黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『神国崩壊 探偵府と四つの綺譚』獅子宮敏彦(原書房)

2009-06-23 | 読了本(小説、エッセイ等)
中原に君臨する華王朝の都・紫京。
その王朝には、事件が起こったときには知力だけで解決する捜査機関・探偵府が存在した。
設立以来代々、その探偵府で長官職を拝命してきた利家。その職に就いていた父・利聡が亡くなった為、留学先である西遙から戻り、郷里で喪に服していた息子の利春は、至急上京するようにとの勅命を受け、紫京へとやってきた。
そこでたまたま男たちに絡まれている老人と女性2人を助けるが、彼らは利家に代々仕えている“爺”と、利春の助手とすべく雇われた朱炎と朱光だった。
そんな彼らが調べることになった事件は、皇帝の側近である甲貴藩王・朝栄達が殺害された事件。
書狂であった彼は、歴史から消された出来事をまとめた<禁書>を保管していたといい、彼の死にはそれらが関わっているらしい。それは“コウライレンジャ(後雷輦邪)”という利家の先祖が著した書物で、彼らはその書物を読むべく、かつての都である廃京へと向かう。

冥王朝の末期。暴君であった皇帝・黒陵王に反逆し起きた、後天神国の乱。
それにより成立した後天神国では、神王の下に春夏秋冬の四天公がいて補佐していたが、秋天公は戦いの中で亡くなり、夏天公は叛乱の後に鎮圧され、まだ幼い神王が跡を継いだ。
秋天公の妹で、夏天公の妃となっていた優蛾は殺されることなく、金妃として、銀妃、銅妃と共に小神王に召し上げられていた。
しかし三妃の存在を快く思わない諸侯は処刑するように言い出し、彼らを納得させる為、神水による裁き“水裁”が行なわれることに。しかし同じ水に浸かった金妃は無事で、銀妃銅妃は亡くなり……“神国崩壊”(後)、
東方世界ではジャガンが猛威を振るい、ダルディアの教皇圏にも迫る勢い。特使に任じられた修道僧・キプカは、弟子のバヤと共にジャガンの王アドバに真意を確かめるべく、マテンドーラで謁見。そこで彼らは、“神の迎え木”という木に、人が生贄として突き刺されている不思議な光景を目撃する。
その後キプカは援軍を要請すべく戻り、1年後に再び戻った。しかしその街では、塀に囲われ、外扉が閉ざされたまま人々が皆殺しにされていて……“マテンドーラの戦い”(雷)、
雷王朝。第六代・騎恭の御世。
紗州の胡義にいた黄徳と喬雲、騒飛と義兄弟の盟約を結び、決起するもその成果は捗々しくなかった。
そんな中、僻南見物にやってきた彼らは、盗賊退治に力を貸して欲しいと人を集めている男・如知康に出逢い、力を貸すことに。しかし男が実際に倒したいのは、豊郵…都から派遣されてくる監督官だと聞いた人々は、次々にその場を去り、残ったのは黄徳たちと、暗殺者として名高い女・妖輦火と全身を白い布で覆った列媒、にやけた男・牙亮だけ。
そんな彼らは、殺害されたと思われていた黒陵王の遺児・絽陣が住む島・永冥島に。ところが、絽陣と如知康が何者かに殺害され、女とも読めるダイイングメッセージが……“輦の誕生”(輦)、
トリポル海の北東沿岸のアムダリ地方のクプラという町で暮らしていた少年・キト。邪巌髑斗が新都・銅羅を建設する為の人夫として父が連れて行かれた後、母は亡くなり、キトは父を探して旅をする中で、ルオンの民であるゼラムたちと行動を共にするように。
そして3年が過ぎ、キトが16歳になったある日、ゼラムたちが何者かに皆殺しに遭い、たまたま眠れずに出歩いていたキトだけが生き残った。そんな時、ダルディアの聖女であるシレアに出逢い、彼女に心酔するようになって……“帝国擾乱”(邪)

それら4つの<禁書>に隠された秘密とは……

中国風世界を舞台に、探偵府の若様・利春たちが側近殺人事件の捜査に挑むミステリ。4つの禁書が作中作になっていて、そちらでもそれぞれに神業的とも思えるミステリが繰り広げられています。
どちらかというと作中作の方がインパクトが強いので、利春たちの存在感が今ひとつ(笑)。
でも面白そうなキャラクタたちではあるので(若干ラノベ風)、続編に期待したいです。

<09/6/23>