く~にゃん雑記帳

音楽やスポーツの感動、愉快なお話などを綴ります。旅や花の写真、お祭り、ピーターラビットの「く~にゃん物語」などもあるよ。

<BOOK> 「アジア実力派企業のカリスマ創業者」

2012年08月17日 | BOOK

【近藤伸二著、中央公論新社刊】

 帯のタイトルに「彼らが成長し、我らが衰退する理由」。彼らはアジアの元気あふれる企業経営者、我らは「失われた20年」の中ですっかり影が薄くなった日本の企業経営者を指す。今年2月、京セラの稲盛和夫名誉会長は講演「日本の経済社会の再生と国家のあり方」の中で、日本の経営者に必要なのは「『絶対に負けるものか』というガッツ、つまり『燃える闘魂』を持つことだ」と強調したという。本書からもバイタリティーあふれるアジアの企業創業者8人の奮闘ぶりを紹介することで、日本の経営者にカツを入れたいという熱い思いが伝わってくる。

   

 著者は1956年神戸市生まれ。神戸大学卒業後、毎日新聞に入社し、現在論説副委員長(大阪在勤)。この間、香港支局長、台北支局の初代支局長、経済部長などを務め、約20年間にわたりアジア経済を広く深く取材してきた。取材を重ねる中で、アジアの経営者が「欧米にはない柔軟性やしたたかさといった特性を備え、既成のルールや概念に縛られず、時には型破りとも思えるほど発想が自由」なことを痛感したそうだ。

 カリスマ創業者の一番手として取り上げたのは台湾の鴻海精密工業(ホンハイ)を率いる郭台銘(1950年生まれ)。ホンハイは世界最大のEMS(電子機器の製造受託サービス)企業で、日本のシャープにも出資する方向で基本合意したばかり。郭台銘は積極的なM&A(企業の合併・買収)の手法を駆使して業容を拡大してきた。「まさに現代チンギス・ハン」と評する同業者もいるそうだ。台湾企業の経営者が選んだ「最も敬服する経営者」ランキング(2005年)では、台湾プラスチックグループ創業者の王永慶(08年死去)に次いで2位に選ばれている。王はその経歴などから「台湾の松下幸之助」「経営の神様」と呼ばれていたという。

 中国・台湾の創業者では郭台銘のほかに、台湾のパソコンメーカー宏碁(エイサー)の施振栄(1944年生まれ)、世界最大のファウンドリー(半導体受託生産会社)台湾積体電路製造(TSMC)の張忠謀(1931年生まれ)、世界第2位の通信機器メーカー、中国の華為技術(ファーウェイ)の任正非(1944年生まれ)、リチウムイオン電池メーカーの比亜迪(BYD)の王伝福(1966年生まれ)の4人を取り上げている。

 このうち施振栄は父が3歳の時に亡くなり、母がアヒルの卵や文房具を売って家計を支えたという。台湾のパソコンメーカーでは数少ない自社ブランド戦略を進めたが、宣言通り60歳で第一線を退き、今はベンチャーキャピタルの会長を務める。張忠謀は中国浙江省生まれだが、少年時代、日本軍の戦火に追われ香港、上海、重慶などを転々としたという。今では「台湾半導体の父」と呼ばれている。

 任正非は人民解放軍出身という異色経営者。中国各省の中で最も貧しいといわれる貴州省安順で7人兄弟の長兄として生まれ、貧しさから高校を卒業するまでシャツを着たことがなかったという。王伝福は8人兄弟の下から2番目だったが、父は13歳の時に病死、母も中学卒業試験の日に亡くなった。20代で電池事業に乗り出した王は中国で「電池大王」の異名をとり、30代で自動車産業に参入した。

 本書では最終の第6章「東南・南西アジアのカリスマ創業者たち」で、アジア太平洋最大のLCC(格安航空会社)エアアジア(マレーシア)のトニー・フェルナンデス(1964年生まれ)、アジア版「水メジャー」のハイフラックス(シンガポール)のオリビア・ラム(1960年生まれ)、バイオ医薬品大手のバイオコン(インド)のキラン・マズムダル・ショウ(1953年生まれ)の3人を取り上げた。エアアジアは今年2月現在で日本を含め24カ国・地域の80都市に165路線を開設している。オリビア・ラムは「水の女王」、マズムダルは「バイオの女王」と呼ばれ、2人とも「日経アジア賞」(経済発展部門)を受賞するなど、経営者として高い評価を得ている。


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