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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

所得税法56条とジェンダー 自営業の妻の働き認めない差別

2020-06-02 08:18:37 | 予算・税金・消費税・社会保障など
所得税法56条とジェンダー 自営業の妻の働き認めない差別
所得税は原則として「個人単位」の所得に課税されます。ところが、個人事業を家族で営んでいる白色申告(原則的な確足申告の方法)者の場合、事業主個人に帰属する「家族単位」の所得に課税されます(所得税法56条。以下56条)。事業主(夫)と同一生計の配偶者(妻)などの親族が、事業主から労働力の対価として給与が支払われても、その支払いはないものとされます。
明治民法は、家長が家族を支配する家父長制を規定しており、家族無償労働は家父長制の重要な支柱でした。現行民法では家父長制が廃止されていますが、56条において家父長制が温存されており、自営業者の家族労働の成果はすべて事業主個人の所得となり、税負担も増えます。

青色申告(税務署長の承認で可能になる特例的な確定申告の方法)の選択や法人化をすれば、家族に支払う給与は費用となり、所得は分散され、税負担が少なくなります。明らかに白色申告者は差別されています。
憲法の内容で何より重要なのは市民の自由の保障です。それは、国家権力にも奪えない人間の基本的権利であるという意味で「基本的人権」と呼ばれます。基本的人権はすべての人間が人間として平等であることを当然の前提とします。
憲法はすべての国民の法の下の平等(14条)、婚姻・家庭生活における平等(24条)を規定しています。家族従業者の働き分を認めない56条は、このほか憲法29条(財産権)、25条(生存権)、13条(個人の尊重)などに違反しています。



「所得税法56条を廃止し、家族の働き分を認めよ」とアピールする業者婦人=2019年9月26日、東京都台東区

1974年、衆院大蔵委員会(安倍晋太郎委員長=安倍晋三首相の父)は、「中小業者に対する税制改正等に関する請願」を全会一致で採択しました。請願は税制改革について次のようにのべています。
(1)現行の事業主報酬を改め、青色・白色を問わず店主・家族専従者の自家労賃を認め、完全給与制とすること。
(2)大資本に対する特権的な租税特別措置を無くし、法人税を累進制とし、小法人の税率を大幅に引き下げること。
全国商工団体連合会婦人部協議会(全婦協)の集計によれば、56条の廃止や見直しを求める意見書の採択(趣旨採択を含む)は543自治体議会に広がり、全自治体の3割を超えています(今年3月末現在)。56条廃止は、家族従業者の多くが配偶者(妻)であることから分かるように、社会的・文化的に形成される男女の相違(ジェンダー)による差別をなくす課題でもあります。
しかし、56条の廃止要求だけにとどまれば「机上の計算」となり、現実の家族無償労働はなくなりません。実際に家族無償労働をなくすには、賃金を支払える所得の確保が前提となります。
そのためには56条の廃止と同時に消費税の縮小廃止、大企業の不公正取引の是正、社会保障の充実、コロナ禍救済などにより自営業者の安定した経営を実現させねばなりません。浦野広明(うらの・ひろあき 立正大学法学部客員教授)

「しんぶん赤旗」日曜版 2020年5月31日付掲載


白色申告している中小零細業者の家族労働の賃金を経費として認めない「差別」は、以前から問題になってきました。
コロナ禍のもと、経営が悪化する中、その家族労働の賃金も捻出できない状態に。
元請けの正当な単価の支払い。中小零細企業への社会保障の充実、収入減への補償が必要です。


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