独占パワー① 巨額利益を株主に分配
一握りの富裕者に世界の富が一極集中する背景に、巨大グローバル企業による独占の強まりがあります。
政治経済研究所の合田寛主任研究員に、現在の物価上昇とも深い関わりがある「独占パワー」の弊害について寄稿してもらいました。
政治経済研究所 合田寛主任研究員
世界で経済力の集中がかつてなく進行しています。巨大グローバル企業はますます巨大になり、世界中で市場支配力を強めています。そればかりか政治的影響力を強め、国の政策を左右する力を持つに至っています。
近年、独占化が急速に進んだ背景として経済のグローバル化、デジタル化、金融化をあげることができます。
利用者囲い込み
巨大企業はデジタル化に伴って、インターネット上にプラットフォーム(情報流通や商取引の基盤)を形成し、消費者と事業者の双方を利用者として囲い込んでいます。ネットワーク効果(利用者が増えるほどプラットフォーム内の情報や商品が豊富になり利便性が高まること)を最大限活用することによって、投下した費用を大幅に上回る利用料や広告料を得て膨大な収益を上げています。米国のグーグルやアマゾン、マイクロソフトなどが典型です。
プラットフォーム企業は、得られた高収益を使って新興のライバル企業を次々に買収し、新規参入を阻んで市場の独占を図ってきました。また、知的財産権を独占することによって競争上の優越的地位を維持し、独占的支配を強めています。
さらに、金融の規制緩和によって実体経済から遊離した膨大な金融資産が生み出され、投機利潤を求める金融産業が肥大化して経済の金融化が進みました。この中で、国境を越えた企業の合併・買収(M&A)を金融機関が仲介・推進し、製薬や自動車製造、エネルギーなどさまざまな分野で独占的巨大企業が生み出されて市場の独占化が進められました。
同時に、独占化が進んだ背景には、政府の独占禁止政策の弱まりがあります。独占は悪ではなく、価格が下がり経済効率が良くなるのであれば問題はないという、新自由主義的イデオロギーがまかり通ったからです。
フランスのイシーレムリノーにあるマイクロソフトのオフィス(ロイター)
民主主義の脅威
しかし近年、各国で反独占の政策が強められようとしています。米国のバイデン大統領は「競争のない資本主義は資本主義ではない」、「競争の欠如は消費者に物価高を、労働者に賃下げをもたらす」と述べ、競争の促進を求める大統領令(2021年)を発しています。欧州連合(EU)も「デジタル市場法」(22年)を制定し、ヨーロッパ規模での競争政策を強化しようとしています。
反独占政策が強められているのは、行き過ぎた独占の弊害が目に余るようになったからです。独占化した巨大企業は独占価格を設定して物価高をもたらすとともに、雇用と賃金の削減でコストを切り下げ、空前の利益をわがものにしています。
独占的大企業は、集積した巨額の利益を株主である富裕者に配当と自社株買いなどを通じて分配し、極端な不平等を生み出しています。また、巨額資金を使ったロビー活動などによって政治権力と結びつき、民主主義にとっても重大な脅威をつくり出しています。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年7月9日付掲載
巨大企業はデジタル化に伴って、インターネット上にプラットフォーム(情報流通や商取引の基盤)を形成し、消費者と事業者の双方を利用者として囲い込み。ネットワーク効果(利用者が増えるほどプラットフォーム内の情報や商品が豊富になり利便性が高まること)を最大限活用することによって、投下した費用を大幅に上回る利用料や広告料を得て膨大な収益を。
反独占政策が強められているのは、行き過ぎた独占の弊害が目に余るようになったから。独占化した巨大企業は独占価格を設定して物価高をもたらすとともに、雇用と賃金の削減でコストを切り下げ、空前の利益をわがものに。
一握りの富裕者に世界の富が一極集中する背景に、巨大グローバル企業による独占の強まりがあります。
政治経済研究所の合田寛主任研究員に、現在の物価上昇とも深い関わりがある「独占パワー」の弊害について寄稿してもらいました。
政治経済研究所 合田寛主任研究員
世界で経済力の集中がかつてなく進行しています。巨大グローバル企業はますます巨大になり、世界中で市場支配力を強めています。そればかりか政治的影響力を強め、国の政策を左右する力を持つに至っています。
近年、独占化が急速に進んだ背景として経済のグローバル化、デジタル化、金融化をあげることができます。
利用者囲い込み
巨大企業はデジタル化に伴って、インターネット上にプラットフォーム(情報流通や商取引の基盤)を形成し、消費者と事業者の双方を利用者として囲い込んでいます。ネットワーク効果(利用者が増えるほどプラットフォーム内の情報や商品が豊富になり利便性が高まること)を最大限活用することによって、投下した費用を大幅に上回る利用料や広告料を得て膨大な収益を上げています。米国のグーグルやアマゾン、マイクロソフトなどが典型です。
プラットフォーム企業は、得られた高収益を使って新興のライバル企業を次々に買収し、新規参入を阻んで市場の独占を図ってきました。また、知的財産権を独占することによって競争上の優越的地位を維持し、独占的支配を強めています。
さらに、金融の規制緩和によって実体経済から遊離した膨大な金融資産が生み出され、投機利潤を求める金融産業が肥大化して経済の金融化が進みました。この中で、国境を越えた企業の合併・買収(M&A)を金融機関が仲介・推進し、製薬や自動車製造、エネルギーなどさまざまな分野で独占的巨大企業が生み出されて市場の独占化が進められました。
同時に、独占化が進んだ背景には、政府の独占禁止政策の弱まりがあります。独占は悪ではなく、価格が下がり経済効率が良くなるのであれば問題はないという、新自由主義的イデオロギーがまかり通ったからです。
フランスのイシーレムリノーにあるマイクロソフトのオフィス(ロイター)
民主主義の脅威
しかし近年、各国で反独占の政策が強められようとしています。米国のバイデン大統領は「競争のない資本主義は資本主義ではない」、「競争の欠如は消費者に物価高を、労働者に賃下げをもたらす」と述べ、競争の促進を求める大統領令(2021年)を発しています。欧州連合(EU)も「デジタル市場法」(22年)を制定し、ヨーロッパ規模での競争政策を強化しようとしています。
反独占政策が強められているのは、行き過ぎた独占の弊害が目に余るようになったからです。独占化した巨大企業は独占価格を設定して物価高をもたらすとともに、雇用と賃金の削減でコストを切り下げ、空前の利益をわがものにしています。
独占的大企業は、集積した巨額の利益を株主である富裕者に配当と自社株買いなどを通じて分配し、極端な不平等を生み出しています。また、巨額資金を使ったロビー活動などによって政治権力と結びつき、民主主義にとっても重大な脅威をつくり出しています。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年7月9日付掲載
巨大企業はデジタル化に伴って、インターネット上にプラットフォーム(情報流通や商取引の基盤)を形成し、消費者と事業者の双方を利用者として囲い込み。ネットワーク効果(利用者が増えるほどプラットフォーム内の情報や商品が豊富になり利便性が高まること)を最大限活用することによって、投下した費用を大幅に上回る利用料や広告料を得て膨大な収益を。
反独占政策が強められているのは、行き過ぎた独占の弊害が目に余るようになったから。独占化した巨大企業は独占価格を設定して物価高をもたらすとともに、雇用と賃金の削減でコストを切り下げ、空前の利益をわがものに。
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