きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

インフレ不況と希望の出口戦略③ 不況の要因はアベノミクス

2024-05-31 07:13:27 | 経済・産業・中小企業対策など
インフレ不況と希望の出口戦略③ 不況の要因はアベノミクス
下関市立大学教授 関野秀明さん

インフレ不況の原因はアベノミクスの量的金融緩和政策そのものにあります。

株価引き上げ狙い
図1は「日本銀行の総資産残高(貸出、債務証券、投資信託受益証券、その他の合計)」「日銀が市中銀行から資産を買い取り支払った貨幣(マネタリー・ベース)のうち日銀内に開設された市中銀行口座に置かれた貨幣(日銀当座預金・市中銀行の資産で日銀の負債)」「日経平均株価」の推移です。第2次安倍晋三政権以降、日本銀行は量的金融緩和政策を強化し2024年2月までに610兆円もの国債を買い入れ、保有しています。この大量の資金供給の一部は株式市場に流れ込み4倍もの株価上昇を引き起こしました。




また16年以降、日本銀行は長期金利をゼロ近傍に抑え込む「イールドカーブ・コントロール」を実施しました。日本銀行は長期国債を大量に購入することで国債価格をつりあげ、金利をゼロ近傍に抑え込む政策に狂奔します。図2は「1年物で0・1%の利付国債1万円」を例とした「金利・利子率と国債価格」との関係です。1年後に政府が1万円で償還するこの利付国債は「表面利子率0・1%・利子10円」に加え価格変動による「変動利子」を生みます。今、この利付国債1万円が市場で9985円で取引されると、1年後に政府が必ず1万円で償還するので変動利子は15円、国債金利は「表面利子10円+変動利子15円」÷「国債価格9985円」=0・25%です。この「利付国債1万円」が売り崩され国債価格が9960円に下がると、1年後に政府が必ず1万円で償還するので変動利子は40円、国債金利は「表面利子10円+変動利子40円」÷「国債価格9960円」=0・50%です。



先進国最大の財政赤字を抱える日本の国債が先進国最低のゼロ金利であることは矛盾です。しかし、日本銀行はゼロ金利維持のために国債購入・価格つりあげを継続しています。日銀の国債購入・ゼロ金利維持の真の目的は株価引き上げです。「元本保証のない株式の期待収益率」から「元本保証のある国債の利子」を差し引いた収益率の差分が「リスク・プレミアム」です。国債の利子がゼロならば「リスク・プレミアム」は拡大し株式が選好され株価は上がります。

日本銀行も危機に
株価を上げ続けるための量的金融緩和政策は、政府の債務残高と日銀の保有国債を増やし続けています。円安・インフレの進行は財政だけでなく日本銀行をも危機に陥れます。
図1をみると日銀保有国債(資産)が610兆円であるのに対して日銀当座預金残高(負債)が540兆円にのぼることがわかります。今後、インフレ鎮圧のため1%の利上げを仮定すると「満期まで表面利子率が変わらない保有国債の平均利回りが0・27%、利子収入は1・65兆円」である一方、「即時に利払いが増える当座預金付利は1%で利払いは5・4兆円」となり、日銀は3・75兆円の「逆ざや・赤字」を抱えます。日銀の自己資本は12・7兆円なので3年余で債務超過に陥ります。政府は無制限に国債を発行できる、中央銀行は無制限に国債を購入できるという信仰はインフレの前には無力なのです。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年5月30日付掲載


第2次安倍晋三政権以降、日本銀行は量的金融緩和政策を強化し2024年2月までに610兆円もの国債を買い入れ、保有。この大量の資金供給の一部は株式市場に流れ込み4倍もの株価上昇を。
「利付国債1万円」が売り崩され国債価格が9960円に下がると、1年後に政府が必ず1万円で償還するので変動利子は40円、国債金利は「表面利子10円+変動利子40円」÷「国債価格9960円」=0・50%。
日銀の国債購入・ゼロ金利維持の真の目的は株価引き上げ。「元本保証のない株式の期待収益率」から「元本保証のある国債の利子」を差し引いた収益率の差分が「リスク・プレミアム」です。国債の利子がゼロならば「リスク・プレミアム」は拡大し株式が選好され株価は上がる。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« インフレ不況と希望の出口戦... | トップ | インフレ不況と希望の出口戦... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

経済・産業・中小企業対策など」カテゴリの最新記事