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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

大破たんの原発再稼働路線から自然エネルギー拡大へ

2018-11-16 16:09:27 | 原子力発電・放射能汚染・自然エネルギー
大破たんの原発再稼働路線から自然エネルギー拡大へ

各地で相次いだ台風や地震が原発の脆弱性を浮き彫りにしました。しかし、安倍政権は国民世論を無視して原発再稼働、増設をねらっています。原発の危険性や国民生活に与える影響、自然エネルギーの普及に向けて何が必要かを考えます。日本共産党原発・エネルギー問題対策委員会の鈴木剛さんにインタビューしました。

災害で被害拡大 行き詰まる原発
災害多発国である日本ではこの間、大阪北部地震、西日本豪雨、台風21号による大規模な自然災害が頻発し、多くの人命が失われました。
9月6日に発生した、北海道胆振(いぶり)東部地震(最大震度7)では、震源地に近い厚真(あつま)町の北海道電力苫東(とうま)厚真火力発電所が緊急停止し、日本の電力会社で初めて全域停電(ブラックアウト)が起こりました。同発電所3基の総出力は165万キロワットで、地震発生時の道内の電力需要の半分を担っていました。停電によって道民の日常生活と本州の食料を支える農水産(加工)業などに甚大な被害を与えました。
泊原子力発電所は2011年の東京電力福島第一原発事故の翌年から停止しており、事実上、苫東厚真火発に「一極集中」する状況になっていました。
泊原発は敷地内にある断層や埋め立て地の液状化対策を迫られ、動かす見通しが立っていません。しかし、北電は泊原発再稼働にこだわり、この5年で発電所への投資額の5割以上に当たる1887億円を、「安全対策」として停止中の泊原発に投じてきました。他の発電所の建設・建て替えなどの遅れ、安定供給体制の整備よりも泊原発の再稼働を優先した責任は重大です。エネルギーを安定供給するという社会的責任を負った北電の姿勢が問われます。

制御できない原発の「異質の危険」
東日本大震災から7年8カ月がたちますが、いまだに5万7千人(政府把握)の被災者が避難生活を強いられています。その多くは福島原発事故によるものです。
福島原発事故は原因究明が尽くされず、事故収束の見通しも不透明です。多くの人が原発事故でふるさとを追われたまま、帰れる見通しも立っていません。原発事故には、他の事故にない「異質の危険性」があるのです。
原発事故によって放射性物質が外部に放出された場合に、完全に抑える手段は存在していません。「空間的」被害は、どこまでも広がる危険があり、日本だけでなく海外にまで拡散されます。「時間的」被害は、将来にわたる危険があり、放射性物質が人体に悪影響を与えない量になるまでに何万年もかかることもあります。「社会的」被害は、地域社会を壊し、住民は避難を余儀なくされます。
原発事故が起これば、被害を「空間的」「時間的」「社会的」とそれぞれに限定することが不可能です。他の産業事故では考えられない、まさに「異質の危険」です。
福島原発事故によって、原発の危険性と事故被害の深刻さが明らかとなり、原発の「安全神話」は崩れました。また、2年近く(13年9月~15年8月)「稼働原発ゼロ」を経験し、日本社会が原発なしでやっていけることが明らかとなりました。国民的経験を経て、国民の75%が「原発ゼロ」「将来的にはゼロ」を求めています。




高コストで処理不可能
安倍首相は所信表明演説で「責任あるエネルギー政策を構築していく」と述べました。原発をベースロード電源として安定供給していくという宣言ですが、福島原発事故による被害の甚大さを考えれば、原発ほど無責任な電源はありません。原発事故の処理費用は政府の見積もりで約21・5兆円に達し、今後もどれだけ膨らむか分かっていません。
欧米では安全対策のために原発の建設費が膨れ上がり、世界銀行の総裁は「原発への投資は行わない」と明言しています。自然エネルギーは普及が進めばコストは安くなりますが、原発は事故の被害が甚大になるため採算がとれず、コスト面でも破綻しています。
また、原発を再稼働すれば、わずか6年で原発の使用済み核燃料貯蔵プールが満杯になります。使用済み核燃料を再利用する核燃料サイクルは、完全に行き詰まり、高速増殖炉「もんじゅ」は、廃炉に追い込まれました。原発を稼働すればするほど、「核のゴミ」がたまっていき、行き場のないごみが増え続けます。原発には未来はありません。




原発にしがみつく安倍政権
安倍政権は電力業界と一体となって、原発の推進をねらっています。7月3日、新たな「エネルギー基本計画」を閣議決定しました。「基本計画」は、原発を将来にわたって「重要なベースロード電源」と位置付け、2030年度の電力の約2割を原発で賄うとしました。これは原発30基分に当たり、最大60年の運転延長などを視野に入れた目標です。また、全国で廃炉が決定、廃炉作業中、検討中の原発は11原発23基あり、目標を達成するには全ての原発の再稼働、新しい原発の増設を強行しなければならず、国民の願いに逆行しています。
しかも、安倍首相がこれまで述べていた「世界最高水準の安全基準で、安全が確認された原発は再稼働する」という方針はすでに破綻しています。安倍首相は国民からの厳しい批判を受けて、原発に「絶対安全はない」と認めざるを得ませんでした。「基本計画」は、「万が一事故が起きた場合には、国は関係法令に基づき、責任をもって対処する」としながら、避難対策は自治体任せであり、実効性の保障もありません。




電力業界が再エネを敵視
安倍政権が原発を推進する中、九州電力が太陽光発電を行っている事業者に発電を一時停止させる「出力制御」を4回にわたって実施しました。九電は出力制御を実施した理由について、需給バランスが崩れると大規模停電を起こす恐れがあり、それを回避するための措置だと主張しています。
しかし、九電は太陽光の発電量を抑える一方で、川内(せんだい)原発1、2号機(鹿児島県)、3月に佐賀県の玄海原発3号機、6月に同4号機の再稼働を強行してきました。稼働している原発4基は「出力制御」の対象外として、原発再稼働を最優先させた九電の姿勢が厳しく問われます。
日照条件に恵まれた九州では太陽光発電の導入が進み、8月末時点で約800万キロワット(原発約8基分に匹敵)の発電量があります。自然エネルギーの潜在能力を引き出すよう、転換すべきです。


自然エネルギーの本格的な普及へ
世界の流れは原発、石炭燃料による発電から自然エネルギーの大幅導入が主流となっています。今後の電力供給における自然エネルギーの割合について、スペインは2025年までに40%、ドイツは25年までに40~45%、フランスは30年までに40%、EU全体は30年までに45%など積極的な目標を立てています。
一方、日本政府や財界は、今ある原発を耐用年数ぎりぎりまで稼働させた方が「経済的」だとして自然工ネルギーの普及には消極的です。日本の電力供給に占める自然エネルギーの比率は15%(16年度)で、ドイツの30%(15年)を大きく下回っています。
日本のエネルギー資源量(エネルギー導入ポテンシャル)は、太陽光、中小水力、地熱、風力で20億キロワット以上と推定されています(環境省など)。日本に現存する発電設備の電力供給能力の約10倍、原発54基の発電能力の約40倍にもなります。それぞれの地域の条件に合った発電設備の開発・利用を拡大することで、原発がなくても十分に電力を供給することができます。
発電量を調整できない「融通の利かない」原発は、一極集中による大規模停電のリスクを伴います。日本は、世界の流れに合わせて自然エネルギーを軸にした地域分散型の電力供給への転換が必要です。自治体と連携し、自然環境に配慮した自然エネルギーの導入の拡大へ政治決断をする時です。



5千人が参加した「原発ゼロ☆国会前大集合」では、市民と野党の共闘で「原発ゼロ」の社会を目指す決意を固めあった(3月11日、国会前)

野党政策を魅力的に
「3・11」以降続けられている首相官邸前の抗議行動、全国の「金曜日行動」、安倍政権を倒して、新しい政治をつくろうという市民と野党の共闘が発展する中で、野党(共産、立民、自由、社民)は3月9日、「原発ゼロ基本法案」を国会に提出しました。
「原発ゼロ」をうったえてきた全国の草の根のとりくみと、「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟」の即時原発ゼロの立法提案が合流して実を結んだものです。「原発ゼロ」をうったえてきた日本共産党はもちろん、「緊急の場合に原発を再稼働することもあるのでは」と考えていた政党も市民との対話の中で「再稼働はあり得ない」との立場が明確となり、原発問題では初めての野党合意、国会史上初の原発ゼロ基本法案となりました。
法案は、▼稼働している原発の停止▼再稼働は一切認めない▼2030年までに一年間における電力供給量に占める自然エネルギーの割合を4割以上にする―などが柱です。法案は現在、衆議院の経済産業委員会に付託されています。与党が応じるよう世論を広げ、制定を目指す運動を広げることが求められます。
野党の共通政策を魅力的な政策に練り上げて、市民と野党の共闘を発展させていくことが安倍政権を追い詰める力になります。来年の参院選挙、統一地方選挙に向けて世論を広げ、国民の声を届けて共闘を発展させましょう。

「民主青年新聞」2018年11月19日付掲載


福島の原発事故以来、限られた数の原発しか稼働していません。福島第1原発の廃炉の費用も膨らむばかり。
今こそ、危険でコストの高い原発から、再生可能エネルギーへの転換が求められます。

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