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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

労基法の危機 全労連・伊藤圭一さんに聞く(中) 適用除外の対象拡大

2024-06-05 07:11:32 | 働く権利・賃金・雇用問題について
労基法の危機 全労連・伊藤圭一さんに聞く(中) 適用除外の対象拡大

―「デロゲーション(適用除外)」の対象拡大や要件緩和が狙われているのでしょうか。
例えば、裁量労働制は対象業務が限定され、労使委員会の決議を要するなど、乱用を防ぐ条件が課されています。時間外労働や休日労働も合意がなければデロゲーションできません。この制約をなくすのが政府・財界の狙いです。

合意なくても
改悪案は二つあります。一つは細かい年収要件や業務限定の縛りなどをなくし労働者と使用者が合意すればその労働条件が認められるようにすることです。
もう一つは、使用者が労働者に説明し、意見を聞けば、労働者が反対しても使用者の判断が優先されるという、さらに恐ろしい仕組みです。
財界が「労使合意」と言わず、「労使コミュニケーション」という言葉を使うのは、使用者が情報提供と意見聴取をすれば、労働者の合意なしにデロゲーションが可能となる仕組みを導入しようとの意図があるからです。
現在、就業規則の変更は労働者に不利益な部分があっても、使用者が労働者に意見聴取をして労働基準監督署に届け出れば、受理されてしまう仕組みです。
不利益に変更された規則を撤回させるには裁判をせざるを得ず、私たちは何らかの改正が必要と考えています。ところが政府と財界は、このように合意すら要らないデロゲーションの仕組みを労働時間規制にも適用しようとしています。


【企画業務型裁量労働制の導入の流れ】
1 労使委員会を設置する
2 労使委員会で決議する
3 個別の労働契約や就業規則等の整備
  所轄労働基準監督署に決議届を届け出る
4 労働者本人の同意を得る
5 制度を実施する
6 決議の有効期間の満了
※厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署の「企画業務型裁量労働制の解説」から作成


労基署減狙う
全国321カ所ある労働基準監督署の弱体化も狙われています。2022年に労基署が定期監督した事業所約14万2000カ所のうち賃金不払いなどの違反率は7割に上ります。違反を取り締まり、労基法の力を担保する労基署の存在は使用者にとっては脅威です。
財界は労基署の数を減らすために、指導・監督する単位を事業場から本社に緩和することを求めています。
事業場とは支社や工場、営業所などです。本社と工場や営業所の所在地が分かれている場合、デロゲーションをするには各事業場単位で労使協定をつくらなければなりません。
財界は、いくつも工場がある大企業は事業場ごとに労使協定を結ぶのが煩わしく、個別に労基署に踏み込まれるのも嫌なので、リモートワークなど働き方の変化を口実に、労基法の規制の適用を企業本社単位へと転換させようとしています。
そうなれば「321カ所も労基署は必要ない」という流れになり、数が減らされて現場から労働行政がますます遊離していくでしょう。
さらにデロゲーションの容易化で労基署が踏み込みにくくなります。こんな具合に労働基準行政を根本から機能不全にすることが政府・財界の目的です。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年5月31日付掲載


改悪案は二つ。一つは細かい年収要件や業務限定の縛りなどをなくし労働者と使用者が合意すればその労働条件が認められるようにすること。
もう一つは、使用者が労働者に説明し、意見を聞けば、労働者が反対しても使用者の判断が優先されるという、さらに恐ろしい仕組み。
全国321カ所ある労働基準監督署。2022年に労基署が定期監督した事業所約14万2000カ所のうち賃金不払いなどの違反率は7割に上ります。違反を取り締まり、労基法の力を担保する労基署の存在は使用者にとっては脅威。財界は労基署の数を減らすために、指導・監督する単位を事業場から本社に緩和することを。
例えば、兵庫県の場合、労働基準監督署は、神戸東(神戸市灘区・中央区)、神戸西(神戸市兵庫区、・長田区・須磨区・垂水区・北区・西区)、尼崎(尼崎市)、姫路(姫路市・宍粟市・たつの市・神崎郡・揖保郡)、伊丹(伊丹市・川西市・三田市・丹波篠山市・川辺郡)、西宮(西宮市・芦屋市・宝塚市・神戸市東灘区)、加古川(明石市・加古川市・三木市・高砂市・小野市・加古郡)、西脇(西脇市・加西市・丹波市・加東市・多可郡)、但馬(豊岡市・養父市・朝来市・美方郡)、相生(相生市・赤穂市・佐用郡・赤穂郡)、淡路(洲本市・淡路市・南あわじ市)と11カ所あります。

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