く~にゃん雑記帳

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<奈良県立美術館> 「吉川観方―日本文化へのまなざし」

2019年11月14日 | 美術

【生誕125年・没後40年を記念し特別展 17日まで】

 大正から昭和にかけ京都で活躍した日本画家吉川観方(1894~1979)の画業を辿る特別展「吉川観方―日本文化へのまなざし」(17日まで)が奈良県立美術館(奈良市登大路町)で開かれている。今年は観方の生誕125年・没後40年に当たる。それを記念すると同時に同美術館の開館300回記念特別展も兼ねており、観方と交流があった日本画家の作品や〝観方コレクション〟も多数展示されている。

 観方は京都市立絵画専門学校(現京都市立芸術大学)研究科修了後、時代風俗の研究や資料収集のため1923年「故実研究会」を立ち上げた。その後34年には自宅に写生場を設け、2年後には風俗博物館仮陳列場も完成させた。観方が収集した風俗資料は絵画や浮世絵の版画、服飾・装身具、調度品、玩具など実に幅広く、総計約3万点に上る。それらは現在、主に京都府(京都文化博物館管理)、福岡市博物館、奈良県立美術館などに収蔵されている。

 今展には観方渾身の一作といわれる『伊東マンショの像(天正遣欧使節)』も出ている。これは大分市美術館の所蔵作品。九州のキリシタン大名によってローマに派遣され帰国後豊臣秀吉の元を訪れた使節4人を描いた大作。4人はケープと裾のすぼまったズボンを着用し、十字架を身に付け2人は日本刀を手にしている。『加茂川舞妓夕涼図』は目元の優しい面長な舞妓さんを描いた作品で、竹久夢二の美人画を連想させる。20歳前後の頃の作品で「新発見の初期の名品」という。観方は幽霊画も得意とし「絵画にみえたる妖怪」などの著作もある。今展にも四谷怪談のお岩と皿屋敷のお菊を描いた『朝露・夕霧』などが出展されている。

 故実研究会の写生会は観方が収集した風俗資料を実際に芸舞妓らに着用させる形で行われた。上村松園は最も熱心な参加者の一人だったそうだ。展示作品『春宵』は料亭の縁側で酔いを醒ます芸妓に仲居がそっと耳打ちする一瞬を丁寧に優しく描いた。ほかにも甲斐庄楠音、中村大三郎、三木翠山、梶原緋佐子、菊池契月、中村貞似、伊藤小坡、児玉希望、伊東深水らの作品が前後期の2期に分けて出展された。〝観方コレクション〟のうち日本画の出展は菱川師房『見返り美人図』、葛飾北斎『瑞亀図』、長沢芦雪『幽魂の図』など30点余り。そのほか打掛、髷(まげ)、姿見、団扇、有職雛など多岐にわたっており、観方の交流と活動の幅の広さを改めて示すものだった。

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