経済キーワード グローバル化とデジタル化で変貌する経済を、キーワードで読み解きます
マイナポータル ■個人情報の民間提供も
政府が運営する個人專用のオンラインサービスのことで、行政手続きのオンライン申請や、行政機関などが保有する税、社会保障等の情報の確認が可能です。登録には、マイナンバーカードと対応できるスマートフォンやパソコン等が必要。
「本人同意」のもとにマイナポータルが持つ個人情報を民間企業に提供できる仕組みとなっており、政府は今後、学校、職場など生涯にわたる個人の健康等の情報をマイナポータル等に蓄積できるよう狙っています。
個人情報の漏えい、蓄積された情報を人工知能(AI)によって分析し個人の特徴を推定、選別するプロファイリングが広がる危険があり、重大な人権侵害行為を引き起こす恐れがあります。
カーボンニュートラル ■再生エネ充実が課題
脱炭素ともいわれます。二酸化炭素などの温室効果ガスの産業などからの排出量と植物などによる吸収が同量になることです。吸収には、他の地域での温室効果ガスの排出権購入も含まれます。温室効果ガスの排出と吸収を差し引きで実質的にゼロにすることです。
菅義偉首相は「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年力ーポンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」としました。しかし、原子力発電所の活用も表明しています。
それまでの計画は、30年度までに13年度比26%減、50年度までに80%減にするというものでした。目標達成には、再生可能エネルギーによる発電の抜本的な充実が必要です。
ジョブ型雇用 ■コロナ禍で導入広がる
臭体的な仕事内容や必要な技術・資格を明記した職務記述書(ジョブディスクリプション)に基づいて人材を採用・雇用する制度です。一般的に職責と成果に応じて評価されます。欧米で主流の雇用形態です。年功序列や終身雇用を前提とした「メンバーシップ型雇用」と対比されます。
新型コロナウイルスの感染拡大を背景に、感染予防として職場以外で働くテレワークの利用が急速に拡大。社員の勤務状況を時間で管理できないとして、成果で評価する「ジョブ型」を導入する企業が増えました。
しかし「ジョブ型」が招く成果主義は、社員同士の競争やストレスの増大に加え、長時間労働や格差拡大を助長する危険性があります。
6G(第6世代移動通信システム) ■5Gに続く規格
第5世代移動通信システム(5G)のサービスが日本で昨年3月に始まったばかり。その次の第6世代移動通信システム(6G)の研究・開発が世界ですでに始まっています。
通信速度が飛躍的に高速化した5Gも数年後には、ネットワークに接続されるモノの数を処理できなくなると予想されます。そのため、6Gの実現に向けて、世界中の研究機関や企業が研究・開発を急いでいます。
6G規格はまだ、国際的に統一されていません。しかし、伝送情報量の上限は5Gの最低毎秒10ギガビットから毎秒100ギガビットへ増加、通信遅延は1ミリ秒から1ミリ秒未満へ低下、接続密度は100万台/平方キロメートルから1000万台/平方キロメートルへ増加するとされます。
SDGs(持続可能な開発目標) ■人権保護に重点
SDGs17の目標
1:貧困をなくそう
2:飢餓をゼロに
3:すべての人に健康と福祉を
4:質の高い教育をみんなに
5:ジェンダー平等を実現しよう
6:安全な水とトイレを世界中に
7:エネルギーをみんなに そしてクリーンに
8:働きがいも経済成長も
9:産業と技術革新の基盤をつくろう
10:人や国の不平等をなくそう
11:住み続けられるまちづくりを
12:つくる責任 つかう責任
13:気候変動に具体的な対策を
14:海の豊かさを守ろう
15:陸の豊かさも守ろう
16:平和と公正をすべての人に
17:パートナーシップで目標を達成しよう
持続可能な開発目標=Sustainable Development Goalsの頭文字をとった略称です。2015年の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」で掲げられました。
社会・経済・環境などの分野において30年までに政府や企業が達成すべき葺の目標(別項)と、それに関連する169の具体的な到達点が明記されています。
人権の尊重が中心テーマです。「誰一人取り残さない」をスローガンに、途上国の人々や女性・子どもなど社会的に弱い立場にある人々の人権保護に重点を置いています。
国連やその他の国際機関、各国政府だけでなく、企業、市民が目標実現に向けて積極的に貢献することが必要です。
ユニタリータックス ■税逃れ阻止の新ルール
多国籍企業の税逃れ阻止のために市民社会が提案する国際課税制度がユニタリータックス(合算課税)です。
各国にまたがる多国籍企業グループの子会社の利益を合算した上で、各国に配分し、各国政府が課税する方法です。配分の基準は資産、売上高、従業員数などとし、実際の経済活動を反映させます。
現在の国際課税制度では、多国籍企業の子会社は独立企業とみなされ、居住地国から別々に課税されるため、低税率国の子会社へ利益を移して課税を逃れることが可能です。
経済協力開発機構(OECD)は多国籍企業の利益の一部を合算し、売上高に応じて各国に配分する新ルールを提案しています。合算課税の全面実施が求められます。
シックス・アイズ ■日米軍事一体化進む危険
米国・英国・カナダ・オーストラリア・ニュージーランドの機密情報網である「ファイブ・アイズ」に日本を加えてシックス・アイズにする構想のこと。米戦略国際問題研究所(CSIS)のアーミテージ元国務副長官らが提言しています。
前防衛相の河野太郎規制改革担当相も、「ゆくゆくはシックス・アイズにしていきたい」と意欲を示していました。
日本参加の背景には、日本が有している中国に関する軍事・経済情報の共有にあるといわれています。そのための態勢も「秘密保護法で、情報の保護が回り始めた」という専門家もいます。
米中軍事・経済対立の中で日米の軍事一体化がさらに進む危険があります。
情報セキュリティー ■進化し続ける脅威
情報セキュリティー10大脅威2020
情報の機密性、完全性、可用性を確保することです。機密性は認められた人だけが情報に接することができること、完全性は情報が破壊・改ざん・消去されないこと、可用性は必要なときに情報に継続的に接することができることを指します。
社会のデジタル化が進むにつれて情報セキュリティー被害も増えています。経済産業省所管の独立行政法人、情報処理推進機構(IPA)によると、2020年度の情報セキュリティー脅威の1位は個人向けで「スマホ決済の不正利用」、組織向けで「標的型攻撃による機密情報の窃取」でした。情報セキュリティーへの脅威は進化し続けており、IPAは「定期的に脅威と対策の検討を見直す」よう呼びかけています。
デジタル・ガバメント ■ルールづくり不可欠
行政サービスのデジタル化・ICT(情報通信技術)化を目指す政府の取り組みです。行政手続きのオンライン化をはじめ、マイナンバーカードを通じた個人情報の収集・利活用や地方自治体サービスのデジタル化と標準化などを含みます。菅義偉政権は推進の司令塔としてデジタル庁の9月発足を目指します。
利便性が強調されますが、個人情報の集約は人工知能(AI)による人物像の推定と格付け(プロファイリング)につながりかねません。自治体システムの標準化は行政サービスを政府想定の「鋳型」にはめ込み、住民要求を切り捨てる仕組みに転化しかねません。個人情報保護や行政サービス拡充など、国民利益を守るルールづくりが不可欠です。
デジタル庁創設に向けたデジタル改革関連法案準備室の職員に訓示を行う菅義偉首相=2020年9月30日(首相官邸ホームページから)
ESG投資 ■企業の成長と両立
企業などへの投資にあたって、どのくらいもうけているかという財務情報だけでなく、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の要素に果たしている企業の役割も配慮することです。
それぞれ、気候変動などへの対応をみる環境価値、社会への貢献などをみる社会価値、まともな企業経営かなどをみる企業価値とされます。従来の社会的責任投資(SRI)と比べて、企業の成長と両立させることをアピールする特徴があります。
ESGの視点を組み入れたものに国連の責任投資原則があり、日本の年金積立金管理運用独立行政法人が署名。順守状況を開示、報告する原則があります。
「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年1月5日付掲載
グローバル化、デジタル化。
6G(第6世代移動通信システム)の開発は、日本は中国やアメリカに遅れを取っています。
国際課税制度・ユニタリータックス(合算課税)で、多国籍企業の課税逃れを許さない。
情報セキュリティ、脅威から逃れるために細心の注意を。
行政サービスのデジタル化は、必ずしも便利になるものではありません。
そのなかでも、SDGs(持続可能な開発目標)が求められます。「誰一人取り残さない」がスローガン。
マイナポータル ■個人情報の民間提供も
政府が運営する個人專用のオンラインサービスのことで、行政手続きのオンライン申請や、行政機関などが保有する税、社会保障等の情報の確認が可能です。登録には、マイナンバーカードと対応できるスマートフォンやパソコン等が必要。
「本人同意」のもとにマイナポータルが持つ個人情報を民間企業に提供できる仕組みとなっており、政府は今後、学校、職場など生涯にわたる個人の健康等の情報をマイナポータル等に蓄積できるよう狙っています。
個人情報の漏えい、蓄積された情報を人工知能(AI)によって分析し個人の特徴を推定、選別するプロファイリングが広がる危険があり、重大な人権侵害行為を引き起こす恐れがあります。
カーボンニュートラル ■再生エネ充実が課題
脱炭素ともいわれます。二酸化炭素などの温室効果ガスの産業などからの排出量と植物などによる吸収が同量になることです。吸収には、他の地域での温室効果ガスの排出権購入も含まれます。温室効果ガスの排出と吸収を差し引きで実質的にゼロにすることです。
菅義偉首相は「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年力ーポンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」としました。しかし、原子力発電所の活用も表明しています。
それまでの計画は、30年度までに13年度比26%減、50年度までに80%減にするというものでした。目標達成には、再生可能エネルギーによる発電の抜本的な充実が必要です。
ジョブ型雇用 ■コロナ禍で導入広がる
臭体的な仕事内容や必要な技術・資格を明記した職務記述書(ジョブディスクリプション)に基づいて人材を採用・雇用する制度です。一般的に職責と成果に応じて評価されます。欧米で主流の雇用形態です。年功序列や終身雇用を前提とした「メンバーシップ型雇用」と対比されます。
新型コロナウイルスの感染拡大を背景に、感染予防として職場以外で働くテレワークの利用が急速に拡大。社員の勤務状況を時間で管理できないとして、成果で評価する「ジョブ型」を導入する企業が増えました。
しかし「ジョブ型」が招く成果主義は、社員同士の競争やストレスの増大に加え、長時間労働や格差拡大を助長する危険性があります。
6G(第6世代移動通信システム) ■5Gに続く規格
第5世代移動通信システム(5G)のサービスが日本で昨年3月に始まったばかり。その次の第6世代移動通信システム(6G)の研究・開発が世界ですでに始まっています。
通信速度が飛躍的に高速化した5Gも数年後には、ネットワークに接続されるモノの数を処理できなくなると予想されます。そのため、6Gの実現に向けて、世界中の研究機関や企業が研究・開発を急いでいます。
6G規格はまだ、国際的に統一されていません。しかし、伝送情報量の上限は5Gの最低毎秒10ギガビットから毎秒100ギガビットへ増加、通信遅延は1ミリ秒から1ミリ秒未満へ低下、接続密度は100万台/平方キロメートルから1000万台/平方キロメートルへ増加するとされます。
SDGs(持続可能な開発目標) ■人権保護に重点
SDGs17の目標
1:貧困をなくそう
2:飢餓をゼロに
3:すべての人に健康と福祉を
4:質の高い教育をみんなに
5:ジェンダー平等を実現しよう
6:安全な水とトイレを世界中に
7:エネルギーをみんなに そしてクリーンに
8:働きがいも経済成長も
9:産業と技術革新の基盤をつくろう
10:人や国の不平等をなくそう
11:住み続けられるまちづくりを
12:つくる責任 つかう責任
13:気候変動に具体的な対策を
14:海の豊かさを守ろう
15:陸の豊かさも守ろう
16:平和と公正をすべての人に
17:パートナーシップで目標を達成しよう
持続可能な開発目標=Sustainable Development Goalsの頭文字をとった略称です。2015年の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」で掲げられました。
社会・経済・環境などの分野において30年までに政府や企業が達成すべき葺の目標(別項)と、それに関連する169の具体的な到達点が明記されています。
人権の尊重が中心テーマです。「誰一人取り残さない」をスローガンに、途上国の人々や女性・子どもなど社会的に弱い立場にある人々の人権保護に重点を置いています。
国連やその他の国際機関、各国政府だけでなく、企業、市民が目標実現に向けて積極的に貢献することが必要です。
ユニタリータックス ■税逃れ阻止の新ルール
多国籍企業の税逃れ阻止のために市民社会が提案する国際課税制度がユニタリータックス(合算課税)です。
各国にまたがる多国籍企業グループの子会社の利益を合算した上で、各国に配分し、各国政府が課税する方法です。配分の基準は資産、売上高、従業員数などとし、実際の経済活動を反映させます。
現在の国際課税制度では、多国籍企業の子会社は独立企業とみなされ、居住地国から別々に課税されるため、低税率国の子会社へ利益を移して課税を逃れることが可能です。
経済協力開発機構(OECD)は多国籍企業の利益の一部を合算し、売上高に応じて各国に配分する新ルールを提案しています。合算課税の全面実施が求められます。
シックス・アイズ ■日米軍事一体化進む危険
米国・英国・カナダ・オーストラリア・ニュージーランドの機密情報網である「ファイブ・アイズ」に日本を加えてシックス・アイズにする構想のこと。米戦略国際問題研究所(CSIS)のアーミテージ元国務副長官らが提言しています。
前防衛相の河野太郎規制改革担当相も、「ゆくゆくはシックス・アイズにしていきたい」と意欲を示していました。
日本参加の背景には、日本が有している中国に関する軍事・経済情報の共有にあるといわれています。そのための態勢も「秘密保護法で、情報の保護が回り始めた」という専門家もいます。
米中軍事・経済対立の中で日米の軍事一体化がさらに進む危険があります。
情報セキュリティー ■進化し続ける脅威
情報セキュリティー10大脅威2020
前年順位 | 「個人」向け脅威 | 順位 | 「組織」向け脅威 | 前年順位 | 新 | スマホ決済の不正利用 | 1 | 標的型攻撃による機密情報の窃取 | 1 |
2 | フィッシングによる個人情報の詐取 | 2 | 内部不正による情報漏えい | 5 |
1 | クレジットカード情報の不正利用 | 3 | ビジネスメール詐欺による金銭被害 | 2 |
7 | インターネットバンキングの不正利用 | 4 | サプライチェーンの弱点を悪用した攻撃 | 4 |
4 | メールやSMS等を使った脅迫・詐欺の手口による金銭要求 | 5 | ランサムウェアによる被害 | 3 |
3 | 不正アプリによるスマートフォン利用者への被害 | 6 | 予期せぬIT基盤の障害に伴う業務停止 | 16 |
5 | ネット上の誹諺(ひぼう)・中傷・デマ | 7 | 不注意による情報漏えい | 10 |
8 | インターネット上のサービスへの不正ログイン | 8 | インターネット上のサービスからの個人情報の窃取 | 7 |
6 | 偽警告によるインターネット詐欺 | 9 | IT機器の不正利用 | 8 |
12 | インターネット上のサービスからの個人情報の窃取 | 10 | サービス妨害攻撃によるサービスの停止 | 6 |
社会のデジタル化が進むにつれて情報セキュリティー被害も増えています。経済産業省所管の独立行政法人、情報処理推進機構(IPA)によると、2020年度の情報セキュリティー脅威の1位は個人向けで「スマホ決済の不正利用」、組織向けで「標的型攻撃による機密情報の窃取」でした。情報セキュリティーへの脅威は進化し続けており、IPAは「定期的に脅威と対策の検討を見直す」よう呼びかけています。
デジタル・ガバメント ■ルールづくり不可欠
行政サービスのデジタル化・ICT(情報通信技術)化を目指す政府の取り組みです。行政手続きのオンライン化をはじめ、マイナンバーカードを通じた個人情報の収集・利活用や地方自治体サービスのデジタル化と標準化などを含みます。菅義偉政権は推進の司令塔としてデジタル庁の9月発足を目指します。
利便性が強調されますが、個人情報の集約は人工知能(AI)による人物像の推定と格付け(プロファイリング)につながりかねません。自治体システムの標準化は行政サービスを政府想定の「鋳型」にはめ込み、住民要求を切り捨てる仕組みに転化しかねません。個人情報保護や行政サービス拡充など、国民利益を守るルールづくりが不可欠です。
デジタル庁創設に向けたデジタル改革関連法案準備室の職員に訓示を行う菅義偉首相=2020年9月30日(首相官邸ホームページから)
ESG投資 ■企業の成長と両立
企業などへの投資にあたって、どのくらいもうけているかという財務情報だけでなく、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の要素に果たしている企業の役割も配慮することです。
それぞれ、気候変動などへの対応をみる環境価値、社会への貢献などをみる社会価値、まともな企業経営かなどをみる企業価値とされます。従来の社会的責任投資(SRI)と比べて、企業の成長と両立させることをアピールする特徴があります。
ESGの視点を組み入れたものに国連の責任投資原則があり、日本の年金積立金管理運用独立行政法人が署名。順守状況を開示、報告する原則があります。
「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年1月5日付掲載
グローバル化、デジタル化。
6G(第6世代移動通信システム)の開発は、日本は中国やアメリカに遅れを取っています。
国際課税制度・ユニタリータックス(合算課税)で、多国籍企業の課税逃れを許さない。
情報セキュリティ、脅威から逃れるために細心の注意を。
行政サービスのデジタル化は、必ずしも便利になるものではありません。
そのなかでも、SDGs(持続可能な開発目標)が求められます。「誰一人取り残さない」がスローガン。