く~にゃん雑記帳

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<ロシア・ナショナル管弦楽団> 「ムジークフェストなら」の掉尾を飾る熱演

2015年06月29日 | 音楽

【チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番(ピアノ牛田智大)、交響曲第5番…】

 奈良県内各地で約2週間にわたって繰り広げられてきた「ムジークフェストなら」最終日の28日、奈良県文化会館(奈良市)でロシア屈指のオーケストラといわれる「ロシア・ナショナル管弦楽団」の演奏会が開かれた。指揮は同管創立者で世界的なピアニストでもあるミハイル・プレトニョフ。若き俊英ピアニスト牛田智大との共演によるチャイコフスキーの「ピアノ協奏曲第1番」や「交響曲第5番」などを熱演、掉尾を飾るにふさわしい名演奏で締めくくった。

 同管を率いるプレトニョフ(写真㊧)はまだ21歳だった1978年、チャイコフスキー国際コンクール・ピアノ部門で金メダル・第1位を獲得し一躍脚光を浴びた。ロシア・ナショナル管弦楽団の誕生はソ連崩壊の前年1990年。国内のトップオーケストラから一流奏者を集め、ロシア史上で初めて国家から独立したオーケストラを創設した。長年温めていた夢が実現した背景にはその2年前、米国で開かれたサミット(先進国首脳会議)でのピアノ演奏を機に当時のゴルバチョフ大統領との親交が深まって自由な音楽活動が保証されたことによる。モスクワでの初演からほぼ半世紀、今や世界有数のオーケストラとして注目を集める。

  

 演奏会はチャイコフスキーの「弦楽セレナーデ第2楽章」から始まった。地元の「奈良県立ジュニアオーケストラ」の若いメンバー約30人も加わった総勢100人近い大編成で、プロ・アマが一体となって優美なワルツを奏でた。2曲目は世界的なトランペッター、セルゲイ・ナカリャコフ(写真㊥)を迎えてアルチュニアン作曲の「トランペット協奏曲」。アルチュニアン(1920~2012)はアルメニアの作曲家で、この協奏曲は代表作の1つ。ナカリャコフはNHK朝の連続テレビ小説「天うらら」のテーマ曲演奏などで日本でも広く知られる。その超絶技巧と透明感に満ちた音色はさすが、と思わせるものだった。アンコールのバッハ「G線上のアリア」ではトランペットの多様な表現力の一端も見せてくれた。

 3曲目の「ピアノ協奏曲第1番」では、小柄で細身の牛田智大(写真㊨)がピアノの前では実に堂々として大きく見えた。その演奏は力強く、かつ繊細で自信にあふれ、雄大で華麗なこの協奏曲の魅力を余すことなく披露してくれた。演奏後「ブラボー」が飛び交う中、近く席から「とても15歳とは思えないね」と知人に話し掛ける女性の声が聞こえてきた。アンコール曲はプーランク作曲「即興曲第15番 エディットピアフを讃えて」。牛田はこの後も名古屋国際音楽祭で7月11日この第1番を演奏するなど、ロシア・ナショナル管弦楽団と各地で共演の予定という。

 休憩を挟んで最後の4曲目は演奏時間約50分の「交響曲第5番」。約80人によるフル編成で、第1楽章は短調の暗く重苦しい旋律で始まり、第2、第3楽章と進むにつれ次第に明るく軽快に。そして最終章は全楽器による強奏で頂点を迎える。その高揚感の盛り上げ方は感動的でもあった。またチェロ9本、コントラバス7本の艶のある重厚な音色も印象に残った。アンコール曲はチャイコフスキーの劇付随音楽「雪娘」より「道化師の踊り」だった。


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