く~にゃん雑記帳

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<大和文華館> 特別展「天之美禄 酒の美術」

2021年11月03日 | 美術

【酒器や宴を描いた絵画などの名品90点】

 奈良市学園南にある美術館大和文華館で特別展「天之美禄 酒の美術」が開催中(11/14まで)。「天の美禄」とは天からのありがたい授かり物を意味し、「酒」の異称になっている。同館のほか各地の美術館や博物館、神社などが収蔵する趣向を凝らした酒器や酒宴を描いた絵画など「酒」にまつわる内外の名品90点を一堂に集めている。

 

 特別展は「神・祖先に捧げる―神と人をつなぐ酒〔中国〕」「神に捧げる酒、仏と酒〔日本〕」など5章で構成する。ひときわ目を引くのが巨大な赤い太鼓の形をした「漆塗太鼓形酒筒」(堺市博物館蔵)。室町時代のもので、国の重要文化財に指定されている。大きさは高さ121cm、径73.4cm、幅64cm。一木を刳り抜いて造られ、板を張った鼓面には黒漆地に朱漆で剣巴文(つるぎともえもん)が描かれている。銘文によると、1473年(文明5年)に高野山の僧侶から天野社(現在の丹生都比売神社)の神宮寺に寄進され、お神酒を入れる容器として用いられた。

 中国・明時代の「五彩金襴手婦女形水注」(大阪市立東洋陶磁美術館蔵)は女性が踊る姿をかたどった酒器。頭頂部に注水口があり、右手の袖の中に注ぎ口がある。女性のモデルは古代の四大美女の一人である西施との言い伝えがあるそうだ。産地は景徳鎮窯で、景徳鎮のものはほかに「青花花鳥文瓢形徳利」(根津美術館蔵)、「青白磁唐子蓮花唐草文瓶」(奈良・談山神社蔵)、「釉裏紅鳳凰文梅瓶」(MOA美術館蔵)など18点が出品されている。中国・北宋時代に龍泉窯で焼かれた「青磁多嘴壷(たしこ)」(大和文華館蔵)は胴部から5本の円筒形の管が上に伸びる独特な形。胴の下部に1080年に墓に供えられたとの銘文が線刻されている。重要美術品。

 江戸後期の文人画家、小田海僊(1785~1862)の「酔客図巻」(泉屋博古館蔵)は宴会の列席者の酔態を描いた作品。場面が進むにつれ、千鳥足もままならない男性の様子や横倒しの酒壷に潜り込んだりする姿がユーモラスに描かれている。桃山時代の「能面猩々」(奈良・天河大辯才天社蔵、重要文化財)、中国・商後期の銅製酒器で鳥のミミズクの形をした「戈卣(かゆう)」(泉屋博古館蔵)、仙人が住むという仙山をかたどった中国・前漢~後漢時代の「山岳鳥獣文温酒尊」(東京国立博物館蔵)、18世紀のオランダ製「色絵花卉文瓢形八角瓶」(個人蔵)なども展示中。古今東西の酒にまつわる品々をよくこれだけ集めたものだ。企画から借用交渉、展示に至る学芸員の奮闘ぶりが目に浮かぶようだった。

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