きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

岩波新書「シリーズ中国の歴史」(①~③)を読む 輪切りでなくダイナミックに

2020-06-09 07:25:50 | 赤旗記事特集
岩波新書「シリーズ中国の歴史」(①~③)を読む 輪切りでなくダイナミックに
湯浅邦弘
(ゆあさ・くにひろ 大阪大学大学院教授)

人生で初めて在宅勤務を経験しておられる方も多いであろう。人文系の研究、特に中国関係の分野では、研究室の膨大な資料が閲覧できないというのは致命的だ。そうした基礎資料の一つに「二十四史」がある。
『史記』『漢書』から『明史』まで、中国王朝の歴史を記す。原則、ある王朝が国家事業として編纂するので、「正史」と呼ばれる。この大部な書のおかげで中国三千年の歴史が手に取るように分かるのである。ただ、ここから「正しい歴史」が読み取れるのかというと、そうではない。

「中華」が正統の「正史」に限界が
まず、それら正史はいずれも、断代史(だんだいし)である。太古の昔から筆を起こす司馬遷の『史記』は例外として、あとは、ある特定の王朝の歴史を輪切りにして論述する。歴史の連続性や大きな変化はなかなか読み取れない。
また、前王朝のことを現王朝が記すのだから、そこには当然バイアスがかかってしまう。不都合なことはそもそも書かれていない。
そして、正史は、基本的に「中華」を正統として記述される。その外に位置する周辺諸民族は野蛮な異民族なのだ。これでは、世界史の中の中国という読み取りは難しい。
こうした弊害を打破し、真の中国史を記述しようとする企画が登場した。岩波新書「シリーズ中国の歴史」全5巻である。ここでは、第3巻までを取り上げてみよう。




枠にとらわれず新資料活用して
第1巻 渡辺信一郎著『中華の成立』(840円)は先史から説き起こし、「中国」の枠組みが完成する秦漢帝国の時期、分裂と再統合の魏晋南北朝時代から隋唐までを射程に収める。
「中国」の基本構造を「古典国制」と呼び、漢代に完成されたその制度が、時代や地方によって小さな変化を生じながらも、基本的には脈々と継承されていく様相を明らかにする。
続く第2巻 丸橋充拓(みつひろ)著『江南の発展』(820円)は、その「中国」の南を「船の世界」と呼び、古代中国の楚・呉・越から南宋までの展開を追う。そこでは、「古典国制」とむしろ対峙する人々も取り上げられ、江南の地域的特性を浮き彫りにする。
さらに第3巻 古松崇志(たかし)著『草原の制覇』(840円)は、「中国」の北の「馬の世界」に注目し、そこからやってくる遊牧民が中国と異文化接触することによって歴史をダイナミックに展開させていくさまを描き出す。
どの巻も、従来の枠にとらわれない柔軟かつ大きな視野を持ち、新資料を活用して記述されている。この意欲的な取り組みに学界全体が奮起し、さらに、思想史、文学史、芸術史、そして今最も関心の高い疾病史、災害史などを加えることができれば、より豊かな中国史が立ち上がってくるであろう。

「しんぶん赤旗」日刊紙 2020年6月7日付掲載


中国の歴史書にたよるのではなく、独自に文献を分析して、中国3000年の歴史を俯瞰する。
いわゆる「中華」の成立、揚子江地域の制覇、北部のモンゴル地域の制覇。
興味をそそられますね。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 種苗法改定って? | トップ | キーワードで見る資本論⑨ 「... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

赤旗記事特集」カテゴリの最新記事