く~にゃん雑記帳

音楽やスポーツの感動、愉快なお話などを綴ります。旅や花の写真、お祭り、ピーターラビットの「く~にゃん物語」などもあるよ。

<中野美術館> 近代日本の洋画・日本画を収蔵、いぶし銀のような深い味わい

2012年11月28日 | 美術

【須田国太郎、村上華岳、入江波光、富岡鉄斎、……】

 中野美術館は奈良市の近鉄学園前駅から南へ徒歩7~8分、日本最古の溜め池といわれる「蛙股池」のほとりにある。対岸には東洋美術のコレクションで有名な大和文華館。林業家の中野皖司氏(初代館長)が1984年に開館した。規模の小さい瀟洒な建物だが、明治・大正・昭和の3代にわたる近代日本の洋画・日本画のコレクションで知られる。いずれも地味ながら味わい深い作品ばかりだ。今は洋画では須田国太郎や銅版画の駒井哲朗、日本画では村上華岳や富岡鉄斎の作品を中心に展示している。

   

 入館してすぐ左手に洋画展示室、階段を下りると日本画展示室があり、常時それぞれ20点前後の作品を展示している。洋画展示室の真ん中には佐藤忠良作のブロンズ像「若い女夏」。展示中の須田作品は「牛の居る風景」(写真㊨)、「ヴァイオリン」(写真㊧)など4点だが、「須田作品は全部で14点あり、そのうち『夏の午後』はいま貸し出し中です」と2代目館長の中野利昭さん。没後50年の節目とあって各地で須田国太郎展が開かれており、西日本ではこの25日まで鳥取県立博物館で開催、12月1日からは京都市美術館で2カ月余にわたって開かれる。

 中野皖司氏が最初に買った絵は林武の「金精山」だが、まもなく須田の「大山田神社附近」に引かれたのをきっかけに須田コレクションが始まったという。皖司氏は開館5周年記念の「須田国太郎・鳥海青児展」のカタログに、須田作品の魅力をこう記した。「初めて絵の前に立った時、黒褐色の重厚な画面は一見暗い感じを受けたが、じっと見つめていると画面の底からにじみ出てくるような、何か深いものが私の心を捉えて離れませんでした」。須田寛・JR東海初代社長は国太郎の長男。洋画ではこのほかに、駒井哲朗の銅版画「R夫人の肖像」「消えかかる夢」「手」の3点や梅原龍三郎「桜島」、熊谷守一「畝傍山」、藤田嗣治「婦人像」、中川一政「林檎三つ」などを展示中。

   高村光雲の木彫「西王母」

 日本画では村上華岳の「幽山雲烟」「墨椿」「梅の図」の3点が目を引く。墨の濃淡で半開きの花やつぼみを描いた「墨椿」は実に味わい深い。白黒なのに色が見えてくるようだ。華岳は土田麦僊、小野竹喬らと国画創作協会を結成し新日本画運動を推進するが、後に画壇との交流を絶ち、昭和14年11月11日、52歳で没した。かつての画友、土田麦僊の「松上鷹図」も展示中。鷹の白い羽、太い茶色の幹、松葉の緑という色使いが印象的だ。

 日本画展示室には高村光雲の木彫「西王母」を常設展示。高さ30cmほどの小さな像だが、その優しげな表情にはいつも癒やされる。西王母は中国・漢の時代の故事に基づく。皇帝の前に女性が現れ、3000年に1度花が咲いて実を結ぶという不老の桃花の小枝を手渡し昇天する。喜んだ皇帝は管弦を奏して待つと、庭に光が輝いて西王母が降り立って君が代を祝って舞う――。「智恵子抄」の高村光太郎は光雲の長男。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« <高校駅伝女子> 号砲まで... | トップ | <全日本実業団対抗女子駅伝... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿