仮 定 さ れ た 有 機 交 流 電 燈

歴史・文化・環境をめぐる学術的話題から、映画やゲームについての無節操な評論まで、心象スケッチを連ねてゆきます。

やまとは国のまほろば:『鹿男あをによし』

2008-01-20 12:20:35 | テレビの龍韜
今週は、とにかく授業の終了へ向けて一気に駆け抜けた感がある。特講は最終章の「鎌足の鎌」に入り、全学共通日本史は「樹霊婚姻」の核心に入ってきた。ともに、あと1回でなんとか結びにしなければならない。水曜は教授会に学生生活委員会、金曜は留学生の奨学金面接があった。学究の情熱に燃えて日本に渡ってきた彼らが、物価の高さに翻弄され、生活費と学費を稼ぐだけで消耗してゆく姿に心が痛む。

19日(土)は、世間的にはセンター入試だが、わが史学科では卒業論文の発表会があった。いつもはさして盛況ではない会だが、今年は下級生の意識が高かったのか、教室いっぱいに座りきれないくらいの学生が詰めかけ、なかなか結構なことであった。古代史ゼミからはTさんが代表で参加、トップバッターで緊張していた様子だったが、立派に報告を終えた。
ところで、出勤途中のバスのなかで面白いことがあった。ぼくの座っていた席の後ろに、父母子3人が腰かけていたのだが、小学校低学年くらいの男の子が、しきりに父親に質問している声が耳に入ってくる。どうやら元号について訊いているらしい。「昭和は何年まであったの?」「64年。64年の1月の初めに、平成に変わったんだよ」「明治は何年まで?」「大正は何年まで?」……質問は繰り返されたが、じゃあそもそも元号とは何なのか、という話になってきたとき、父親が(いい意味で)びっくりするような答えを口にした。「元号っていうのは、そもそも中国の制度を日本が輸入したんだけど、王様が時間を支配していることを表すものなんだ」。う~ん、立派だ! 話の内容からすると40そこそこの人だったけど、これは堅気の答えじゃないですよ。学校の先生かなんかですかね、同業者だったりして(……とここまで書いて思いついたことがあったので確認したら、本当に同業者である可能性が高くなってきた。恐ろしい)。

それはともかく、今週は古代史・神話をモチーフにしたテレビ・ドラマが始まった。いわずと知れた、『鹿男あをによし』である。ちょうど1年前にこのブログでも紹介したことのある、万城目学の小説の映像化だ。さして長くはない物語を引き延ばすため、脇役に過ぎなかった日本史の先生「藤原君」を綾瀬はるか演じる女性に変え、主人公・マドンナ・堀田イト(しかし最近は、何かっていうと多部未華子だね)に絡めて複雑な関係を作り出そうとしているようだが、原作の味はよく保ったまま(まあ異論はあるだろうが)スケールを大きくすることにも成功している。学校や下宿のセットなどは凝ったもので、とくに町屋風の後者は「住みたくなる」くらいの出来。ロケによる初冬の奈良の風景も素晴らしく、とくに若草山からの遠望は「国のまほろば」を髣髴とさせる。一部で話題になっている(されている)鹿のロポットも、まあテレビサイズではいい出来だろう(CGはちょっとお粗末だが、許容範囲である)。ベテラン鈴木雅之の演出もテンポよく、映像も美しい。今季、NHKの『鞍馬天狗』(野村萬斎主演!)とともに、楽しみにしておきたいドラマである。……しかし、奈良の鹿と人間との関係を研究しているよしのぼり君は、どんな気持ちでこのドラマを観ているかなあ。
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