く~にゃん雑記帳

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<100年前の北欧アールヌーボー期の2大名窯> 自然のモチーフに〝ジャポニズム〟の影響も

2012年08月22日 | 美術

【細見美術館「ロイヤルコペンハーゲン ビングオーグレンダール展」】

 「ロイヤルコペンハーゲン」といえば、北欧デンマークを代表する陶磁器だが、かつて「ビングオーグレンダール」も並び称される名窯だった。技術を競ったこの2大名窯のアールヌーボー期の名品を一堂に集めた展覧会「ロイヤルコペンハーゲン ビングオーグレンダール展」が京都・細見美術館で開かれている。花や虫など自然をモチーフにした作品の中に、当時欧州でもてはやされたジャポニズムの影響を垣間見ることもできる。

   

 ロイヤルコペンハーゲンの開窯は1775年、その4年後の79年に王立となった。1885年に芸術主任に迎えられたアーノルド・クローは日本の浮世絵や工芸品など日本美術に高い関心を示し、アールヌーボー絶頂期の1900年のパリ万博ではクローデザインの「マーガレット・サービス」がグランプリを獲得した。一方、ビングオーグレンダールの創設は1853年。85年に芸術主任に就いたピエトロ・クローンも日本の芸術様式を参考に自然のモチーフを積極的に取り入れた。パリ万博にはロイヤルのシンプルでおとなしい造形に対抗し、曲線や渦巻き模様、透かし彫りなど彫塑的な作品を多く出品した。1895年にはロイヤルに先駆けクリスマスプレートの製造も開始。だが1987年、ビングはロイヤルに買収され、100年以上にわたる切磋琢磨の競争に終止符が打たれた。

 同展では第1会場でロイヤル、第2会場でビングの作品を展示。ロイヤルでは一般の量産品とは別に、作家の芸術作品として認めたものを「ユニカ」(英語のユニーク)と呼び作家のサインも入れている。ユニカの中では「カタツムリ文花瓶」「ロブスター文皿」「鳥に風景文皿」などが印象に残った。当初の青色中心の作品が年代を下ると多彩な色表現になっており、絵付け技術の進歩がうかがわれる。「フィギャリン」と呼ばれる動物や人物などをかたどった小さな彫像はどれもかわいらしい。ビングの会場ではクローンの「鷺(さぎ)」をモチーフにした一連の作品が目を引いた。

 両窯の作品の製作者の肩書きなどを眺めていると、実に様々な分野の専門家が技術や文様の開発に携わってきたかが分かる。ロイヤルの技術主任クローは元々建築家、ビングのクローンも王立劇場の画家兼衣装係。ロイヤルの「結晶釉」には歴代の化学者が製作に関わったという。結晶釉は釉薬の中にある金属などの成分が、窯変のように焼成後の冷却中に結晶となって現れるもの。

 第3会場にはその結晶釉の作品などのほか、2つのそっくりな「眠り猫置物」があった。1つは京焼の錦光山宗兵衛(7代目)の20世紀前期の作品。もう1つは1958年のロイヤル製で、2つは色が少し違うものの猫の姿は瓜二つ。ロイヤルは現在もその眠り猫を製作しているが、元々はエリック・ニールセンが1902年にデザインしたものらしい。錦光山宗兵衛は何度も渡欧しており、宗兵衛の作品は「それを参考として作られたことが想像される」という。ジャポニズムはデンマークでの陶磁器づくりに影響を与えたが、また日本も欧州のアールヌーボーから影響を受けていたということだろう。


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