く~にゃん雑記帳

音楽やスポーツの感動、愉快なお話などを綴ります。旅や花の写真、お祭り、ピーターラビットの「く~にゃん物語」などもあるよ。

<揚輝荘> ベンガラ色が映える山荘風の聴松閣

2021年11月09日 | 旅・想い出写真館

【2階では「和色の世界―Kimono」展開催中】

 百貨店松坂屋の初代社長伊藤次郎左衛門祐民(1878~1940)が覚王山(名古屋市千種区)の高台に構築した別邸「揚輝荘(ようきそう)」。2016年に一度周辺を散策したが、このときはシンボル的な建物「聴松閣」の外観をカメラに収めただけで素通りしていた。それが心残りだったので名古屋で一泊したのを機に改めて訪ねた。2階展示室では松坂屋美術館との連携による特別展「揚輝荘が織りなす和色(わのいろ)の世界~KIMONO」が開かれていた。

 揚輝荘が整備されたのは大正から昭和初期にかけて。約1万坪(3万3000㎡)の広大な敷地に30棟を超える建物が建てられた。「迎賓館として多くの財界人や文化人をお迎えしました。テニス場や弓道場などもありました」。ロッジ風の聴松閣に入ると、担当者が昭和初期の揚輝荘を俯瞰した模型を前に詳しく説明してくれた。ただ現在の敷地面積はその後のマンション開発などでかつての3分の1ほどに。南北に分断されており、南園(約2700㎡)と北園(約6500㎡)が狭い通路で結ばれている。

 聴松閣の玄関前には祐民が中国で購入したという南北朝時代(5~6世紀)の虎の石像。館内は趣向を凝らした暖炉や重厚なインテリアで落ち着いた雰囲気を醸し出していた。とりわけ目を引いたのが階段の手摺に波模様のように刻まれた手斧(ちょうな)の跡。手斧による透かし彫りもあって、往時の匠の技を味わうことができた。2階の旧応接室や書斎などは展示室に充てられている。開催中のKIMONO展では重要文化財指定の小袖「染分綸子地御所車花鳥模様」のレプリカをはじめ豪華な意匠の振袖や小袖などが、園内の四季の写真や絵画とともに展示されていた。会期は11月21日まで。

 北園は池泉回遊式の庭園で、シンボルになっているのが京都の修学院離宮の千歳橋を模したといわれる廊橋「白雲橋」(市指定有形文化財)。以前訪れたときにはその橋を借景として艶やかな着物姿と紋付姿の若い男女が写真に収まっていた。橋の天井には墨で描かれた龍図。絵心があった祐民が池の名「浴龍池」に因んで描いたのだろうと伝えられている。その龍の絵が「祐民の隠し絵?」と一時話題になった。地元の新聞記事によると、鼻や口ひげなどの部分が見る角度によって冠を被った女性の横顔に見えるという。そう言われれば女性の顔に見えなくもない。ユーモアに富んでいたという祐民が意識的に描いたのだろうか。


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