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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

インフレ不況と希望の出口戦略⑤ 「新しい福祉国家」でこそ

2024-06-02 07:19:42 | 経済・産業・中小企業対策など
インフレ不況と希望の出口戦略⑤ 「新しい福祉国家」でこそ
下関市立大学教授 関野秀明さん

金利が上がっても企業も家計も困らない十分な危機対策=「希望の出口戦略」の第二は「消費税減税と社会保障の充実」「新しい福祉国家」構想です。図1は2019年における日本、米国、欧州福祉国家の失業率、相対的貧困率、公的住宅支援支出、公的家族支援支出の関係を比較しています。相対的貧困率とは、家族の人数で調整した世帯可処分所得の中央値(一番貧しい世帯と一番豊かな世帯のちょうど真ん中)の半分に満たない世帯で暮らす人の割合で、日本では127万円以下の割合になります。




日米と欧州の違い
相対的に日本と米国は失業率が低いが貧困率が高い「低失業高貧困」であり、欧州福祉国家は失業率が高いが貧困率が低い「高失業低貧困」になっています。この原因は社会保障給付水準にあります。日本と米国は、公的住宅支援、公的家族支援に見られる社会保障が脆弱(ぜいじゃく)です。したがって住宅ローン、子育て費用、高学費を捻出するために、病気でも高齢でも低賃金で死ぬほど働かざるをえない、極端な企業依存社会となっています。
逆に欧州福祉国家は相対的に社会保障給付が充実しており、住宅費や子育て費用、医療費、学費を稼ぐための、貧困に追い詰められた低賃金過度労働を避けることができます。
「福祉は甘え、怠け者を生む」という考えは誤りです。脆弱な社会保障のもとで病気でも高齢でもわずかな現金のために劣悪な条件で働くことを強いられれば、健全な勤労意欲は減退します。高福祉で生存権を保障した上で、高賃金・安定雇用で健全な労働意欲を引き出すことが重要です。私たち労働者は高賃金・安定雇用で人間らしい扱いをしてくれる企業であれば、「自分の会社」として大切に守ろうと考えるのです。




資金余剰の3%で
社会保障充実、「新しい福祉国家」建設の財源は、日本経済全体の資金循環から見つけるべきです。図2は、一方で政府部門が600兆円を超える「資金不足」であり、他方で「資本金10億円以上の大企業が保有する金融資産が407兆円」「純金融資産1億円以上の富裕層が保有する金融資産が364兆円」「主に大企業・富裕層が海外で運用する金融資産・純貸越額が473兆円」合わせて1244兆円の「資金余剰」があることを示しています。
この「資金余剰」は過去10年で毎年平均40兆円余のペースで増え続けています。19年における日本の社会保障支出は対国内総生産(GDP)比22・3%でドイツと比べて3・6%、金額に換算して約20兆円少なくなっています。
よってこの「資金余剰」の3%弱を政府部門に移せば、消費税率5%への引き下げとドイツ並みを目指した社会保障の抜本的な充実が可能です。「最低賃金全国一律1500円」「消費税減税」「社会保障充実」こそがアベノミクスからの「希望ある出口戦略」です。(おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年6月1日付掲載


金利が上がっても企業も家計も困らない十分な危機対策=「希望の出口戦略」の第二は「消費税減税と社会保障の充実」「新しい福祉国家」構想。
「福祉は甘え、怠け者を生む」という考えは誤り。高福祉で生存権を保障した上で、高賃金・安定雇用で健全な労働意欲を引き出すことが重要。
政府部門が600兆円を超える「資金不足」であり、他方で「資本金10億円以上の大企業が保有する金融資産が407兆円」「純金融資産1億円以上の富裕層が保有する金融資産が364兆円」「主に大企業・富裕層が海外で運用する金融資産・純貸越額が473兆円」合わせて1244兆円の「資金余剰」が。
この「資金余剰」の3%弱を政府部門に移せば、消費税率5%への引き下げとドイツ並みを目指した社会保障の抜本的な充実が可能。

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