」を強調しました。

離陸するCV22オスプレイ=2月6日、東京・横田基地(羽村平和委員会提供)

横田基地に飛来したF22ステレス戦闘機=2016年1月26日(東京都福生市)
オバマ政権下で進められた「リバランス」戦略の大きな背景には台頭する中国があり、トランプ政権は台頭する中国に対抗する動きをさらに強めています。軍事情報アナリストの小柴康男さんは、横田基地への戦闘機の飛来の増加も、「中国軍の強化とあわせ、従来の戦闘機の出撃拠点である三沢・嘉手納に加えて、横田も出撃拠点としての役割が与えられてきている」とみています。
ただ、仮に中国との全面衝突になれば、どうなるのか。
17年6月に米海軍のシュガート大佐らがまとめた報告書「先制攻撃・アジアの米国拠点に対する中国のミサイルの脅威」は、中国の弾道ミサイル能力の向上によって撃墜不可能な最新弾道ミサイルの攻撃範囲内に、日本中の米軍基地が入ると指摘。想定される攻撃対象に①横田②三沢③横須賀④岩国⑤佐世保⑥嘉手納―などを列挙しています。
有事で米軍避難
報告書は、米国が台湾や南シナ海など中国の「戦略的利益」を脅かし、中国が米国の介入を阻止できない場合、在日米軍基地への先制攻撃もありえると指摘。このような状況下で米中戦争に突入し、ミサイル攻撃を防御できない場合、米軍部隊は「標的になりうる基地からの速やかな退避」をすべきだと結論付けています。
小柴氏は、在日米軍基地は「出撃拠点」どころか、「使い捨ての軍事要塞」になってしまうと指摘。「『米軍がいるから日本は安全だ』と信じている人が多いかもしれないが、米軍は有事になれば日本からの退避を真剣に考えているのが現実だ」と強調します。
世界最大の人口密集地である首都圏に存在する横田基地が攻撃目標になることが、どれほど危険なことか。難しい話ではありません。
横田基地周辺も水質汚染
地位協定理由に調査拒む米
沖縄県に続き、横田基地周辺でも、発がん性や毒性の可能性があり、国内では製造・使用が禁止されている有機フッ素化合物(PFOS・PFOA)による水質汚染が明らかになり、住民の懸念が広がっています。

有機フッ素化合物PFOSを含む泡消火剤を使って消火活動を行う米軍(米国防総省の公式ホームページから)
2018年、横田基地で10~17年にかけて、PFOSを含む泡消火剤が3161ミリリットル以上漏出したことが明らかになりました。昨年1月には、横田基地近くの立川市の井戸水から、両物質合わせて1340ナノグラム(1ナノグラム=10億分の1グラム)が検出され、その値は米国の飲用水の勧告値(1リットルあたり70ナノグラム)の19倍にあたります。
沖縄の米軍基地周辺の水源汚染を研究してきた小泉昭夫京都大名誉教授は、PFOS・PFOAの新生児への影響を指摘します。小泉氏は、1999年に沖縄県が発表した調査報告書で、汚染が疑われる那覇、宜野湾、沖縄各市の低出生体重児出生率が、汚染の可能性が低いとされる南城市よりも高かったことに言及。大阪府の化学メーカーがPFOAの使用をやめた後、隣接する摂津市、守口市では、1999~2004年に全国よりも高かった低出生体重児出生率は、12~16年には全国レベルに低下したと説明します。
厚生労働省は2月19日に、国内の基準値を1リットルあたり50ナノグラムとすることを正式に発表しました。小泉氏は、基準値の基になったのが、動物実験をつかった米環境保護庁のデータと同じものであり、人間の体はより敏感であることを考慮すべきだと強調。摂津市、守口市でわかった安全な血清濃度を基に、1リットルあたり10ナノグラムとすることを提案しています。
問題が深刻化する一方で、米軍は日米地位協定を理由に、基地での立ち入り調査を拒み続けています。
「しんぶん赤旗」日刊紙 2020年3月2日付掲載
日本の首都に米軍の出撃基地がある。もちろん攻撃対象にもなる。
CV22オスプレイ、F22ステルス戦闘機、C130輸送機などが飛来・集結。
パラシュート降下訓練も。
せめて首都からが出て行って欲しい。
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