半導体産業の行方③ 強い技術基盤必要
桜美林大学教授 藤田実さん
ロジック半導体の分野は、パソコンのCPU(中央演算処理装置)では、インテルとAMD(アドバンスト・マイクロ・デバイセズ)の独占市場となっています。スマートフォンなどの半導体チップSoc(*)に関しては、国内には有力なスマホメーカーがないこともあり、クアルコム、アップル、サムスンなどの海外メーカーが圧倒的なシェアを占めています。この分野では、現状では日本企業が参入できる余地はほとんどありません。
*システム・オン・チップの略。特定の目的のために必要な要素全てを載せ、単体でシステムとして機能するよう設計された部品
●小さい企業規模
市場シェアの点で、日本企業が競争力を有していると考えられるのが、先端分野ではないアナログIC(*)と呼ばれる分野です。アナログICは、民生用機器、コンピューター、通信機器、自動車用など多様な用途向けに製造されるICで、製造企業はロジックに比べれば企業規模としては小さいのが特徴です。
*アナログ信号の処理や電源・動力制御などを担う集積回路(IC)。

米アリソナ州の工場外の看板にかかったインテルのロゴ=2020年10月2日(ロイター)
アナログICで日本企業が強いといっても、2020年売上高ランキング(ICインサイツ社調べ)でみると、1位は市場シェア19%の米テキサス・インスツルメンツ(TI)で、それ以外の上位企業の多くも欧米メーカーです。日本企業では、10位にルネサスがランクインしていますが、売上高でいえばTIの1割にも達していません。ルネサスは自動車同けに注力しているため、車載用ICではドイツのインフィニオン、オランダのNXPセミコンダクターズと並んで高い市場シェアを有しています。
しかし、車載用ICは全体としては、コンピューターや通信機器向けと比べて市場規模は大きくないため、半導体企業の売上高ランキングで言えば、下位に位置します。
●先端分野は困難
このように日本企業は、フラッシュメモリを除けば市場規模が大きい先端的分野では再参入は困難であり、市場規模の大きくない、非先端的な車載向けICなど一部分野で競争力を発揮しているにすぎません。現状を見る限り、1980年代のような世界的な市場シェアを有する半導体産業を国内で再構築するのはかなり困難です。
しかし、他方では、IoT(モノのインターネット)技術やAI(人工知能)技術、量子コンピューター技術など将来の技術発展を考えれば、基盤技術となる半導体の研究・開発・製造技術を国内に保持することは重要です。そのためにも、基礎研究も含めて研究者、技術者の処遇を改善し、技術基盤を維持、強化していくことが必要です。
(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年11月6日付掲載
IoT(モノのインターネット)技術やAI(人工知能)技術、量子コンピューター技術など将来の技術発展を考えれば、基盤技術となる半導体の研究・開発・製造技術を国内に保持することは重要です。そのためにも、基礎研究も含めて研究者、技術者の処遇を改善し、技術基盤を維持、強化していくことが必要。
やはり、基礎研究や技術基盤が大事なんですね。
桜美林大学教授 藤田実さん
ロジック半導体の分野は、パソコンのCPU(中央演算処理装置)では、インテルとAMD(アドバンスト・マイクロ・デバイセズ)の独占市場となっています。スマートフォンなどの半導体チップSoc(*)に関しては、国内には有力なスマホメーカーがないこともあり、クアルコム、アップル、サムスンなどの海外メーカーが圧倒的なシェアを占めています。この分野では、現状では日本企業が参入できる余地はほとんどありません。
*システム・オン・チップの略。特定の目的のために必要な要素全てを載せ、単体でシステムとして機能するよう設計された部品
●小さい企業規模
市場シェアの点で、日本企業が競争力を有していると考えられるのが、先端分野ではないアナログIC(*)と呼ばれる分野です。アナログICは、民生用機器、コンピューター、通信機器、自動車用など多様な用途向けに製造されるICで、製造企業はロジックに比べれば企業規模としては小さいのが特徴です。
*アナログ信号の処理や電源・動力制御などを担う集積回路(IC)。

米アリソナ州の工場外の看板にかかったインテルのロゴ=2020年10月2日(ロイター)
アナログICで日本企業が強いといっても、2020年売上高ランキング(ICインサイツ社調べ)でみると、1位は市場シェア19%の米テキサス・インスツルメンツ(TI)で、それ以外の上位企業の多くも欧米メーカーです。日本企業では、10位にルネサスがランクインしていますが、売上高でいえばTIの1割にも達していません。ルネサスは自動車同けに注力しているため、車載用ICではドイツのインフィニオン、オランダのNXPセミコンダクターズと並んで高い市場シェアを有しています。
しかし、車載用ICは全体としては、コンピューターや通信機器向けと比べて市場規模は大きくないため、半導体企業の売上高ランキングで言えば、下位に位置します。
●先端分野は困難
このように日本企業は、フラッシュメモリを除けば市場規模が大きい先端的分野では再参入は困難であり、市場規模の大きくない、非先端的な車載向けICなど一部分野で競争力を発揮しているにすぎません。現状を見る限り、1980年代のような世界的な市場シェアを有する半導体産業を国内で再構築するのはかなり困難です。
しかし、他方では、IoT(モノのインターネット)技術やAI(人工知能)技術、量子コンピューター技術など将来の技術発展を考えれば、基盤技術となる半導体の研究・開発・製造技術を国内に保持することは重要です。そのためにも、基礎研究も含めて研究者、技術者の処遇を改善し、技術基盤を維持、強化していくことが必要です。
(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年11月6日付掲載
IoT(モノのインターネット)技術やAI(人工知能)技術、量子コンピューター技術など将来の技術発展を考えれば、基盤技術となる半導体の研究・開発・製造技術を国内に保持することは重要です。そのためにも、基礎研究も含めて研究者、技術者の処遇を改善し、技術基盤を維持、強化していくことが必要。
やはり、基礎研究や技術基盤が大事なんですね。