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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

20歳のJリーグ⑥ 選手の地位と権利 サッカー発展の土台

2012-05-20 14:21:31 | スポーツ・運動について
20歳のJリーグ⑥ 選手の地位と権利 サッカー発展の土台

大学サッカー部で活躍した選手の進路選びに、異変が起きています。
Jリーグの誘いを受けた一部の4年生が、アマチュアの日本フットポールリーグ(JFL)の企業チームや教員の道を選ぶといいます。元日本代表の坪井慶介(浦和)、田代有三(神戸)両選手をはじめ、ロンドン五輪代表候補の永井謙佑選手(名古屋)らを送り出した福岡大学での話です。

引退後の不安
同大学サッカー部監督の乾真寛(いぬい・まさひろ)さんは、卒業生の選択に理解を示します。
「いまのJリーグはプロ選手の職業として魅力に欠ける。大卒だと早ければ25歳、よくても30歳で引退する。結婚して子どももできる時期なのに、その後の人生を支える蓄えが残らない」
Jリーグには現在、40クラブに千人を超す選手たちが所属しています。しかし、プロ野球よりも選手寿命が短く、毎年約1割強が戦力外通告を受けています。
プロ野球と違い、1億円プレーヤーはほとんどなく、新人の年俸の上限は480万円。Jリーグ2部(J2)では、200万~300万円の選手も少なくありません。引退しても安定した職に就くのは容易でなく、資格や学歴を得るために大学に進学するケースも増えています。
日本プロサッカー選手会(藤田俊哉会長)は、第二の人生(セカンドキャリア)を支える保障制度の実現を重視しています。現状では資金が乏しく、わずかな退団一時金しか出せません。Jリーグがセカンドキャリア支援部門を縮小したことも、背景にあります。
イングランドは1980年から退職金制度を設け、選手の教育・職業訓練に50%から100%の教育訓練費を援助するしくみがあります。年金・退職金制度の確立と支援の充実は、Jリーグ全クラブの選手会から強い要望が出されています。
心もとない保障への不安は、本分であるプレーに及ぶおそれもあります。サッカージャーナリストの大住良之さんは、「一番問題なのは、(大けがを負った場合に)保障がないとなったら、勇気をもって飛び込むことができなくなること」と、レベルの低下を心配します。
いまのJリーグは、選手の権利が脅かされかねない事態もはらんでいます。
クラブとの契約や移籍などで問題が発生した場合、現状ではJリーグの裁定委員会が判断を下します。しかし、その委員を選ぶ権限はJリーグの側が持っています。選手会は選手側の委員も選出できるよう、公平な人選を求めています。
日本プロサッカー選手会の前身であるJリーグ選手協会の元事務局長で、国際サッカー連盟(FIFA)の紛争解決にもかかわった上田浩さんは、首をかしげます。
「FIFA紛争解決室は、選手側の委員を国際プロサッカー選手会が選び、各国・地域連盟側の委員と半々で構成していた。公平性を保てというのがFIFAの設置基準。日本の裁定委員会のあり方は明らかにおかしい」



選手会が主催した被災地支援の慈善試合で、声援に応える日本代表の香川真司(中央)、内田篤人(左端)両選手ら=2011年12月23日、仙台市

労組化を決議
選手会は昨年2月末、労働組合化を決議しました。協調路線を重んじて労組化を控えてきたこれまでの立場を転換しました。
労組化の発表文書は、「主要国の選手会は労働組合であり、各国の協会・リーグと選手会が対話し、尊重し合うことにより自国の代表チームとリーグを強化し、サッカー文化を発展させている」と紹介。日本サッカー界を向上させるパートナーとして、対等な立場で話し合う必要性を強く打ち出しています。
元プロ野球選手・古田敦也さんの代理人をつとめた辻口信良弁護士(スポーツ問題研究会代表)は、労組プロ野球選手会の例をあげて歓迎します。
「プロ野球は労組化によって選手の権利意識が高まっただけでなく、球界の利益に対する自覚と主体性が高まった。労組化がいい意味の緊張感をもたらし、サッカー界もさらにリスペクト(尊敬)される存在になるのではないか」
(おわり)
(勝又秀人、呉紗穂が担当しました)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2012年5月16日付掲載


プロサッカーもやっと労組ができたのですね。歓迎です。
野球と違ってプロサッカーの場合は選手寿命が短いんですね。その分、引退後は後進の養成のためにその技量を発揮していただく機会を増やして欲しいですね。

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20歳のJリーグ⑤ クラブ経営 数字とともに理念も

2012-05-20 14:10:01 | スポーツ・運動について
20歳のJリーグ⑤ クラブ経営 数字とともに理念も

昨年8月下旬。リーグ戦たけなわの時期に、熱気がしぼむようなニュースが伝えられました。
Jリーグ1部(J1)で経常赤字のクラブが、2009年度の5から10年度は9に増加1。そんな厳しい経営状況を、Jリーグが発表しました。Jlの半数に及びます。

40クラブ共存
現状を打開しようと、Jリークはクラブライセンス制度を今季から施行しました。経営健全化のための基準を設け、場合によっては参加資格を剥奪します。
Jリーグのクラブライセンス事務局アシスタントチーフの岩本鴨(みつる)さんは、経営改善の指導と相談役として各地に足を運びます。細かい財務資料の提出を求めると、難色を示すクラブも。説明を重ねて、応じてもらいます。
「各クラブの情報や悩みを共有して、課題を克服するためのコミュニケーションを欠かさないよう心がけている」と岩本さん。
リーグとして、クラブ経営に深くかかわる出発点となったのが、1998年の横浜フリューゲルス消滅問題でした。親企業・全日空が撤退したことで、クラブは短い歴史を終えました。
Jリーグはこうした事態を未然に防乙うと、翌年に「経営諮問委員会」を設置。しかし、外部有識者による諮問委員会では指導力に限界があり、大分や東京V(ともに09年)など、経営難に陥るクラブが相次ぎました。
そこで、ドイツ・プロリーグが実施し、繁栄につながったライセンス制度を手本に、Jリーグも導入に踏み出しました。
「40クラブが共存するためには、経営的に問題があるクラブはつくらない」と、岩本さんはリーグ共同体としての意義を語ります。経営難に陥ったクラブへの融資など、互助のしくみも残します。この姿勢は、球団の経営にまともな指導や援助ができないプロ野球コミッショナーとは対照的です。
一方で、同ライセンスの高いハードルによって、ひずみも生じています。




今季開幕のPRイベントで、クラブライセンス制度の意義を説いた大東チェアマン(前列中央)=3月2日、東京都内

身の丈とずれ
J2に今季から参入した町田ゼルビアは、1万人以上を収容する競技場を整備しなければ資格を奪われます。
町田市は市民合意が十分でないにもかかわらず、約50億円もの税金をつぎ込んで陸上竸技場と仮設メディアセンターの改修に着手。
工事のために市民マラソン大会が開けず、リーグ戦観戦者のための駐車場整備計画による環境破壊も懸念され、市民から抗議の声が上がっています。
今季のJ2は、1試合平均の観客数が5302人(13日現在)。町田は4000人台にとどまっています。1万人以上の競技場を求める基準は、かつて「身の丈の経営」を求めたJリーグの方針とずれています。
背景には、自国リーグの格を上げて影響力を高めるJリーグのアジア戦略があります。
現在、アジア・チャンピオンズ・リーグ(ACL)でJリーグの出場枠は4。
中韓の各3、豪州の2を上回ります。出場枠は過去の大会実績とともに、リーグやクラブの経営規模なども加味されます。
ACLで優勝すれば、クラブ世界一を決めるクラブ・ワールドカップ(W杯)に出場でき、クラブやリーグの商品価値も上がります。クラブW杯の開催地をめぐり、中東諸国と綱引きをしている実情も絡みます。開催国枠の特権があるからです。
今季開幕直前のPRイベントで、大東(おおひがし)和美チェアマンは同ライセンスが「世界とのたたかいをめざすうえで必要な基盤整備」と説明しました。しかし、背伸びしすぎた結果、足元がおぼつかなくなる事態は本末転倒です。
Jリーグ規約は「ホームタウンにおいて、地域社会と一体となったクラブ作り…に努めなければならない」と定めています。理念や実情にそくした制度の運用が求められます。
あるクラブの元幹部は、制度以前の問題点を口にします。
「社長が親会社からの出向組だから、2、3年で交代する。当然、目先のチケットの売れ行きばかりに目がいって、10年先の戦略が持てない」
企業スポーッを乗り越え、地域に根ざしたクラブづくりを打ち出したJリーグ。数字や規模だけでなく、理念を追求するクラブ経営に向けて、知恵と力をつくすときです。(つづく)

【クラブライセンス制度】
増える赤字体質のクラブをなくそうと、Jリーグがクラブの財政などを審査する制度。基準は①競技②施設③人事体制・組織運営④法務⑤財務の五つ。全部で56項目に及びます。施設ではJ1が「1万5千人以上」、J2は「1万人以上」収容の競技場設置、財務では「3期連続で赤字にならない」「14年度以降、債務超過にならない」ことが盛り込まれ、達成できないとライセンスが交付されません。今季から審査対象。

「しんぶん赤旗」日刊紙 2012年5月15日付掲載



プロ野球と違って40ものチームがあるプロサッカー。それを支えているのは地元の企業やサポーターの方々です。
だから赤字経営にならないような「身の丈」にあったような運営が求められていると思いますね。
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20歳のJリーグ④ 若手育成・強化 “自前でプロ”の志を

2012-05-14 21:27:35 | スポーツ・運動について
20歳のJリーグ④ 若手育成・強化 “自前でプロ”の志を

この春、日本サッカー協会(JFA)アカデミー福島の1期生のある男子選手が、Jリーグ入りでなく、大学進学の道を選びました。
「出番がないJリーグよりも、大学で試合に出たほうがいい経験になる。そこで自信をつけてからプロに進みたい」という判断でした。すでに首都圏の大学サッカー部で、日々の練習に励んでいます。
同アカデミーは、サッカー協会直轄のエリート育成機関として2006年に開校しました。男子の1期生15人のうち、Jリーグ入りは3人。残りは大学進学と海外へのサッカー挑戦がほぼ同数となっています。




表2ルーキー人数と出場機会なしの比率
出身母体J1・J2人数出場ゼロ選手数
大卒6212(19.4%)
高卒189(50%)
ユース出身3616(44.4%)
*ともに福岡大学提供


大卒頼み拍車
プロ入りが少数にとどまったのは、実力が十分でなかったというだけではありません。いまのJリーグのあり方にも、理由が隠されています。
Jリーグは、若手に実戦経験を積ませるためのサテライトリーグを2年前に廃止。レギュラーをとれない若手にとって、試合にのぞめる場はないに等しくなりました。
Jリーガーの出身母体をみると、近年は大卒頼みの現状に拍車がかかっています(表1)。Jリーグは発足時、各クラブにユースチームなどの育成機関の設置を義務付けましたが、ユース出身者は大卒、高卒に次いで3位にとどまっています。
福岡大学サッカー部監督で、全日本大学サッカー連盟の技術委員でもある乾真寛(いぬい・まさひろ)さんは、こんな注文をしています。
「せっかくプロ入りしても、Jリーグではプロとしての経験を積むことができない。大学がその肩代わりをしている。“自分たちの手でプロ選手を育てる”というJリーグのスタート時の志はどこへいったのか」
大学では、リーグ戦やカップ戦が毎年開かれ、選抜メンバーになれば国際大会で経験を積むこともできます。18歳からの4年間は、“若年層で最後の成長期”ともいわれる大事な時期。
長友佑都選手(インテル・ミラノ=イタリア)や、23歳以下日本代表の永井謙佑選手(名古屋)は、大学サッカーの環境で才能を伸ばしました。
各クラブで、昨年に公式戦の出場機会がなかった選手の出身母体を比較すると、大卒ルーキーがわずか
2割に満たないのにたいし、高卒が5割、ユース出身は4割以上にのぼりました(表2)。
「欧州では、若手を試合に出場させないまま『飼い殺し』にすることは、ほとんどありえない」と乾さんは語ります。
イングランドの名門アーセナルに所属する宮市亮選手(19)が好例です。
宮市選手は当初、各国のトップ選手がひしめくチーム内で出場機会に恵まれませんでした。しかし今年1月末、クラブが古豪ボルトンへの期限付き移籍を発表。宮市選手はプレーの場が広がった新天地で飛躍しています。



アーセナルからボルトンに期限付き移籍し、活躍の場が広がった宮市亮選手(ロイター)

代表成績に影
日本の若手選手の実戦不足は、各年代の代表の成績にも影を落としています。
原則23歳以下の選手でのぞむオリンピックでは、アテネ・北京大会ともに予選敗退。20歳以下のワールドカップは、2大会連続で出場を逃しています。
現状に危機感を抱いたJリーグは、「若年層プレーヤー改革プロジェクト」を09年に発足させました。これをもとに、「最強のチームで試合にのぞまなければならない」とする“ベストメンバー規定”をカップ戦などに限って緩和する策を打ち出しましたが、若手が出場できる場をさらに保障することが急がれます。
京都の監督時代にユースチームのための寮をつくるなど、育成部門に力を注いだ柱谷幸一さんは、クラブの姿勢を問います。
「移籍による獲得や大卒選手のスカウトばかりに強化費を注いでいるクラブもある。ユースなどの下部組織を生命線として位置づけ、5年後を見越した育成をしないといけない」
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2012年5月12日付掲載



チームが即戦力を望むのもわかりますが・・・。高卒やユース出身など「いわゆる金の卵」を育て上げるのもJリーグならではの魅力ではないでしょうかね。
広いサッカー層を作ってこそJリーグの未来はあるのではないでしょうか。
野球の場合はセ・パ合わせて12チームですが、サッカーの場合はJ1・J2で40チームにもなります。その下支えをするためにも、発想の転換が求められます。
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20歳のJリーグ③ 地域に根付く・文化の担い手つくる

2012-05-13 16:00:51 | スポーツ・運動について
20歳のJリーグ③ 地域に根付く・文化の担い手つくる

「おつかれさまー」
Jリーグ2部(J2)ヴァンフォーレ甲府の本拠地スタジアムは、顔見知りの観客とボランティアが、笑顔で親しく言葉を交わす光景があふれています。
3月初旬の今季開幕戦の栃木SC戦。気温7度と冷え込み、背もたれのないベンチ式の座席にもかかわらず、競技場は1万人を超える観客の熱気に包まれました。J2の22クラブ中、入場者数の多さはナンバーワンです。
地元ゲームでは、約150人のボランティアが、入場券の販売や入場口での対応、会場案内、看板設営に走り回ります。ほかのクラブがうらやましがるほどです。
スタンドで座席案内をする田中克史さん(41)は、「知り合いの観客が新しい人を連れてきてくれるのがうれしい。好きなチームに少しでも貢献したい」。



今季J2開幕戦でスタジアムに集まった甲府サポーターの子どもたち=3月4日

小さな祭りも
甲府は、Jリーグが実施する観戦者調査で、「チームが地域に貢献しているから」を観戦理由にあげた人が、一昨年まで5年連続1位(J1・J2含む)でした。
調査を行った筑波大の仲沢真准教授は、「クラブが地域につくす本気度が、ボランティアの数に表れている」と説明します。
同クラブは、サッカー教室、地域の祭り、障害者施設・小児科病棟の訪問など、年150回以上の催しに選手やスタッフが足を運びます。甲府市に住むサボーターの今泉二歩(にほ)さん(40)は、「小さな催しにも選手が参加してくるから、『そんなにやって大丈夫?』と心配になる。でも、こうしてクラブが大きくなったんですね」と感心します。
甲府の海野(うみの)一幸社長は、「もともとJリーグの理念が『地域密着』だから、貢献は当然のこと。
とくに甲府は、クラブの再建のときから、多くの人が支えてくれました。その恩返しです」と語ります。
J2に参加して2年目の2000年、クラブは経営危機に陥りました。このとき、サポーターらの存続署名や地元住民・企業の支援によって再建。チームは06年と11年にJl昇格を果たし、経営も黒字に転じました。
「地域の“重要無形文化財”をめざして、これからも市民クラブの模範でありたい」。海野社長は胸を張ります。

公益性を追求
地域密着の気風は、多くのクラブに根付いています。Jリーグ観戦者調査では、「Jクラブはホームタウンで大きな貢献している」と評価する人が全体で約8割にのぼります。Jリーグの「選手等ホームタウン活動調査」によると、J1・J2全選手の地域貢献活動は、08年の2220回から11年は3190回に増えています。
リーグ発足当初の地域貢献活動は、どのクラブもサッカー教室やサイン会が主でした。いまでは他競技の普及に始まり、障害者サッカー大会の開催、健康づくり教室・介護予防事業、学校での特別授業など、多様化しています。子どもたちと収穫した作物を、給食で一緒に食べるなどの地産地消の食育活動にも、いくつものクラブがとりくんでいます。
「地域貢献活動について、Jリーグがクラブにしっかりと情報提供し、いい意味で競わせてきた成果」と仲沢准教授。Jリーグは各クラブのホームタウン担当者による交流会議を、各地で毎年開いてきました。
Jリーグ在勤19年で、競技・事業統括本部ホームタウン担当者の青山優香さんは、感慨深げに語ります。
「当初は特別授業を持ちかけても、『プロの興行をしている人間が学校現場に入るのはもってのほか』という雰囲気でした。いまでは自然に受け入れられます。地元の財産として認識されてきた証しではないでしょうか」
企業の営業活動として地域戦略を位置づけただけでは、プロサッカーがここまで認知されることはありませんでした。地域密着と、豊かなスポーツ文化の振興を理念に歩んできた20年の道のりが、いまの盛況ぶりにつながっています。
仲沢准教授はいいます。
「プロスポーツは、その消費者だけでなく、文化の担い手が必要。地域の文化とスポーツ文化を維持し、向上させることがJリーグの責務です。地域貢献活動を通した公益性と公共性の発揮が、これからも求められます」(つづく)


「しんぶん赤旗」日刊紙 2012年5月11日付掲載


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20歳のJリーグ② 競技力向上 世界水準 カギは「質」

2012-05-12 20:21:54 | スポーツ・運動について
20歳のJリーグ② 競技力向上 世界水準 カギは「質」

いま、ひとりの日本人選手の動向が欧州サッカー界で大きな注目を集めています。ドイツ1部リーグでドルトムントを2季連続優勝に導いた香川真司選手(23)です。その移籍先の候補には、マンチェスター・ユナイテッド(イングランド)など欧州の名門クラブの名があがっています。
香川選手はセレッソ大阪に5シーズン在籍し、Jリーグをステップにして世界へ羽ばたきました。今季はドイツリーグで13得点をあげ、欧州でプレーした日本人の最多記録をつくりました。ひと足先に欧州屈指のビッグクラブ、インテル・ミラノ(イタリア)でプレーしている長友佑都選手(25)も、FC東京に4季所属しました。
2人をふくめて現在、欧州の主要リーグに20人の日本人選手が在籍。フォワードからゴールキーパーまで、各ポジションで役割を担っています。
世界で活躍する選手が増えてきたことで、代表チームの実力も向上しています。サッカーのワールドカップ(W杯)に、日本代表は1998年フランス大会から4大会連続で出場。2002年日韓大会と10年南アフリカ大会では16強入りしました。「日本サッカーの水準向上」を理念に掲げて始動したJリーグが、世界水準に近づきつつある証しです。
プロ化によって、選手の技術や自己管理の意識が飛躍的に高まり、練習方法も進歩しました。



ドイツ1部リーグでドルトムントを2季連続優勝に導き、優勝杯を掲げる香川真司選手(AFP時事)

指導者も育つ
98年から約5年間、Jリーグ専務理事をつとめた木之本興三さんは、日本人指導者を多く育てた成果に目を向けます。
「最初は『元代表』の肩書だけで監督になれたが、いまは指導者としての知識と経験を積み、激しい競争に勝ち抜かないと監督になれない」
Jリーグ発足当初の監督10人中、元日本代表選手は6人もいましたが、今季開幕時のJリーグ1部(J1)では、18人中3人にとどまりました。Jリーグの監督資格を持つ日本サッカー協会公認のS級ライセンス保持者は350人を超えます。
しかし、こうした進歩に満足しているわけにはいきません。中国は94年、豪州は04年、カタールは08年にプロリーグを立ち上げ、力をつけています。アジアのクラブ王者を決めるアジア・チャンピオンズ・リーグ(ACL)で、日本勢は08年のガンバ大阪を最後に優勝から遠ざかっています。
日本サッカー協会の原博実・強化担当技術委員長は「海外の有力選手が中東などのリーグにとられてしまっている」と危機感をつのらせます。
京都や山形、栃木の監督をつとめた柱谷幸一さんは、Jリーグの試合の質について注文します。
「多くの試合で、引いて守るサッカーが目立つ。夏をはさんだリーグ日程も影響しているが、監督やクラブが試合内容よりも結果にこだわりすぎているのが問題だ」


■プレーの質に見るJリーグ
 2009年2010年2011年
アクチュアル・プレーイング・タイム(実際のプレー時間)56.08分54.43分54.39分
1試合平均の反則数33.9回33.5回31.1回
1試合平均の警告数3.30枚3.16枚3.21枚


試合の魅力減
昨季の平均入場者数は前年比で約14%減。東日本大震災による影響もありますが、Jリーグの調査によると、昨季観戦しなかった個人的な理由の第1位は「試合が面白くなくなった」でした。
試合の魅力を表す指標の一つである「アクチュアル・プレーイング・タイム」(実際にプレーが動いている時間)は年々減少(表参照)。ここ数年は、1試合平均で30回以上の反則行為によって試合が中断され、3枚以上の警告(イエローカード)が出る状況が常態化しています。実動時間の低下と反則の多さは、選手の技術向上にとってもマイナスです。
Jリーグは今季、フェァで魅力的な試合を提供しようと、「Jリーグ試合憲章」を定め、全選手と監督が署名しました。内容は①審判や相手を尊重する②見苦しい行為や遅延行為をしない―というものです。
「各クラブは、勝利、試合内容、フェアプレーの三つを一致させることが大切」と柱谷さん。原技術委員長は「観客の期待に、アグレッシブ(攻撃的)でひたむきなプレーでこたえる“プロの原点”に立ち返ってほしい」と語ります。
Jリーグを支える各クラブの姿勢と、選手の向上心が、今後の発展のカギを握っています。(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2012年5月10日付掲載



面白い試合を見せてくれる事、真剣勝負を見せてくれる事。
サッカーはプロ野球とは違ったスリリングさが楽しめます。それに応えて欲しいものですね。
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