2021年展望③ 内政展望 コロナ禍の教訓踏まえ ケアに手厚い社会に
コロナ禍から国民の命と暮らしを守り抜き、その先にどんな新しい日本をつくるのか、2021「年はそのことが正面から問われる年になります。
新型コロナウイルスの感染拡大がおさまらず、「医療崩壊」の危機が現実のものとなりつつあります。事業と雇用の危機、困窮の広がりも極まっています。ところが菅政権は、無為無策と逆行ともいうべき対応をいまだに繰り返しています。
感染拡大抑止のための積極的な検査戦略をもたず、「自治体まかせ」を続けています。医療機関への減収補填(ほてん)を拒否し、医療の疲弊・逼迫(ひっぱく)をつくり、国民の命に直結する危機を招いています。
感染症対策の基本―「検査・保護・追跡」の抜本的強化とともに医療機関への減収補填を実現する必要があります。自粛要請は「十分な補償と一体に」の大原則を貫くこと、事業と、雇用、生活への支援を確立することが切実に求められています。
年末に閣議決定した21年度政府予算案でもコロナ感染拡大への対応は極めて不十分です。しかも、軍事費は5兆3422億円と過去最高額を計上する一方で、社会保障は高齢化の進展などによる「自然増」を1300億円削減するという冷酷な中身となっています。
政府はコロナ禍のもとでも、病床削減を進める「地域医療構想」の達成に固執。病院を統廃合や病床削減へと財政的に誘導する制度について今年の通常国会に関連法案を提出し、消費税財源をあてる計画まで立てています。
新型コロナ危機をつうじて破綻が明瞭になった新自由主義路線から根本的転換をはかり、暮らし・家計応援第一の政治をつくることが急務となっています。
目指すべきは、ケアに手厚い社会です。政府の責任で、医療・介護・障害福祉・保育など、ケア労働に携わる人々の待遇を抜本的に改善するとともに、社会保障削減政策を中止し、拡充への抜本的な転換をはかることが/求められています。
医療費窓口負担増などに反対する日本高齢期運動連絡会の座り込みに連帯する日本共産党の(前右から)伊藤岳参院議員、小池晃書記局長、笠井亮衆院議員=2020年12月2日、東京・霞が関
■医療
今年は政府が通常国会への法案提出をねらう75歳以上の医療費窓口負担増をめぐるたたかいも焦点となります。
菅政権が現在の原則1割負担から2割負担への引き上げをねらう対象は、単身世帯の場合で年収200万円以上。約370万人もの高齢者が該当します。
1割負担でも深刻になっている高齢者の受診控えが、コロナによる受診控えと重なって、命と健康をどう守るのかが問われています。このときに、窓口負担を引き上げるのは、受診控えに追い打ちをかける無慈悲な政策です。2割負担導入は撤回しかありません。
菅義偉首相は、「現役世代の負担上昇を抑える」ためだとしてきました。
しかし、老人医療費を有料化した1983年に老人医療費に占める割合が45%だった国庫負担を、後期高齢者医療制度が始まった2008年度には35%にまで引き下げるなど、現役世代に肩代わりさせる「共助」や高齢者自身に負担を求める「自助」の路線を強めてきたのは政府自身です。
現役世代の負担軽減というなら、少なくとも国庫負担を45%に戻し、国としての公的役割を果たすべきです。
「能力に応じた負担を」(首相)と言うのなら、受診抑制をもたらす窓口負担ではなく、税と保険料で大企業・富裕層にこそ求めるべきです。
■介護
度重なる介護報酬の引き下げにコロナ危機が追い打ちをかけ、介護事業所は経営面でも人手不足の面でもかつてない危機に立たされています。民間調査会社・東京商工リサーチは20年の介護事業所の倒産が過去最高を更新したと発表し、政府のコロナ対策や21年度の介護報酬改定しだいではさらに加速する恐れがあると指摘していました。
菅政権による介護報酬の21年度改定はわずか0・7%の引き上げにとどまりました。介護現場の危機を打開するにはあまりに程遠い水準です。
さらに厚労省は、グループホームや特別養護老人ホーム(従来型)の夜間の職員配置基準を緩める方向性を示しています。介護職員の勤務条件を悪化させるもので、介護の担い手不足がいっそう深刻になります。
全産業平均より月約8万円も給与が低い介護職の処遇を改善するためにも、介護報酬の基本報酬の大幅引き上げが必要です。
「5年かけずに今すぐ」「35人にとどまらず30人に」「中高にも少人数学級を」と訴える人たち=2020年12月17日、財務省前
■少人数学級
声をあげれば政治は動きます。長年閉ざされてきた少人数学級の扉が保護者や教職員、幅広い教育研究者などの運動によって開きました。政府は21年度から段階的に小学校全学年の学級編成を1学級35人以下にすると決定。通常国会に義務教育標準法の改正案を提出する予定です。小学校全学年での学級編成見直しは40年ぶりです。
一方、中学校や高校での少人数学級化は見送り。35人学級でもなお子ども一人ひとりに丁寧な教育を保障することはできず、感染症対策としても密集・密接が避けられません。規模もスピードも不十分です。
中学校・高校も含めて30人以下学級を早急に実現し、20人程度の学級へと進むことが必要です。通常国会での論戦と運動で、少人数学級に抵抗する財務省を包囲することが重要です。
「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年1月4日付掲載
コロナ禍のもと、医療や介護などケアに手厚い政治が求められています。
直接支援を渋っていた政府も、特別給付金、持続化給付金、雇用調整助成金のコロナ特例、家賃支援給付金などを実現してきました。
小学校の学級編成を40人から35人にする見直し。実に40年ぶり。現在61歳の僕の小学校のころは40人越えもあったと記憶があります。
いずれも、声を上げ続けてきた成果です。
コロナ禍から国民の命と暮らしを守り抜き、その先にどんな新しい日本をつくるのか、2021「年はそのことが正面から問われる年になります。
新型コロナウイルスの感染拡大がおさまらず、「医療崩壊」の危機が現実のものとなりつつあります。事業と雇用の危機、困窮の広がりも極まっています。ところが菅政権は、無為無策と逆行ともいうべき対応をいまだに繰り返しています。
感染拡大抑止のための積極的な検査戦略をもたず、「自治体まかせ」を続けています。医療機関への減収補填(ほてん)を拒否し、医療の疲弊・逼迫(ひっぱく)をつくり、国民の命に直結する危機を招いています。
感染症対策の基本―「検査・保護・追跡」の抜本的強化とともに医療機関への減収補填を実現する必要があります。自粛要請は「十分な補償と一体に」の大原則を貫くこと、事業と、雇用、生活への支援を確立することが切実に求められています。
年末に閣議決定した21年度政府予算案でもコロナ感染拡大への対応は極めて不十分です。しかも、軍事費は5兆3422億円と過去最高額を計上する一方で、社会保障は高齢化の進展などによる「自然増」を1300億円削減するという冷酷な中身となっています。
政府はコロナ禍のもとでも、病床削減を進める「地域医療構想」の達成に固執。病院を統廃合や病床削減へと財政的に誘導する制度について今年の通常国会に関連法案を提出し、消費税財源をあてる計画まで立てています。
新型コロナ危機をつうじて破綻が明瞭になった新自由主義路線から根本的転換をはかり、暮らし・家計応援第一の政治をつくることが急務となっています。
目指すべきは、ケアに手厚い社会です。政府の責任で、医療・介護・障害福祉・保育など、ケア労働に携わる人々の待遇を抜本的に改善するとともに、社会保障削減政策を中止し、拡充への抜本的な転換をはかることが/求められています。
医療費窓口負担増などに反対する日本高齢期運動連絡会の座り込みに連帯する日本共産党の(前右から)伊藤岳参院議員、小池晃書記局長、笠井亮衆院議員=2020年12月2日、東京・霞が関
■医療
今年は政府が通常国会への法案提出をねらう75歳以上の医療費窓口負担増をめぐるたたかいも焦点となります。
菅政権が現在の原則1割負担から2割負担への引き上げをねらう対象は、単身世帯の場合で年収200万円以上。約370万人もの高齢者が該当します。
1割負担でも深刻になっている高齢者の受診控えが、コロナによる受診控えと重なって、命と健康をどう守るのかが問われています。このときに、窓口負担を引き上げるのは、受診控えに追い打ちをかける無慈悲な政策です。2割負担導入は撤回しかありません。
菅義偉首相は、「現役世代の負担上昇を抑える」ためだとしてきました。
しかし、老人医療費を有料化した1983年に老人医療費に占める割合が45%だった国庫負担を、後期高齢者医療制度が始まった2008年度には35%にまで引き下げるなど、現役世代に肩代わりさせる「共助」や高齢者自身に負担を求める「自助」の路線を強めてきたのは政府自身です。
現役世代の負担軽減というなら、少なくとも国庫負担を45%に戻し、国としての公的役割を果たすべきです。
「能力に応じた負担を」(首相)と言うのなら、受診抑制をもたらす窓口負担ではなく、税と保険料で大企業・富裕層にこそ求めるべきです。
■介護
度重なる介護報酬の引き下げにコロナ危機が追い打ちをかけ、介護事業所は経営面でも人手不足の面でもかつてない危機に立たされています。民間調査会社・東京商工リサーチは20年の介護事業所の倒産が過去最高を更新したと発表し、政府のコロナ対策や21年度の介護報酬改定しだいではさらに加速する恐れがあると指摘していました。
菅政権による介護報酬の21年度改定はわずか0・7%の引き上げにとどまりました。介護現場の危機を打開するにはあまりに程遠い水準です。
さらに厚労省は、グループホームや特別養護老人ホーム(従来型)の夜間の職員配置基準を緩める方向性を示しています。介護職員の勤務条件を悪化させるもので、介護の担い手不足がいっそう深刻になります。
全産業平均より月約8万円も給与が低い介護職の処遇を改善するためにも、介護報酬の基本報酬の大幅引き上げが必要です。
「5年かけずに今すぐ」「35人にとどまらず30人に」「中高にも少人数学級を」と訴える人たち=2020年12月17日、財務省前
■少人数学級
声をあげれば政治は動きます。長年閉ざされてきた少人数学級の扉が保護者や教職員、幅広い教育研究者などの運動によって開きました。政府は21年度から段階的に小学校全学年の学級編成を1学級35人以下にすると決定。通常国会に義務教育標準法の改正案を提出する予定です。小学校全学年での学級編成見直しは40年ぶりです。
一方、中学校や高校での少人数学級化は見送り。35人学級でもなお子ども一人ひとりに丁寧な教育を保障することはできず、感染症対策としても密集・密接が避けられません。規模もスピードも不十分です。
中学校・高校も含めて30人以下学級を早急に実現し、20人程度の学級へと進むことが必要です。通常国会での論戦と運動で、少人数学級に抵抗する財務省を包囲することが重要です。
「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年1月4日付掲載
コロナ禍のもと、医療や介護などケアに手厚い政治が求められています。
直接支援を渋っていた政府も、特別給付金、持続化給付金、雇用調整助成金のコロナ特例、家賃支援給付金などを実現してきました。
小学校の学級編成を40人から35人にする見直し。実に40年ぶり。現在61歳の僕の小学校のころは40人越えもあったと記憶があります。
いずれも、声を上げ続けてきた成果です。