【ゲストにサックス織田浩司氏、京都・両洋高校吹奏楽部】
奈良県明日香村の国営飛鳥歴史公園内「あすか風舞台」で、10月28日「あおぞら吹奏楽BRASS UNDER THE SKY」が開かれた。音楽の祭典「ムジークフェストなら2023」の一環。今年で11回目だが、これまでは春に奈良市の奈良公園春日野園地などで開いており、今回は時期も場所も一新しての開催となった。
会場のあすか風舞台は「石舞台古墳」のすぐ西側の芝生広場。最初登場したのは生駒市の桜ケ丘小学校ハーモニックバンド。吹奏楽の実力校として知られ、今年8月に滋賀県守山市で開かれた小学生バンドフェスティバル関西大会でも金賞を受賞。関西代表として大阪城ホールで11月18日に開かれる全国大会への出場が決まっている。
メンバーが着用するTシャツは学校名と同じ明るい桜色。1曲目は関西大会でも演奏したという「第6の幸福をもたらす宿」だった。続いて「マンボNO.5」。小学生とは思えない力強く歯切れのいい演奏。3曲目の「花祭り」では新しく入部したばかりの3年生たちが演奏に合わせ踊りも披露した。
出演2番目は同じ生駒市の生駒中学校吹奏楽部。こちらも全国大会常連校で、10月下旬に名古屋市で開かれた全日本吹奏楽コンクール全国大会(中学校の部)で一足早く金賞を受賞したばかり。そのコンクールの課題曲だった「レトロ」と自由曲「カントスソナーレ」に続き、「鷲の舞うところ」、中島みゆきの「糸」、ジョン・レノンの「イマジン」を披露した。
「糸」では「なぜめぐり逢うのかを……」の主旋律をフルートからクラリネット、そしてサックスとつなぎながら美しい音を奏でた。演奏後、指揮者の山上隆弘氏が千葉県の柏市立酒井根中学吹奏楽部とのジョイントコンサートについて報告した。同中学も全国屈指の実力校で、全国大会の会場で指導者同士が隣り合わせた縁で決まったという。開催時期は来年3月20日、場所は奈良県の橿原文化会館とのこと。
この後の演目は「明日香村で序曲『飛鳥』を吹こう!」と題した特別企画。「序曲『飛鳥』」は櫛田胅之扶(てつのすけ)氏が古代の飛鳥地方をイメージして吹奏楽のために作ったもの。曲想の舞台はまさにこの地だ。演奏には「スペシャル合同バンド」として約100人が参加した。
年齢は中学1年生から上は73歳と幅広い。遠く茨城県や長野県からという参加者もいた。指揮は藤重佳久氏。ホルン奏者で、吹奏楽のカリスマ指導者としても知られる。音合わせがこの日の午前中だけとは思えない統率のとれた演奏だった。
いよいよ恒例のスペシャルゲストの登場だ。今年はサックス奏者の織田浩司氏(オリタ・ノボッタ)と京都市の両洋高校吹奏楽部が招かれた。織田氏が参加するのは第1回あおぞら吹奏楽以来という。地元の畝傍高校吹奏楽部とともに舞台に登場した織田氏は「銀河鉄道999」やホイットニー・ヒューストンの「すべてをあなたに」などを演奏した。
ゲストバンド両洋高校の指揮者は先ほど「序曲『飛鳥』」を指揮した藤重氏。この春に吹奏楽部の音楽監督に就任した。童謡メドレーを皮切りに「星条旗よ永遠なれ」「オリンピアーダ」、北島三郎の「まつり」、唱歌「故郷」などを演奏した。さすがにマーチングバンド、動きの合った切れ味鋭い演奏スタイルが印象的だった。
そしてファイナルステージ。舞台とその前に約300人の出演者がずらりと並び、全員でTHE BOOMの「風になりたい」を演奏した。最後を締める定番曲という。秋晴れの柔らかい日差しの中、管楽器の音色が青空へ心地よく響き渡る3時間だった。