シリーズ 原発の深層 第三部・差別と抑圧超えて⑥ 専門家の英知集めて
京都市にある立命館大学国際平和ミュージアム。安斎育郎名誉館長は2009年に、「東大医学部での嫌な時代を思い出させる事件が起こった」といいます。
体質変わらず
同ミュージアムで活動している市民ボランティアの会が、恒例の「安斎育郎先生と行く平和ツアー」で、福井県の高浜原発の見学会を計画した際のことです。実施直前になって、関西電力の担当者が、「安斎さんは原発に激しく反対されてきた方だと分かったので、今回の見学はお断りしたい」といってきたのです。
交渉に当たった同会の岡田知子さん(66)は怒り心頭に発し、抗議しました。
「安斎先生が原発に批判的だという一点で拒否するのは、個人の思想信条の自由に反する。電力利用者に公平に公開すべきです」
翌日、関電の担当者から「昨日は私の個人的判断で動き、所長に叱られました。謝罪にうかがいたい」と一転して見学許可の電話が。後日、謝罪にきた担当者に同会は「見学許可は思想で判断しない。この基準は今後も変わらない」と明言させました。
安斎さんは、「批判者は徹底的に拒絶、差別して垣根の向こうに追いやるという“原子力村”の体質は変わっていなかったんだなと思いました」と語ります。

安斎育郎さん(左上)と、安斎さんの講演に耳を傾ける参加者=9月23日、静岡県焼津市
原発事故発生後の4月15日、東大原子力工学科1期生の同期会が東京で開かれることになっていました。
安斎さんは、事故の収束もままならないことから、延期を提案。「みなさんは私などよりはるかに深く政府の機関とも関係があるはずだから、事故を収めるためにやれることをやってほしい」と伝えました。
後日、同じ1期生の齋藤伸三元原子力委員長代理が、原子力利用を推進してきた専門家16人で「福島原発事故についての緊急建言」を政府に提出したと伝えてきました。
「建言」は、今回の事故について「国民に深く陳謝いたします」と述べ、日本の専門的英知の結集や国をあげた体制の構築を求めるものでした。
研究者の役割
安斎さんは、「日本では多数の学者が原発推進のお墨付きを与える係とされ、批判者は抑圧され、一顧だにされなかった。これがこの国の原発政策を破局に向かわせたと感じます」と語ります。
「そのことを反省し、原発に批判的な学者でも自由にモノが言え、政府も真面目に対応するという体制が必要不可欠です。事故の収束、除染、廃炉は一大事業。研究者が、今こそ英知を結集し役割を発揮すべきときです」(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2011年11月5日付掲載
原発事故の収束、除染、廃炉は国家を挙げた一大事業になります。今まで、原発を推進してきた研究者も、批判的だった研究者も、一致結束して国難に対処していかないといけないと思います。
そのための体制を、国は党派の違いを超えて造って行く必要があると思います。
京都市にある立命館大学国際平和ミュージアム。安斎育郎名誉館長は2009年に、「東大医学部での嫌な時代を思い出させる事件が起こった」といいます。
体質変わらず
同ミュージアムで活動している市民ボランティアの会が、恒例の「安斎育郎先生と行く平和ツアー」で、福井県の高浜原発の見学会を計画した際のことです。実施直前になって、関西電力の担当者が、「安斎さんは原発に激しく反対されてきた方だと分かったので、今回の見学はお断りしたい」といってきたのです。
交渉に当たった同会の岡田知子さん(66)は怒り心頭に発し、抗議しました。
「安斎先生が原発に批判的だという一点で拒否するのは、個人の思想信条の自由に反する。電力利用者に公平に公開すべきです」
翌日、関電の担当者から「昨日は私の個人的判断で動き、所長に叱られました。謝罪にうかがいたい」と一転して見学許可の電話が。後日、謝罪にきた担当者に同会は「見学許可は思想で判断しない。この基準は今後も変わらない」と明言させました。
安斎さんは、「批判者は徹底的に拒絶、差別して垣根の向こうに追いやるという“原子力村”の体質は変わっていなかったんだなと思いました」と語ります。

安斎育郎さん(左上)と、安斎さんの講演に耳を傾ける参加者=9月23日、静岡県焼津市
原発事故発生後の4月15日、東大原子力工学科1期生の同期会が東京で開かれることになっていました。
安斎さんは、事故の収束もままならないことから、延期を提案。「みなさんは私などよりはるかに深く政府の機関とも関係があるはずだから、事故を収めるためにやれることをやってほしい」と伝えました。
後日、同じ1期生の齋藤伸三元原子力委員長代理が、原子力利用を推進してきた専門家16人で「福島原発事故についての緊急建言」を政府に提出したと伝えてきました。
「建言」は、今回の事故について「国民に深く陳謝いたします」と述べ、日本の専門的英知の結集や国をあげた体制の構築を求めるものでした。
研究者の役割
安斎さんは、「日本では多数の学者が原発推進のお墨付きを与える係とされ、批判者は抑圧され、一顧だにされなかった。これがこの国の原発政策を破局に向かわせたと感じます」と語ります。
「そのことを反省し、原発に批判的な学者でも自由にモノが言え、政府も真面目に対応するという体制が必要不可欠です。事故の収束、除染、廃炉は一大事業。研究者が、今こそ英知を結集し役割を発揮すべきときです」(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2011年11月5日付掲載
原発事故の収束、除染、廃炉は国家を挙げた一大事業になります。今まで、原発を推進してきた研究者も、批判的だった研究者も、一致結束して国難に対処していかないといけないと思います。
そのための体制を、国は党派の違いを超えて造って行く必要があると思います。