く~にゃん雑記帳

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<松谷茂・京都府立植物園名誉園長> 「樹木に見る、生き抜く戦略」

2014年01月26日 | 花の四季

【帝塚山大学の市民大学講座で講演】

 帝塚山大学考古学研究所・付属博物館(奈良市)共催の市民大学講座が25日に開かれ、京都府立植物園の前園長で現在名誉園長の松谷茂氏(京都府立大学客員教授)が「樹木に見る、生き抜く戦略」と題して講演した。松谷氏は光合成のための光の獲得や受粉、結実、種子の散布などで特徴的な樹木を紹介しながら、「植物には〝不思議〟と〝根性〟のDNAが詰まっている。わずかな太陽の光も逃すまいとする植物の生き方は(エネルギー問題に直面している)人間も見習うべきところが多いのではないか」などと話した。

   

 最初に挙げた樹木はスギ科の針葉樹「ヌマスギ(落羽松)」(下の写真㊧)。この木は地下の通気性が悪い湿地でも生きられるように、地上や水面に気根(呼吸根)を出して根に酸素を送る(昨年7月5日付ブログでも紹介)。ナンヨウスギ科の「ウォレミアパイン」(写真㊨)は上部の枝は上向き、中ほどは横向き、下部は下向きに伸びる。より多くの光を受け止めるためだ。恐竜時代の植物で絶滅したとみられていたが、20年前の1994年にオーストラリアで見つかった。このため日本では「ジュラシックツリー」とも呼ばれている。

 

 アカネ科のツル性植物「カギカズラ」(下の写真㊧)は葉の付け根にカギを下向きに付ける。カギは1本・2本・1本・2本……と規則的に並んでおり、ツルが風で揺れて周りの木の枝に触れるとカギが巻き付く。カギは成長し太くなって絶対に枝を離さず、ツルは上へ上へと伸びていく。アスナロは枝が垂れて地面に付くと、そこから根を出す。「伏条更新」と呼ばれるもので、アジサイも同じ性質を持つという。

 「花が咲くのは昆虫などを誘って受粉するためで、花を美しいと感じるのは人間だけ」。アジサイの1種「クレナイヤマアジサイ」は花を囲むガク片が白からピンク、さらに真っ赤に変化する。ピンクになったときに花が咲いて昆虫を誘う。チョコレートの原料になる「カカオ」(写真㊨)は花や実が幹から直接出る。これを「幹生花」「幹生果」と呼ぶ。「夜に咲く花は匂いで虫や鳥をおびき寄せる」。その1つとして「アフリカバオバブ」を挙げた。この樹木は肉が腐敗したような(松谷氏によればキャベツや白菜が腐ったような)独特な匂いで受粉を手伝ってくれるコウモリを誘う。

 

 種子の拡散方法にも巧妙な生き残り戦略が見られる。弾けて種を飛ばす〝自発的散布〟や〝風散布〟では親元ではなく遠くまで飛んでいって繁殖地を広げる。種に翼のような大きな羽根を付ける「アルソミトラ・マクロカルパ」はグライダー発明のヒントにもなったという。ナナカマドやウメモドキなどの赤い実は鳥が食べて種だけ排泄してくれる。「排泄までの時間はおよそ10分から20分。このため種は親元から少し離れたよく似た環境の地面に落ちる。しかも発芽を抑制していた果肉が取れるので芽も出やすくなる」。

 松谷氏は「人間が植えた植物は水をやったり支柱を立てたり面倒を見ないと育たない。だが、自然界の樹木は常にバトルの連続の中で生存競争を続けており、そう簡単にはくたばらない強い性質を持っている」と話していた。(植物写真の撮影場所は「ヌマスギ」が大阪市立大学理学部付属植物園、その他の3点は京都府立植物園)


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