労働講座 きほんのき② 「三六協定」 長時間残業招く 抜け穴
会社が労働者に残業(時間外労働)してもらうためには、労使が結ぶ「三六(さぶろく)協定」が必要だというのをご存じですか。「三六協定」とは何でしょうか。
日本では、残業が当たり前のようになっていますが、これは会社が自由勝手に労働者に命じることができるわけではありません。
本来、労働者を週40時間、1日8時間を超えて労働させてはならないことになっています。労働基準法32条では、「これを超えて労働させてはならない」と明記されています。違反すれば、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられます(同119条)。
しかし現実は、「過労死」するような長時間残業が横行しています。それは合法的に残業が可能になる仕組みがあるからです。
会社が、過半数の労働者で組織している労働組合(ないところは過半数を代表する者)と書面で協定を結び、労働基準監督署に届け出れば、労働時間の延長、休日労働をさせることができます。これを定めているのが36条で、これにもとつく労使協定なので「三六協定」といいます。
8時間が建前に
こうした手続きをすれば、会社は労働時間を延長して労働者を働かせても処罰の対象になりません。こういう仕組みで「8時間労働」という本来の原則が建前だけになり、残業をプラスした長時間労働が当たり前になっています。
「三六協定」で許される残業時間については、厚生労働省が「週15時間」「月45時間」「年360時間」などの「限度基準」を定めています。これは企業が守るべき目安ですが、法的拘束力はありません。
しかも臨時的な「特別な事情」が生じたときのためといって「特別条項」付きの三六協定を結べば、1年のうちの半分(6回)の期間について、「限度基準」を超えて残業させてもいいとしています。
この「特別条項」には時間制限がなく、青天井で残業させることが可能です。これを活用して経団連の榊原定征会長の出身企業である東レが月100時間など、多くの大企業が月80時間超の協定を結んでいます。
過労死するまで
この「三六協定」をめぐって政府の「働き方改革実現会議」が3月28日、時間外労働の上限について実行計画をまとめました。
原則として残業は「月45時間、年360時間」までとしています(週の基準がありません)。
ところが特例があって、「臨時的な特別な事情」があれば「年720時間(月平均60時間)」まで認めます。これには休日労働の分が含まれておらず、休日労働を含めると最大年960時間(毎月80時間)まで残業させることができます。
さらに年720時間内で「一時的に事務量が増加」する場合(いわゆる繁忙期)には「1カ月で最大100時間未満」「2~6カ月平均で80時間以内」の残業を認めます。これは、厚生労働省が定めている過労死の労災認定基準(過労死ライン。休日労働を含む)と同じ水準です。
「原則」で残業をきびしく制限するようにみせて、実際は「特例」で抜け穴だらけとなっており、「過労死するまで残業せよ」という異常な内容です。(随時掲載)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年4月12日付掲載
今までは「青天井」だったのが、一様規制を設けるっていうから良くなるように見えるが大間違い。
三六協定で結ばれている基準(民間)が、法律(公的)の基準になる。
会社が労働者に残業(時間外労働)してもらうためには、労使が結ぶ「三六(さぶろく)協定」が必要だというのをご存じですか。「三六協定」とは何でしょうか。
日本では、残業が当たり前のようになっていますが、これは会社が自由勝手に労働者に命じることができるわけではありません。
本来、労働者を週40時間、1日8時間を超えて労働させてはならないことになっています。労働基準法32条では、「これを超えて労働させてはならない」と明記されています。違反すれば、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられます(同119条)。
しかし現実は、「過労死」するような長時間残業が横行しています。それは合法的に残業が可能になる仕組みがあるからです。
会社が、過半数の労働者で組織している労働組合(ないところは過半数を代表する者)と書面で協定を結び、労働基準監督署に届け出れば、労働時間の延長、休日労働をさせることができます。これを定めているのが36条で、これにもとつく労使協定なので「三六協定」といいます。
8時間が建前に
こうした手続きをすれば、会社は労働時間を延長して労働者を働かせても処罰の対象になりません。こういう仕組みで「8時間労働」という本来の原則が建前だけになり、残業をプラスした長時間労働が当たり前になっています。
「三六協定」で許される残業時間については、厚生労働省が「週15時間」「月45時間」「年360時間」などの「限度基準」を定めています。これは企業が守るべき目安ですが、法的拘束力はありません。
しかも臨時的な「特別な事情」が生じたときのためといって「特別条項」付きの三六協定を結べば、1年のうちの半分(6回)の期間について、「限度基準」を超えて残業させてもいいとしています。
この「特別条項」には時間制限がなく、青天井で残業させることが可能です。これを活用して経団連の榊原定征会長の出身企業である東レが月100時間など、多くの大企業が月80時間超の協定を結んでいます。
過労死するまで
この「三六協定」をめぐって政府の「働き方改革実現会議」が3月28日、時間外労働の上限について実行計画をまとめました。
原則として残業は「月45時間、年360時間」までとしています(週の基準がありません)。
ところが特例があって、「臨時的な特別な事情」があれば「年720時間(月平均60時間)」まで認めます。これには休日労働の分が含まれておらず、休日労働を含めると最大年960時間(毎月80時間)まで残業させることができます。
さらに年720時間内で「一時的に事務量が増加」する場合(いわゆる繁忙期)には「1カ月で最大100時間未満」「2~6カ月平均で80時間以内」の残業を認めます。これは、厚生労働省が定めている過労死の労災認定基準(過労死ライン。休日労働を含む)と同じ水準です。
「原則」で残業をきびしく制限するようにみせて、実際は「特例」で抜け穴だらけとなっており、「過労死するまで残業せよ」という異常な内容です。(随時掲載)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年4月12日付掲載
今までは「青天井」だったのが、一様規制を設けるっていうから良くなるように見えるが大間違い。
三六協定で結ばれている基準(民間)が、法律(公的)の基準になる。